月別アーカイブ: 2014年4月

野立看板につき

長岡市春日町に新医院の野立看板ができました。新医院は現医院から歩いて30秒のところにあり、立川綜合病院様の裏手にできます。6月1日(日)9時~16時が内覧会、6月2日(月)より新医院での診療を開始いたします。移転準備に伴い5月26日(月)~31日(土)まで現医院は休診となります。何卒ご高配頂きますようお願い申し上げます。

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補償光学を用いた視神経乳頭の観察について

補償光学とは、「宇宙から地球を撮影したり、地球から宇宙を撮影するときに問題となる大気の揺らぎを光電子的に解決するために開発された光学技術」であり、眼底撮影においても、水晶体や硝子体などによる揺らぎや各種収差を補正することにより詳細な観察が期待されており、補償光学を応用した技術が待ち望まれていました。

本論文は、補償光学を応用した光干渉断層計(optical coherencetomograph)を用いて、視神経の支持組織である篩状板の観察をしたという報告です。リンク先で画像がみれますが、極めて詳細な構造が観察できるようです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3986004/

緑内障性視野障害の改善について

緑内障は不可逆性の疾患であるため、障害されてしまった視神経や視野は改善されないと考えられています。一方、神経には可塑性があり、何らかの方法でわずかばかりですが改善されるのでは?とも考えられています。方法としては、一つは神経保護で、薬物治療などの報告がわずかですが存在します。もう一つはトレーニングです。

本論文では、コンピュータを用いて、視野検査のようなトレーニングを行うことにより、わずかですが、視野障害が改善されたと報告しています。ただし、所謂学習効果による影響も考えられ、神経の可塑性に働いているのではなく、単純に検査慣れにより改善されていた可能性も示唆しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1828526&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

硝子体手術後の眼内炎について

硝子体手術は網膜剥離、糖尿病網膜症、各種黄斑疾患の治療に極めて有用な方法ですが、高度な技術が必要とされる眼科手術の一つと言えます。近年極小切開硝子体手術が主流となり、より簡便かつ短時間で行えるようにはなりましたが、術創を縫合しないために術後感染症(眼内炎)が危惧されます。

本論文は、硝子体手術後の眼内炎発症眼とそうでない眼との症例対象研究です。眼内炎の発症は1730件に1例の割合で生じ、危険因子として免疫低下と術前ステロイド点眼の既往が挙げられましたが、術創の大きさは関係がなかったとのことです。また、網膜剥離手術では、眼内炎の発症が少なかったとしています。

http://bjo.bmj.com/content/98/4/529.abstract

 

緑内障治療薬のウォッシュアウトについて

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、原発開放隅角緑内障(広義)の治療は、「薬物治療を第1選択」とし、「薬物治療は眼圧下降点眼薬の単剤療法から開始し、有効性が確認されない場合には他剤に変更し、有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼薬を含む)を行う」としています。緑内障治療薬の効果が不十分と思われる場合や、眼圧が下がっても視野障害・視神経障害が進行する場合などの例で、無治療時眼圧を調べるために、緑内障治療薬の使用を一時的に中断して頂くことがあります。それをウォッシュアウトといいます。緑内障治療薬は長期に使用した場合に、眼圧下降効果が残ってしまう場合が多く、ウォッシュアウト期間は通常2~4週を目安に行われることが多いと思われます。

緑内障治療薬にはたくさんの種類があり、それらの効果の報告も無数にありますが、緑内障治療薬をウォッシュアウトした場合の眼圧変化についての報告はほとんどありません。本論文は、緑内障治療薬をウォッシュアウトしたところ、点眼1剤、2剤、3剤使用例で、各々治療時眼圧より平均5.4mmHg、6.9mmHg、9.0mmHgの上昇がみられ、治療時眼圧より25%以上の眼圧上昇がみられた例は、各々38%、21%、13%であり、治療時点眼数の数に従い、眼圧上昇の割合が低かったと報告しています。また、ウォッシュアウトしても眼圧上昇幅が小さかったことから、きちんと点眼されていなかったか、さしていても緑内障治療薬そのものの効果が低かったことが想定されるとのことです。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1815983&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

原発閉塞隅角症疑いについて

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、原発閉塞隅角症疑い(primary angle closure suspect; PACS)とは、「原発性の隅角閉塞があり、眼圧上昇も、器質的な周辺虹彩前癒着(peripheral anterior synechia: PAS)も緑内障性視神経症も生じていない、すなわち非器質的隅角閉塞(機能的隅角閉塞、appositional angle closureとも呼ばれる)のみの症例」であり、米国における緑内障ガイドラインである、preferred practice patterns (PPPs)においても、ほぼ同様の定義です。本疾患群に対する治療については定見がないのですが、PPPsによれば、PACSの自然経過をみた文献がわずかながらあり、四分の一の症例で、5年以内に眼圧上昇またはPASが生じると言うことです。閉塞隅角緑内障は、急性緑内障発作を起こしてしまった場合に、治療にはかなり難渋し、不可逆的な視機能障害も生ずるため、可能であればPACSの時点で治療を行いたいところですが、治療に対する合併症や掛かる費用なども勘案すると、PACSに対する治療は十分な検討が必要と考えます。

久米島スタディにおける原発開放隅角緑内障患者の有病率

2000年~2001年にかけて行われた日本初の緑内障疫学調査である、多治見スタディは、日本の中心に位置する典型的な中小都市である岐阜県多治見市で行われ、所謂日本人を代表する母集団に基づいて行われましたが、2005年~2006年にかけて行われた久米島スタディは、沖縄県の離島での緑内障疫学調査であり、同じ日本で合っても、人口密度や医療環境、気候、年齢、人種の起源(沖縄県は縄文人を起源とした人種が多いとのことです)などが多治見市とは異なっており、過去の報告において、緑内障の有病率が異なっていたことがわかりました。例えば原発閉塞隅角緑内障においては、多治見市に比べて久米島では3.7倍有病率が多かったことがわかりました。

本論文では、原発開放隅角緑内障(広義)の有病率を調べたところ、多治見市では3.9%であったのに対し、久米島では4.0%で、正常眼圧緑内障では各々3.3%と3.6%とで、大きな差がなかったものの、原発開放隅角緑内障(狭義)(眼圧が統計学的な正常範囲を超える原発開放隅角緑内障)では各々0.7%と0.3%、高眼圧症では2.6%と0.6%と、比較的高い眼圧の原発開放隅角緑内障(広義)が多かったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24746386