ベースラインデータの設定

以前より述べている通り、「緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy)」であり、網膜神経節細胞は年齢とともに健常人であっても減少するため、多くの場合、何らかのきっかけで眼科を受診し、「緑内障」の診断を受けた場合であっても、それは昨日今日「緑内障」になった訳ではなく、そこに至る長い半生の間に少しずつ網膜神経節細胞が障害を受けたということになります。従いまして、緑内障患者さんに対峙した際に、医者としては、その方の過去を知ることは不可能ですが、短期間無治療で経過をみることで、その方の将来を類推し、治療することがよくあります。つまり、ベースラインデータを取得するために、無治療のまま2~3回受診して頂き、検査のみを行うことがあります。患者さんとしては、「緑内障と診断しているのに何もしてくれない」と不安に思うかもですが、以上のような事情があるからです。

眼圧にしろ、視野にしろ、疾患による変動以外に、測定誤差や日内・季節変動があり、それを見極めたうえで治療しないと、以後の診断の判定が困難になったり間違ったりすることがありえます。よって、複数回無治療時の眼圧、視野検査を行うことが有用となります。

緑内障診療ガイドライン(第三版)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*