「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

落屑緑内障患者の体位変換による眼圧への影響

落屑緑内障とは、落屑物質によって房水流出抵抗が上昇することにより発症する、比較的高齢者にみられる続発緑内障です。有病率は低いものの、眼圧コントロールが難しく、また、比較的眼圧を低く抑えても視神経障害、視野障害が進行しやすいことが知られています。その一因として、原発開放隅角緑内障と比べて、眼圧の変動が大きいことが挙げられています。

本論文では、原発開放隅角緑内障患者と落屑緑内障患者とで体位変換による眼圧変動を調べたところ、臥位では落屑緑内障の方が眼圧変動幅が大きかったことを報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24627149

網膜中心静脈閉塞症患者の死亡率

網膜静脈閉塞症は何らかの原因で網膜静脈血流が途絶え、網膜が障害され、急激な視力低下や視野障害、ものが歪んでみえるといった変視症などを自覚する、眼科的に重要な疾患です。患者背景として、高血圧や糖尿病、その他心血管系疾患が合併していることが多いことが知られています。

本論文では、網膜中心静脈閉塞症患者では、健常者と比較して死亡率が高いことを報告しています。しかしながら、糖尿病や心血管系疾患の影響を補正して比較すると、死亡率に差がないことが示されました。したがって、網膜静脈閉塞症を有する患者には、積極的な全身疾患の管理が重要となります。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00662-3/abstract

チョコレートと網膜血管

網膜血管には自動調節能があると言われており、眼圧や血圧、気温、体位などによる眼循環低下が起こりにくいとされています。一方、緑内障眼では、このような自動調節能が低下し、例えば軽度の眼圧上昇でも眼循環が低下しやすいとされています。その一因としては網膜血管内皮の機能障害が示唆されています。

フラボノイドは一酸化窒素を介して血管を拡張させる作用があり、チョコレートやワインなどに豊富に含まれています。本論文では、チョコレート摂取により、健常眼では網膜血管が拡張したものの、緑内障眼では変化がなかったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24628966

硝子体手術と緑内障

硝子体手術は各種網膜疾患に対して行われる大変有用な手術ですが、術中の手術操作や術後の体位による眼圧変化、原疾患による影響、酸化ストレスが原因と推測されていますが白内障同時手術による影響などにより、緑内障を悪化させることがあると言われています。

本論文では、硝子体手術眼では、開放隅角緑内障の有病率が高かったと報告していますが、白内障手術の影響はなかったとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24608670

白内障手術後のドライアイ

白内障手術後の合併症の一つとして、ドライアイやそれに伴う角膜上皮障害が挙げられます。通常は点眼加療を行うなどで、経過とともに改善しますが、中には重篤なケースも散見されます。原因はよくわかっていないのですが、手術による侵襲や術中に視認性を上げるために用いる眼潅流液や生理食塩水などの影響が考えられています。

白内障手術中には、眼潅流液が貯留し、かえって視認性が落ちるため、吸引式の開瞼器を用いることがありますが、本報告では、このタイプの開瞼器の使用が、短期的なドライアイの一因と報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=24488128

眼疾患と死亡率

北京での研究で、各種眼疾患と死亡率の関係を調べたものです。糖尿病網膜症、緑内障以外の視神経症、核白内障と死亡率は関係がありましたが、遠視、近視、強度近視、翼状片、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞、緑内障、皮質白内障とは関連がみられなかったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24612916

炭酸脱水酵素阻害薬内服による急性緑内障発作

炭酸脱水酵素阻害薬内服は、長期的には四肢のしびれや代謝性アシドーシスなどの副作用のため、継続して使用することは難しいのですが、短期的には高い眼圧下降効果が得られるため、急性緑内障発作の前治療のひとつとしてよく行われています。一方、稀ではありますが、炭酸脱水酵素阻害薬には、一過性近視や毛様体浮腫、ぶどう膜滲出、水晶体―虹彩隔膜の前方偏移などの機序により、かえって閉塞隅角緑内障を起こしうることも言われており、少ないですが、症例報告がなされています。 本論文は、急性高山病予防に炭酸脱水酵素阻害薬内服を行ったところ、急性緑内障発作を生じたという症例報告です。 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24620322

Random forestを用いた緑内障診断

緑内障診断についての難しさは以前述べたことがあります。緑内障診断には眼圧、眼底所見、視野所見が欠かせませんが、例えば眼圧が日本人の平均値である15mmHgであっても正常眼圧緑内障の可能性があります。眼底所見にしても、健常眼の視神経乳頭形状や網膜神経線維層厚にはかなりの相違があり、「この数値を下回ったら緑内障」という診断は困難です。視野所見が最終的な確定診断になりえますが、検査時間が長く、患者さんに負担がかかり、検査ごとの測定値の変動が大きいことが知られています。

共焦点レーザー検眼鏡、Heidelberg Retina Tomograph (HRT)は立体的に視神経周囲の眼底形状の計測が可能な器械で、1990年代に開発されて以降、今でも緑内障診断に有用な検査機器です。本器械はいくつもの計測パラメータが算出されますが、各パラメータ単独での緑内障診断力は低く、また、専門家でないと判断し難いところがあり、それらパラメータを組み合わせた判別式や、machine learning classifierといった人口知能を用いた緑内障診断法も開発されましたが、立体眼底写真を用いた緑内障専門医による診断の方が良好という報告もあり、有用とは言い難いものがありました。

本論文は、決定木という、沢山のパラメータをyes/noで分類していき、それをbootstrappingという観察集団のサブグループで決定木を多数作成するrandom forest法を用いることにより、HRTによる緑内障診断が格段に向上したと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24609628

傍中心暗点を有する緑内障眼の特徴

緑内障治療において大切なことの一つは、患者さんが如何に自覚症状がない状態で一生をすごしてもらうか、ということです。視神経障害や視野障害は不可逆的なものであり、そのため早期発見早期治療が大事になりますが、なかでも傍中心暗点を有する患者さんは自覚症状を起こしやすいため、なおさら早期発見が大切になります。

本論文は傍中心暗点を有する緑内障患者さんの眼底所見を、他眼と比較したものです。両眼とも眼圧が同じであっても、傍中心暗点を有する眼では、より強い視野障害があり、乳頭出血(特に正常眼圧緑内障で、視神経障害、視野障害が生じる前にみられる眼底所見)が多く、網膜神経線維層欠損の幅が広く、網膜中心動静脈の幹がより垂直方向に移動しており、多変量解析では、この幹が水平垂直方向に移動していた、と報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24595065

皮膚充填剤による失明

皮膚のしわを目立たなくさせるために用いる皮膚充填剤(フィラー)を前頭部に用いた場合、網膜中心動脈に迷入することが稀にあり、失明したという症例報告がありました。フィラーの使用には十分留意して下さい。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1838342&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A