「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

眼科における花粉症対策について

本年の花粉飛散予測では、例年よりやや少なめとのことですが、季節性アレルギー性結膜炎は、アレルギー性結膜疾患の90%を占める重要な疾患です。治療はアレルゲンの曝露を防ぐことや抗アレルギー点眼薬の使用がメインとなりますが、本論文では、人工涙液や冷湿布の使用を組み合わせると効果的とのことでした。前者は、アレルゲンを洗い流したり、アレルゲンに対するバリアーの役割を果たしたりすることで症状を軽減し、後者は、血管を収縮させることで、かゆみの物質の放出を防ぐ働きがあるとのことです。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00723-9/fulltext

緑内障治療薬で緑内障の病期の進行を遅らせることができるか?

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」で、緑内障に対する、薬物、レーザー、手術の各治療も「眼圧下降」を目指しているに他なりませんし、そのような治療もはるか昔から行われてきました。しかしながら、エビデンス(根拠)が証明されたのは20年ほど前に過ぎません。近年、エビデンスに基づいた治療の有用性が求められていますが、高いエビデンスを得るのは容易ではありません。その中で、ランダム化比較試験を多数例、多施設で行うことは、ほぼ最高と言っても過言ではないエビデンスレベルです。

「眼圧下降」が緑内障治療に有効なことは証明されたのですが、薬物治療(点眼液)で眼圧を下降させることが、緑内障治療に有効であるとする多数例、多施設のランダム化比較試験は今までありませんでした。昨年初頭にThe United Kingdom Glaucoma Treatment Study (UKGTS)と呼ばれる、ラタノプロスト点眼を用いた研究の概要が報告されました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22986112

この度、新たにUKGTSを行う症例についての報告がなされました。対象は516名、平均年齢は66歳、視野は比較的後期で、24か月間追跡調査がなされるという内容です。今後の結果を期待したいものです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24126032

飲水試験と脈絡膜厚

以前にも述べました通り、飲水試験と呼ばれる緑内障誘発試験がかつて存在し、1リットルの水を5~15分で飲んだ後の眼圧上昇の程度により、一部の症例において緑内障診断を行っていました。しかしながら本試験は、安全性および診断の有用性の低さから、今日ではほぼ廃れてしまいました。飲水試験で眼圧が上昇する機序としては、房水流出抵抗の増加とともに、脈絡膜血管の拡張などが一因であると考えられています。

本論文で著者らは、健常人において、眼底の深部組織である脈絡膜をswept-source optical coherence tomographyという方法で観察したところ、飲水試験後に脈絡膜厚が厚くなったことを報告しました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24021895

脳循環と緑内障

緑内障の本態は、「進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)」で、今日においては、眼圧は緑内障発症の危険因子の一つとして挙げられることが多く、GONは眼圧を筆頭とした種々の因子によって引き起こされているものと捉えられています。そのうちの一つが眼循環で、循環不全による緑内障発症および病期の進行を示唆する報告は多くなされています。

本論文は眼循環に大きくかかわる、後大脳動脈循環動態が、原発開放隅角緑内障においては低下していることを示唆しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23816432

加齢と緑内障

「緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)」ですが、加齢により網膜神経節細胞が減少することも知られています。しかしながら、同一被検者に対し、網膜神経節細胞の減少に伴う網膜神経線維層厚や黄斑部の網膜厚を継時的に調べた報告はほとんどなかったかと思われます。

本論文では、緑内障眼と健常眼とで、光干渉断層計(OCT)を用いて網膜神経線維層厚と黄斑部の網膜厚を前向きに4年間調べたところ、健常眼では継時的に両者が減少したことが証明され、緑内障眼においても、加齢の影響がみられたことがわかりました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23993360

眼科医による立体眼底写真を用いた緑内障診断

緑内障を診断するうえで入口となる検査は、多くは眼底検査であると思われますが、中でも立体眼底写真による診断は有用であることが知られています。しかしながら、その診断の正確度(正常を正常、異常を異常と診断する割合)は約80%と言われています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20045571

