緑内障では、一度障害された視機能が回復することはないため、早期発見早期治療が極めて重要なことです。しかしながら一般的な緑内障は、極めて緩徐に進行するため、初期には自覚症状がなく、ドックなどの検診や何かのきっかけで眼科に受診することがなければ、早期に発見することは困難と言えます。日本で行われた疫学調査においては、新規発見例が89%と極めて高いことが問題視され、眼科検診の重要性が増したものと考えられます。
シンガポールで行われた疫学調査の結果を示した本報告でも、72.1%が眼科未受診であったことを示しています。
「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ
緑内障治療薬における後発医薬品について
緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「アドヒアランスとは患者も治療方法の決定過程に参加したうえ、 その治療方法を自ら実行することを指すものと定義され」、「緑内障治療薬に対するアドヒアランスは医師が考えているよりはるかに悪いことが報告されている。」と書かれています。アドヒアランスを向上させるために、薬物その他の医療費を抑える、ということは大切なことの一つと考えられています。特に緑内障治療については、病気の性格上、長期に渡る頻回の診察および治療が必要なことが多く、医療費は無視できません。本論文では、後発医薬品を用いることにより、緑内障治療のアドヒアランスが向上したと報告しています。緑内障治療薬の後発医薬品については、眼障害を起こしうる防腐剤をフリーにした薬物や、薬品の保存方法を簡便にした薬物もあり、先発品に比して薬価以外のメリットもあります。ただし、本邦においては、後発医薬品の認可の基準が比較的厳しくないために、不測の副作用が生ずることがありえて、その使用については医師と患者との話し合いを十分にすべきと考えます。
http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)01116-6/abstract
自動車運転と緑内障について
緑内障例では、自動車運転に伴う事故が健常例に比し高まる可能性があることについては、最近日本において優れたシミュレーションデータが発表されました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25724982
視野障害の様式について、どの部位での障害が事故を起こしやすいかについて、この度新しい報告がありました。一般的には緑内障眼については上半視野障害は自覚症状が出にくいとされていますが、本論文によれば運転については、下半視野障害に比し、上半視野障害の方が運転技術が劣るという結果でした。
Preperimetric glaucomaはどのくらいの割合で緑内障に移行するか?
緑内障の病期はcontinuum(連続体)と言われ、網膜神経節細胞の死から始まり、自覚症状の出現、症例によっては最後は失明に至る疾患であり、どの時点から緑内障として定義されるかについてはあくまで人為的なものと言えます。一般的には視野検査が確定診断となります。緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、眼底検査において緑内障性視神経乳頭所見や網膜神経線維層欠損所見などの緑内障を示唆する異常がありながらも通常の自動静的視野検査で視野欠損を認めない状態をpreperimetric glaucomaと称することがある、と記載されています。本論文では、実際にpreperimetric glaucomaのうちどのくらいの割合で緑内障に移行するかが報告されており、3年間で13%としています。
緑内障性視野障害の部位とQOL
緑内障性視野障害の特徴として、網膜神経線維の走行の関係から、水平経線を挟んで上または下半視野の障害が生じ、後期になると、上下とも視野障害が起こり、多くは中心視野は末期まで保たれるとされています。一般的には上半視野障害は自覚されにくく、下半視野は軽度の視野異常であっても、自覚されやすいことも指摘されています。本論文では、上または下半視野障害を有する緑内障患者のQOLを調べたもので、やはり下半視野障害の方が、QOLが低下すると報告しています。
http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1973975
正常眼圧緑内障と篩状板の厚さについて
正常眼圧緑内障とは、原発開放隅角緑内障(広義)の中で、眼圧が健常眼の統計学的な正常範囲に留まるサブタイプであり、種々の点で眼圧が高いタイプの緑内障と病因が異なることが指摘されていますが、それでもやはり眼圧が最大のリスクファクターであることには違いがなく、治療も眼圧を下げることに変わりはありません。病因の仮説の一つとして視神経線維を支持する篩状板が健常眼に比べて脆弱であることが示唆されています。本論文では、視野障害を生じた正常眼圧緑内障眼について、視野が正常な他眼や健常眼に比べて、篩状板が薄かったと報告しています。
緑内障と心理社会的機能について
緑内障患者さんが有する不安感についての論文です。本報告によれば、緑内障患者さんは健常者に比して63%高い割合で不安感を感じ、71%低い割合で自己像を有し、心理社会的健康度が32.4%低く、健康管理に対する信頼が38.3%低かったとのことです。このような傾向は視力や視野に比例するということですが、健康管理に対する信頼度を向上させるようにすると、心理社会的機能は向上するとのことです。
http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00933-6/abstract
落屑症候群に対する白内障手術について
落屑症候群とは、落屑物質が水晶体表面や瞳孔縁のみならず、房水流出路である線維柱帯や水晶体を支えるチン氏帯に付着することにより、白内障や水晶体偏位、難治緑内障を生じる疾患群です。落屑症候群に対する白内障手術はやや困難なことがあり、脆弱なチン氏帯のため、術中術後に眼内レンズの偏位が生ずることがあります。
本論文では、落屑症候群で生ずる眼内レンズの偏位が、緑内障眼、特に重症な場合に多いことを示しています。
http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00824-0/abstract
眼圧下降治療に伴う緑内障性視野障害の改善について
基本的に緑内障性視野障害は不可逆的と言われていますが、近年眼圧下降治療に伴い、一時的にでも改善する例が存在することが示唆されています。本論文では、薬物により眼圧を下降させるより、手術により眼圧を急激に下降させた方が、視野障害の改善がみられる例が多いことを示唆しています。また、手術加療に伴う眼循環の改善と視野障害の改善に関連がみられたと報告しています。
小児におけるステロイド緑内障の割合
局所または全身の、長期または大量のステロイド投与により、一部の症例で眼圧上昇がみられ、診断が遅れた場合には重篤な視機能障害を生じることがあります。一般的には診断が早ければ、ステロイド中止により眼圧は下降します。小児緑内障を後ろ向きに調べた本論文によると、ステロイド緑内障の比率は24%と極めて高く、特に春季カタルの治療に合併すると報告しています。