月別アーカイブ: 2014年1月

緑内障治療薬で緑内障の病期の進行を遅らせることができるか?

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」で、緑内障に対する、薬物、レーザー、手術の各治療も「眼圧下降」を目指しているに他なりませんし、そのような治療もはるか昔から行われてきました。しかしながら、エビデンス(根拠)が証明されたのは20年ほど前に過ぎません。近年、エビデンスに基づいた治療の有用性が求められていますが、高いエビデンスを得るのは容易ではありません。その中で、ランダム化比較試験を多数例、多施設で行うことは、ほぼ最高と言っても過言ではないエビデンスレベルです。

「眼圧下降」が緑内障治療に有効なことは証明されたのですが、薬物治療(点眼液)で眼圧を下降させることが、緑内障治療に有効であるとする多数例、多施設のランダム化比較試験は今までありませんでした。昨年初頭にThe United Kingdom Glaucoma Treatment Study (UKGTS)と呼ばれる、ラタノプロスト点眼を用いた研究の概要が報告されました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22986112

この度、新たにUKGTSを行う症例についての報告がなされました。対象は516名、平均年齢は66歳、視野は比較的後期で、24か月間追跡調査がなされるという内容です。今後の結果を期待したいものです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24126032

飲水試験と脈絡膜厚

以前にも述べました通り、飲水試験と呼ばれる緑内障誘発試験がかつて存在し、1リットルの水を5~15分で飲んだ後の眼圧上昇の程度により、一部の症例において緑内障診断を行っていました。しかしながら本試験は、安全性および診断の有用性の低さから、今日ではほぼ廃れてしまいました。飲水試験で眼圧が上昇する機序としては、房水流出抵抗の増加とともに、脈絡膜血管の拡張などが一因であると考えられています。

本論文で著者らは、健常人において、眼底の深部組織である脈絡膜をswept-source optical coherence tomographyという方法で観察したところ、飲水試験後に脈絡膜厚が厚くなったことを報告しました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24021895

脳循環と緑内障

緑内障の本態は、「進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)」で、今日においては、眼圧は緑内障発症の危険因子の一つとして挙げられることが多く、GONは眼圧を筆頭とした種々の因子によって引き起こされているものと捉えられています。そのうちの一つが眼循環で、循環不全による緑内障発症および病期の進行を示唆する報告は多くなされています。

本論文は眼循環に大きくかかわる、後大脳動脈循環動態が、原発開放隅角緑内障においては低下していることを示唆しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23816432

加齢と緑内障

「緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)」ですが、加齢により網膜神経節細胞が減少することも知られています。しかしながら、同一被検者に対し、網膜神経節細胞の減少に伴う網膜神経線維層厚や黄斑部の網膜厚を継時的に調べた報告はほとんどなかったかと思われます。

本論文では、緑内障眼と健常眼とで、光干渉断層計(OCT)を用いて網膜神経線維層厚と黄斑部の網膜厚を前向きに4年間調べたところ、健常眼では継時的に両者が減少したことが証明され、緑内障眼においても、加齢の影響がみられたことがわかりました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23993360

流行性角結膜炎

本来夏期に流行するウイルス性結膜炎である、はやり目(流行性角結膜炎)の患者さんが、暖冬のせいか、今でも眼科受診なさる方が多く見受けられます。直接接触やタオルなどの媒介物を通じて感染すると言われています。学校保健安全法における第三種感染症に該当し、子どもの場合は罹患すると、幼稚園、保育園その他各種学校において出席停止扱いになります。特にお子様がおられるご家庭では十分お気を付け下さい。また、強い目やに、充血がみられた場合には速やかに眼科を受診して下さい。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23473088

眼科医による立体眼底写真を用いた緑内障診断

緑内障を診断するうえで入口となる検査は、多くは眼底検査であると思われますが、中でも立体眼底写真による診断は有用であることが知られています。しかしながら、その診断の正確度(正常を正常、異常を異常と診断する割合)は約80%と言われています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20045571

本論文では、立体眼底写真検査結果を用いて、同一患者の結果を1つ含む4つの視野検査結果から正しいものを眼科医に選ばせたところ、正確度は58.7%で、間違った多くのケースでは、視野障害を過大評価していたという結果でした。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23809273

白内障手術と緑内障手術

緑内障の手術適応がある患者さんは、白内障も有していることが多く、手術を行うとしたらどちらを先に行うべきか判断が難しいことがあります。白内障手術を先に行うメリットとして、術者としては浅前房になりにくいため、緑内障手術がやりやすいことが挙げられます。また、緑内障手術後の眼圧コントロールが安定していない時に白内障手術を行ってしまうと、折角の緑内障手術の効果が落ちてしまうことがあります。緑内障手術を先に行うメリットとしては、白内障手術創がなく、術後炎症が少なくてすむことが考えられ、良好な眼圧コントロールが得られることと思います。ただし、若干その後の白内障手術が難しくなることがあります。

本論文では、白内障手術が行われた緑内障(開放隅角緑内障)患者さんに対する緑内障手術(濾過手術)は、白内障手術を行っていない患者さんと比べると、眼圧コントロールが悪くなると報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1774027&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A