「緑内障」カテゴリーアーカイブ

OCTによる黄斑部での緑内障診断

現在汎用されている光干渉断層計(optical coherence tomograph; OCT)では、網膜の層構造を鮮明に描出することが可能となっているため、各種網膜疾患のみならず、緑内障診断についても大変有用になっています。特に網膜神経節細胞が多数存在する黄斑部での詳細な観察が可能となったことは、緑内障診断に革命をもたらしたと言っても過言ではありません。緑内障は網膜神経節細胞の障害により生じますが、今日、同細胞が関与する、内網状層、網膜神経節細胞層、網膜神経線維層のどの層を評価することが、緑内障診断に有用であるか、議論がなされています。

本論文では、preperimetric glaucoma(眼底検査において緑内障性視神経乳頭所見や網膜神経線維層欠損所見などの緑内障を示唆する異常がありながらも通常の自動静的視野検査で視野欠損を認めない状態)と健常眼を対象として、黄斑部でのOCT(トプコン社製)を用いた緑内障診断を行ったところ、、内網状層と網膜神経節細胞層を併せた解析(GCIP)と、上記の3つの層を併せた解析(GCC)が、網膜神経線維層単独の解析よりも有用であったとしています。すなわち、緑内障早期診断には、GCIPまたはGCCの解析が有用であると結論づけています。

正常眼圧緑内障眼における中心視野障害と血流の自動調節能

緑内障診療ガイドライン(第三版)において、眼圧が統計学的な正常値に留まる正常眼圧緑内障においては、主に「視神経の眼圧に対する脆弱性には個体差があり、特定の眼圧値により原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障を分離できないため、両者を包括した疾患概念として原発開放隅角緑内障(広義)と」しています。しかしながら、正常眼圧緑内障においては、眼圧以外の種々の因子により視神経障害、視野障害を来している可能性の存在は、現在に至るまで多くの報告があります。視野異常については、正常眼圧緑内障では、原発開放隅角緑内障(広義)と比べてより中心視野が障害を受けやすいと言われています。また、眼循環や全身循環の影響を受けやすいとも言われており、本来あるべき網膜血管の自動調節能(眼圧の上下により血流が変化しにくい)が低下していたり、片頭痛や起立性低血圧が多いことも示唆されています。

本論文では、正常眼圧緑内障眼において、中心視野障害がある例では、周辺視野障害がある例と比べて、心拍数の変動が大きく、上述した自動調節能が低下している可能性を示唆しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24692126

緑内障治療薬に対するアドヒアランスについて

緑内障の治療は、多くの場合、眼圧を下降させるための薬物治療から開始されます。しかしながら、せっかく医師が薬物を処方しても、患者さんが使用しなければ意味がありません。緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「アドヒアランスとは患者も治療方法の決定過程に参加したうえ、 その治療方法を自ら実行することを指すものと定義され」ますが、高血圧や高脂血症、糖尿病に比べると、緑内障治療薬のアドヒアランスは極めて低いことが言われており、報告によって異なりますが、20%~50%と言われております。

本論文では、緑内障治療薬に対するアドヒアランスを調べた結果、若年、抑うつ状態、薬物治療に何らかの問題がある患者さんのアドヒアランスは悪く、薬物に対する実効感覚や病気が治るという期待が高い患者さんほど良好だったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24692604

原発閉塞隅角症眼の脈絡膜厚について

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、原発閉塞隅角症とは、「原発性の隅角閉塞があり、眼圧上昇または器質的な周辺虹彩前癒着を生じているが緑内障性視神経症は生じていない症例」と定義されており、すなわち原発閉塞隅角緑内障になる一段階手前の状態と定義しています。一方、米国眼科学会や欧州緑内障学会の緑内障ガイドラインの定義では、包括的に原発閉塞隅角症というカテゴリーがあり、その中に原発閉塞隅角緑内障が定義されています。本論文は海外論文ですので、後者の定義に準じて記載します。

