1990年と2010年の東~中央ヨーロッパにおける失明者の割合と原因の変化を調べた論文です。高齢化にもかかわらず、失明者は0.2%~0.1%に、視覚障害者は1.6%~1.0%に低下しました。失明原因は1990年では白内障が最多でしたが、2010年では、高所得の国で黄斑変性と屈折異常が最も多かったとのことです。緑内障や糖尿病網膜症は4位から5位で、トータルで考えると、白内障の低下と黄斑変性の増加が際立っているとのことでした。
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原発開放隅角緑内障発症の危険因子
4316人に対して行われた6年間に渡る南インドでのコホート研究によると、緑内障発症率は2.9%で、ベースライン時の年齢のほか、都会生活者、高眼圧、近視、眼軸長が危険因子として挙げられました。特にベースライン時に薄い角膜厚と高眼圧がある例では緑内障になりやすいと報告しています。
緑内障手術と白内障手術
緑内障にしろ白内障にしろ高齢になるほど有病率が高くなるため、両疾患が合併している例は多く見受けられます。両者に手術治療が必要な場合、どちらを先に行うか、あるいは同時手術にするかには、議論が分かれるところです。代表的な緑内障手術である濾過手術を先に行う場合には、眼圧コントロールが良好で、手術を行う場所を任意に決定できるというメリットがある反面、術後浅前房になりやすく、早期に白内障手術を行った場合に、眼圧コントロールが落ちてしまうというデメリットがあります。白内障手術を先に行う場合には、緑内障術後浅前房になりにくいというメリットがある反面、手術する場所を白内障手術を行った場所から離さないといけないデメリットがあります。同時手術の場合には、患者さんの負担は少なくなりますが、どちらの手術の効果もやや落ちる傾向があると考えられます。
本論文では、眼圧コントロールが不良な緑内障眼に対する白内障術後、眼圧は下がったものの、多くの例で下がるレベルは不十分だったため、緑内障手術が必要だったと報告しています。
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緑内障眼におけるOCT所見と中心視野所見
緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、OCTのような眼底三次元画像解析装置は、「緑内障性眼底変化を標準化された方法」として用いるのに「測定精度が高く、測定再現性も良好で、かつ操作が容易なコンピュータを用いた眼底画像解析装置の利用は有望な解決法の一つ」としています。一方で、このような検査機器において、「視神経乳頭形態や神経線維層厚には個人差があり、緑内障眼と正常眼の間で測定された数値のオーバーラップがみられることや、解析装置の測定精度の限界などから、緑内障と正常を完全に分別することは未だ成功していない」とも書かれています。原則的にOCTの緑内障診断はスクリーニングに適しているものの、結局は眼圧検査、視野検査などの検査が必要となります。ただし、過剰な検査も患者さんの負担になりますので、避けたいところです。
本論文では、緑内障診療において通常行われる中心24度内での視野検査で正常と判定されたものの、中心10度以内の視野検査で異常点がみつかった例で、OCTを評価すると、やはり異常があったとしています。中心10度以内の視野検査を行うか否かを判断するうえで、OCT検査は有用と言えます。
http://link.springer.com/article/10.1007/s10384-013-0298-9?wt_mc=alerts.TOCjournals
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エストロゲンと緑内障
以前にも報告を紹介しましたが、女性の閉経後のホルモン投与と緑内障には関連があります。網膜神経節細胞にはエストロゲンレセプターがあり、エストロゲンが神経保護の役割を担っている可能性があることが示唆されています。また、眼圧下降効果もあるという報告もあります。
本論文においても、閉経後の女性に対するエストロゲンが投与された例では、緑内障の有病率が低かったことを示唆しています。
https://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1815980
緑内障と眼灌流圧
原発開放隅角緑内障(広義)の中で、特に正常眼圧緑内障については、眼循環の影響が病因のひとつとして挙げられています。古典的に正常眼圧緑内障では、(眼圧が健常人の正常範囲を超える)原発開放隅角緑内障(狭義)と比較すると、下方の視野障害が起きやすいと言われており、また、夜間や早朝に低血圧を生じていたり、血圧の変動が大きかったりする患者さんが多いと言われ、そのため正常眼圧緑内障の一部に、虚血性視神経症が含まれているのではないかと示唆されてきました。
本論文では、原発開放隅角緑内障(広義)では、眼灌流圧(眼底血圧―眼圧がもとの式で、一般的に眼底血圧は全身血圧から換算されます)の変動の大きさと視神経障害、視野障害の程度に相関があったと報告しています。