米国眼科学会では、自分の目の健康を維持するために、推奨する項目を10個挙げています。
1. サングラスの装用
2. 禁煙
3. 正しい食事(ビタミンCやE、ルテイン、亜鉛、ジアキサシン、ω3脂肪酸、DHA、EPA摂取)
4. 40歳以降の眼科検診
5. スポーツや就業中の目の保護
6. 家族歴を知ること(緑内障など)
7. 早期治療(緑内障、加齢黄斑変性)
8. 眼科医や眼鏡師など、だれがどの分野の目の専門家かを知ること
9. コンタクトレンズケア
10. 眼精疲労に注意する
「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ
緑内障画像診断の限界について
今日、光干渉断層計を中心とした眼底画像解析装置を用いた緑内障画像診断が、疾患の補助的診断として有用であることが多数報告されています。しかしながら、緑内障診療ガイドライン(第三版)にも記載されているように、「視神経乳頭形態や神経線維層厚には個人差があり、緑内障眼と正常眼の間で測定された数値のオーバーラップがみられることや、解析装置の測定精度の限界などから、緑内障と正常を完全に分別することは未だ成功していない。」、「緑内障の診断には経験を積んだ眼科専門医の最終判断が必要である。」と考えられています。
本論文では、3つの眼底画像解析装置を用い、4つの診断方法を用いて緑内障診断力を調べたところ、後期緑内障の5-21%で見逃しがあり、これらの装置はあくまで臨床的に緑内障性視神経症の有無が微妙な症例の補助診断として用いるべきと報告しています。
Can Automated Imaging for Optic Disc and Retinal Nerve Fiber Layer Analysis Aid Glaucoma Detection?
院長が執筆した論文が、眼科雑誌「臨床眼科」に掲載されました。
昨年開催された第69回日本臨床眼科学会で発表した内容を原著論文にまとめたところ、この度、眼科雑誌「臨床眼科」に掲載されました。タイトルは「原発開放隅角緑内障眼における中心角膜厚と角膜生体力学的特性による眼圧値の補正」です。眼内の圧力である眼圧は眼球壁を介して測定せざるを得ないために、眼球壁の弾性や硬さにより測定が不正確になる可能性があり、その角膜力学的特性を補正した眼圧計が一般診療の場で使用できることとなりました。しかしながら欧米人を対象として開発された同眼圧計は、日本人においてはやや不正確ではないか?ということを示した論文です。掲載されたことにつき、関係各位に深謝申し上げます。
緑色葉野菜と緑内障
一酸化窒素は房水流出抵抗の減弱や網膜循環の改善をもたらすと言われ、あたらしい緑内障治療の一つとして有用である可能性が示唆されています。食生活においては、硝酸塩を多く含む緑色素野菜の摂取が緑内障の病期の進行抑制に有用であることが考えられています。本論文では、1678713人を追跡調査したところ、1483人が原発開放隅角緑内障になったものの、緑色素野菜を約240mg/日摂取した群では、緑内障の発症が21%少なかったと報告しています。
緑内障と眼圧日内変動
緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」ですが、眼圧は血圧や体温などと同じく日内変動があることが知られています。まだ議論があるものの、この眼圧変動幅の大きさが緑内障発症や病期の進行と関連する可能性はいくつかの報告でなされており、緑内障治療薬においても、その変動幅を小さくさせるよう薬物の投与回数や濃度などで工夫がなされています。
本報告は、緑内障治療薬の中で、プロスタグランジン関連薬のみがわずかに変動幅を下げるにすぎず、多くの薬物では変動幅に影響がなかったとしています。
原発開放隅角緑内障に対する第一選択薬について
緑内障の中で多数を占める病型である、原発開放隅角緑内障に対する治療について、緑内障診療ガイドライン(第三版)では、「プロスタグランジン関連薬や交感神経β遮断薬が優れた眼圧下降効果と良好な認容性により、第一選択薬として使用されている」と示しています。過去の報告をシステミックレヴューやメタ解析を用いて検討した本論文によると、優れた眼圧下降効果を有した第一選択薬はプロスタグランジン関連薬であるビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストが挙げられ、この3つの薬剤については大きな相違はなかったと報告しています。
高齢緑内障患者の自動車事故について
本研究は米国アラバマ州で行われたものですが、70歳以上のドライバー2000人を調査した結果、緑内障患者は健常者に比し、1.65倍衝突事故が多く、特に左側の視野障害を有する例で衝突事故が多かったと報告しています。
Association between glaucoma and at–fault motor vehicle collision involvement among older drivers
近視と開放隅角緑内障について
代表的な緑内障の病型である原発開放隅角緑内障発症の危険因子として、近視があることは様々な研究で報告があります。緑内障または高眼圧症34040例と健常403398例を解析した本論文では、原発開放隅角緑内障のみならず、色素緑内障や落屑緑内障など、他の開放隅角緑内障についても危険因子であったと報告しています。ただし、現在までのところ、その理由は明確には不明であると言われています。
The Association of Refractive Error with Glaucoma in a Multiethnic Population
緑内障点眼液のキャップの色について
眼科診療において、患者さんが点眼液をどのようなペースで消費していくかは、実際に処方してみないと分からないことがよくあります。多剤併用治療になるとある点眼液はすぐに無くなるけど、他の点眼液は結構あまる、などということが生じるため、「今日はこの薬を何本、もう一つは何本処方してください」と再来ごとに処方する本数を変更することがよくあります。その際、点眼液のキャップの色で、「赤色は3本、青色は2本ください」と指示されることがあるのですが、実際にはどの薬のことを指しているのかが分からないことも多いです。特に緑内障治療においては、多剤併用の機会が多く、処方間違いが起こり得ると考えられます。
本論文では、100人の緑内障患者さんに11の点眼液を色を表現してもらったところ、102の色で示され、患者さんの指示を医師が正確に受け取った確率は55.5%と低い結果であり、特に視機能障害が強い患者さんの指示の場合に正確に伝わりにくかったと報告しています。
学童期の近視について
北京の小学生(5-14歳)4249人を対象とした研究で、近視は36.7%にみられ、その危険因子としては高い年齢(特に10歳以上の少女)、親が近視であること、読書時の姿勢、読書時の距離が20cm未満、3時間以上の自宅学習、1時間以上の連続した学習、教科書以外に読む本の文字の小ささがあげられるという報告がありました。