原発閉塞隅角症は、水晶体の膨隆や前方移動、虹彩厚の厚み、毛様体の腫脹や前方回転、ぶどう膜滲出などにより惹起されると考えられており、その中で、脈絡膜の厚みの増加も示唆されています。本論文では、年齢や眼軸長、性差を補正したうえで、原発閉塞隅角症では、黄斑部の脈絡膜厚が健常眼に比して厚かったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24697943

正常眼圧緑内障患者の長期経過

本論文では、正常眼圧緑内障411症例623眼を10年以上経過観察できた症例のうち(初診時は自覚症状なし)、視覚障害(WHOの基準に準じてますが、失明は視力0.05未満または中心視野10度以内、ロービジョンは視力0.3未満または中心視野20度以内と定義)が20症例16眼(失明8眼、ロービジョン12眼)であったと報告しています。視覚障害の最大の危険因子は初診時の視野障害の程度とのことです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24698142

網膜静脈拍動と乳頭出血

眼底を精査すると網膜静脈の拍動をみかけることがあります。古典的には、拍動がなかった場合に、頭蓋内圧亢進を疑う必要があると言われており、眼循環の低下のサインとも考えられています。一方、乳頭出血は緑内障の発症や病期の進行を示唆する重要な所見であるものの、網膜神経節細胞の障害に伴い発生する所見なのか、出血後の循環不全に伴い、網膜神経節細胞が障害されるのか未だはっきりとはわかっておりません。

本論文では、網膜静脈の拍動は開放隅角緑内障眼の60.7%にみられ、拍動がみられなかった例では、低い未治療時眼圧、眼軸長、視野障害と関連があったものの、乳頭出血とは関連がなかったと報告しております。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24699377

睡眠時の体位による緑内障性視野障害の違い

一般的に原発開放隅角緑内障においては、片眼性であることは少なく、視神経や視野障害の程度、更には障害の進行速度にも左右眼で類似する傾向にあることはよく知られています。一方で、稀に左右眼同等の眼圧であっても、視神経、視野障害に左右眼で大きな差がみられる症例もみることがあります。

本論文では、視野障害の程度に差がある症例において、視野が悪い方の眼を下にした側臥位をとって睡眠する傾向があったと報告しています。最近の他の報告でも、下の方の眼が眼圧が高めであることが示されており、そのようなことが理由と考えられます。

http://www.ajo.com/article/S0002-9394(13)00786-1/abstract

閉塞隅角緑内障眼の屈折について

眼の屈折をおおざっぱに区分すれば、近視は眼球が大きいために入射光の焦点が網膜面より手前にある状態で、遠視はその逆となります。そのため一般的には遠視は眼球が小さいために、房水流出路である隅角もコンパクトで、狭いことが多く、流出路抵抗が上昇しやすいため、閉塞隅角緑内障眼になりやすいと言われています。とは言え、近視眼の閉塞隅角緑内障も、実際には散見され、そのような例では、眼球が大きいにもかかわらず、狭隅角であったり、浅前房であったりします。

本論文では、アジア人の閉塞隅角緑内障眼をしらべたところ、22%が近視であったことを報告しています。アジア人は他の人種に比べて近視が多いことが知られており、かつ経年的に近視化が進んでいるため、近視眼の閉塞隅角緑内障が増加してくることが予想されます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24679835

 

開放隅角緑内障患者における散瞳後の眼圧変化について

眼科診療において、検査や治療のために薬物により瞳孔を散大させることはよく行われていることです。原発閉塞隅角症においては、散瞳後に急激な眼圧上昇を来す急性緑内障発作を起こしうるので、注意が必要です。一方で、開放隅角緑内障眼や健常眼においても眼圧が変化しうることも知られています。

本論文では、落屑緑内障、原発開放隅角緑内障および健常眼において、散瞳前後の眼圧変化を調べたところ、平均値では健常眼で散瞳後に低下したものの緑内障眼では変化がなく、また、落屑緑内障眼の28.3%、原発開放隅角緑内障眼の16.7%で眼圧上昇がみられたことを報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24682599