本論文では、立体眼底写真検査結果を用いて、同一患者の結果を1つ含む4つの視野検査結果から正しいものを眼科医に選ばせたところ、正確度は58.7%で、間違った多くのケースでは、視野障害を過大評価していたという結果でした。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23809273

白内障手術と緑内障手術

緑内障の手術適応がある患者さんは、白内障も有していることが多く、手術を行うとしたらどちらを先に行うべきか判断が難しいことがあります。白内障手術を先に行うメリットとして、術者としては浅前房になりにくいため、緑内障手術がやりやすいことが挙げられます。また、緑内障手術後の眼圧コントロールが安定していない時に白内障手術を行ってしまうと、折角の緑内障手術の効果が落ちてしまうことがあります。緑内障手術を先に行うメリットとしては、白内障手術創がなく、術後炎症が少なくてすむことが考えられ、良好な眼圧コントロールが得られることと思います。ただし、若干その後の白内障手術が難しくなることがあります。

本論文では、白内障手術が行われた緑内障(開放隅角緑内障)患者さんに対する緑内障手術(濾過手術)は、白内障手術を行っていない患者さんと比べると、眼圧コントロールが悪くなると報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1774027&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

全世界の失明者の割合

失明は、経済活動や教育の機会を減らし、QOLを低下させるばかりでなく、死亡率も高くさせるという報告もあり、眼科医としては何としても防がなければならない問題です。

失明を0.05または中心10度以内の視野狭窄と定義した場合、2010年の全世界における失明者は3240万人と推定され、1990年に比べると失明者の割合は減っているものの、人口増加と高齢化のため、失明者数は横ばいであると報告されました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23850093

近視眼における網膜の厚みと緑内障について

近視とは、「調節力を働かせない状態で、平行光線が網膜より前に焦点を結んでしまう状態」で、多くは軸性近視に属し、正視の人より眼球が大きい(眼軸長が長い)ため、網膜が焦点より後ろにある状態を言います。すなわち近視眼は、風船を大きく膨らませた状態に似ていますので、風船のゴムが薄くなるように、眼球の壁、ひいては網膜も薄くなっていると多くの報告で立証されています。一方、緑内障においては、網膜神経節細胞が障害されるため、その細胞に関わる網膜の層が薄くなります。近視は緑内障のリスクファクターであるため、緑内障眼において網膜が薄いという検査結果がでた場合には、近視のためか、緑内障性視神経障害のためか、判断が付きにくいことがあります。

本論文では、正常眼では、眼軸長が長いほど、黄斑部における網膜神経節細胞に関わる網膜層が薄くなっていたという報告です。今後、網膜の厚みを調べる眼科検査機器においては、近視の程度を補正するプログラムが必要かもしれません。

http://link.springer.com/article/10.1007/s10384-013-0292-2?wt_mc=alerts.TOCjournals

急性緑内障発作後の白内障手術

急性緑内障発作(急性原発閉塞隅角症)は、急激な視力低下とともに、頭痛や嘔気などを伴うこともある、重要な眼科的救急疾患の一つです。本疾患の治療として、視力を向上させる意味でも、房水流出を良くして眼圧を下げる意味でも、白内障手術は推奨されている治療法です。白内障手術は、術前に種々の眼科的検査を行ったうえで、水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入する術式ですが、眼内レンズの度数は術前の眼科的検査の結果を勘案して決定されます。通常の症例でも、術後の屈折検査において術前に予想された度数に合致せず、強い度数の眼鏡を処方する例もありますが、本疾患では、そのようなことがより多く生じると言われています。

本論文では、急性原発閉塞隅角症に対する白内障手術について、術後の屈折の度数が異なってしまう原因として、本疾患の罹病期間と関連すると報告しました。よって、本疾患においては、早急な眼圧下降治療が必要となります。

http://link.springer.com/article/10.1007/s10384-013-0285-1?wt_mc=alerts.TOCjournals