「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

閉塞隅角緑内障眼の屈折について

眼の屈折をおおざっぱに区分すれば、近視は眼球が大きいために入射光の焦点が網膜面より手前にある状態で、遠視はその逆となります。そのため一般的には遠視は眼球が小さいために、房水流出路である隅角もコンパクトで、狭いことが多く、流出路抵抗が上昇しやすいため、閉塞隅角緑内障眼になりやすいと言われています。とは言え、近視眼の閉塞隅角緑内障も、実際には散見され、そのような例では、眼球が大きいにもかかわらず、狭隅角であったり、浅前房であったりします。

本論文では、アジア人の閉塞隅角緑内障眼をしらべたところ、22%が近視であったことを報告しています。アジア人は他の人種に比べて近視が多いことが知られており、かつ経年的に近視化が進んでいるため、近視眼の閉塞隅角緑内障が増加してくることが予想されます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24679835

 

開放隅角緑内障患者における散瞳後の眼圧変化について

眼科診療において、検査や治療のために薬物により瞳孔を散大させることはよく行われていることです。原発閉塞隅角症においては、散瞳後に急激な眼圧上昇を来す急性緑内障発作を起こしうるので、注意が必要です。一方で、開放隅角緑内障眼や健常眼においても眼圧が変化しうることも知られています。

本論文では、落屑緑内障、原発開放隅角緑内障および健常眼において、散瞳前後の眼圧変化を調べたところ、平均値では健常眼で散瞳後に低下したものの緑内障眼では変化がなく、また、落屑緑内障眼の28.3%、原発開放隅角緑内障眼の16.7%で眼圧上昇がみられたことを報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24682599

アメリカにおける失明原因(人種による違いについて)

アメリカは代表的な多民族国家で、同じ生活環境で、人種による疾病や治療効果の違いを調べるために、疫学的には有用な調査場所と言えます。現時点において、白人やヒスパニックの失明原因の第一位は加齢黄斑変性で、アフリカ系アメリカ人では白内障が一位になっています。また、アフリカ系アメリカ人やヒスパニックでは、白人よりも緑内障による失明者が多いことが特徴で、今後アメリカでは、白人の人口が減少するに伴い、緑内障有病率が上昇することが予想されています。

http://one.aao.org/eye-disease-statistics

シリコーンオイル眼に対する選択的レーザー線維柱帯形成術

網膜剥離などに対する硝子体手術に対して、剥がれた網膜を復位させるために、タンポナーデの役割として、ガスやシリコーンオイルを眼内に注入することがあります。これらは当然タンポナーデとして、網膜に圧力を加えて剥離を治すわけですので、眼圧も上がることがあります。それらの眼に対して濾過手術のような緑内障手術は、せっかくのタンポナーデの効果を落とす結果になるので、治療の選択肢にはなりにくいところがあります。

本論文では、シリコーンオイル眼で、選択的レーザー線維柱帯形成術を行った結果、眼圧が下がったことを報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24671473

落屑症候群患者の死亡率

落屑症候群は、眼組織が線維性細胞外物質である落屑物質を産生し、水晶体や虹彩、隅角に進行性に付着し、続発緑内障や白内障を発症させる疾患群です。落屑物質は眼組織のみならず、皮膚や心臓、肺、肝臓などの全身臓器にも存在することが知られており、中でも、血管内皮に存在した場合、眼循環のみならず、全身循環が低下すると考えられ、心血管系疾患を生じやすいとしています。

本論文は、落屑症候群が生じた群と健常群と死亡率を比較した報告ですが、差がなかったとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24674619

亜急性原発閉塞隅角緑内障の診断について

緑内障診療ガイドラン(第三版)によれば、原発閉塞隅角緑内障の分類の中で、発症速度による分類では、「急性」と「慢性」が定義されているものの、その中間型である「亜急性」または「間欠性」は明確には定義されていません。欧州緑内障学会が発行している緑内障ガイドラインでは、「急性に類似しているが、より弱い臨床所見しかなく、自然に寛解する」と定義されています。すなわち、自覚症状があったとしても、眼科医院にかかる時には隅角所見以外には臨床所見に乏しく、診断しづらいことが考えられます。しかしながら、繰り返す発作により、視神経が次第に障害され、不可逆的な視機能障害を起こしうるため、やはり早期診断が必要になります。

本論文によると、亜急性原発閉塞隅角緑内障の唯一の自覚的所見は頭痛であり、多くは週1~2回の頭痛を経験していて、眼痛、前頭部痛、片頭痛様の症状があり、頭痛から緑内障診断までの平均期間は実に2.6年ということです。緑内障専門医に受診するきっかけは他科からの紹介が多く、73%は3人以上の他科の先生の診察を受けていたということです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24677021

 

乳頭出血と篩状板

乳頭出血とは、視神経乳頭近傍にみられる緑内障ではよく観察される所見で、乳頭出血がみられる場合、その近傍の網膜神経線維層欠損が後に起こり、その部に対応した視野障害をきたすことが多いことはよく知られていることです。しかしながら、乳頭出血がなぜ生じるかは不明で、出血が視神経障害を引き起こすのか、視神経障害を起こす時に血管が障害されるのかもはっきりとわかっていません。

近年、enhanced depth imaging spectral domain optical coherence tomography という方法を用いることで、視神経の支持組織である篩状板の観察が生体眼で可能となっています。本論文では、乳頭出血を伴った原発開放隅角緑内障(POAG)眼では、伴わないPOAG眼と比較して、前部篩状板の後方湾曲や篩状板の横ずれなどの変化が多く観察され、しかもそれらの変化は乳頭出血部位の近傍であったことを示し、そのため、篩状板の形状の変化により毛細血管が破綻し、乳頭出血が生ずると仮説しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24677111

網膜厚とパーキンソン病

パーキンソン病は神経変性疾患の一つであり、大脳や脳幹に属する黒質線条体の異常によって生じると言われています。本疾患では、眼科における診断機器の性能の向上により、緑内障と同様、網膜神経線維層にも異常がみられるという報告がいくつかなされています。

本論文では、網膜神経線維層などの網膜の構造を観察する光干渉断層計(OCT)で、パーキンソン病患者の網膜厚を調べたところ、健常者に比べると網膜神経線維層厚や黄斑部の網膜厚が薄く、その程度はパーキンソン病の重症度に相関していたと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24276697

先進国における失明原因の変化

1990年と2010年の東~中央ヨーロッパにおける失明者の割合と原因の変化を調べた論文です。高齢化にもかかわらず、失明者は0.2%~0.1%に、視覚障害者は1.6%~1.0%に低下しました。失明原因は1990年では白内障が最多でしたが、2010年では、高所得の国で黄斑変性と屈折異常が最も多かったとのことです。緑内障や糖尿病網膜症は4位から5位で、トータルで考えると、白内障の低下と黄斑変性の増加が際立っているとのことでした。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24665132

原発開放隅角緑内障発症の危険因子

4316人に対して行われた6年間に渡る南インドでのコホート研究によると、緑内障発症率は2.9%で、ベースライン時の年齢のほか、都会生活者、高眼圧、近視、眼軸長が危険因子として挙げられました。特にベースライン時に薄い角膜厚と高眼圧がある例では緑内障になりやすいと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24650554