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緑内障治療薬とアドヒアランス

高血圧など、自覚症状がない慢性疾患に対する投薬治療において、アドヒアランスは30-70%で、多くは最初の1カ月で治療を中断すると言われています。

一方、緑内障治療薬においては、20-50%と更に低いと言われており、「緑内障は失明する病気」と説明してもアドヒアランスは42%程度、すでに片眼失明していても58%であったという報告があります。一方、アドヒアランスが不良な症例では、より高い眼圧、高度な視野狭窄がみられたとする報告もあります。

アドヒアランスを向上させることは、緑内障治療に極めて重要です。動機づけの欠如、薬の値段、疾患に対する理解、外出(旅行)などの患者側の要因もありますが、医者側も、不親切でコミュニケーションがとりづらい、十分に時間をかけた診察をしないなどの要因があります。院長もこれらのことを留意して診療していきたいと思っております。

緑内障治療におけるアドヒアランス

一般的な緑内障、特に従来正常眼圧緑内障と呼ばれていた疾患については、非常にゆっくりと病期が進行し、極論すればその人の一生の管理が必要で、長きにわたる患者と医者との信頼関係を築かなければなりません。多くの場合、緑内障の治療は薬物治療が主となりますが、従来、「患者さんがきちんと薬物を使っているか?」を示す言葉として、「コンプライアンス」という言葉が使われていました。「コンプライアンス」とは、「医師からの一方的な治療指針を患者が守ること」と定義されますが、信頼関係を得るのに不適切とされ、現在では「アドヒアランス」という用語が主に用いられています。「アドヒアランス」とは、「患者も治療方法の決定過程に参加した上、 その治療方法を自ら実行すること」と定義されます。緑内障診療において、このアドヒアランス不良が大きな問題となっており、他の疾患の薬物治療と比較してもはるかに悪いことがわかっています。

緑内障診療ガイドライン(第三版)

 

水の飲み過ぎは緑内障を悪化させますか?

緑内障誘発試験というものがいくつかあり、院長が医者になりたての頃は教科書によく載っていたのですが、例えば緑内障かどうかを調べるために、5分間に水を1リットル飲んで眼圧が上がるかどうかを調べる試験、飲水試験というものがありました。このような緑内障誘発試験は、その有用性の少なさと危険性を鑑みて、現在ではほぼ廃れてしまいました。

こちらは最新の論文で、飲水試験の方が、カフェイン接種よりも眼圧が上がるという内容です。水の飲み過ぎにしろ、カフェインの摂り過ぎにしろ、通常の生活の中では起こりえない条件でなければ眼圧は上昇しませんので、上記のような質問には、「あまり気にする必要はありません」とお答えしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24304594

緑内障って眼圧が高いの?

その通りです。ですが、「著しく高い」とまでは言えません。日本で行われた疫学調査によれば、健常眼の右眼の平均眼圧が14.5mmHgに対し、緑内障の中で最も多い病型である原発開放隅角緑内障(広義)(かつて原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障と分けて分類されていた疾患が、今日統一した用語を用いてます)の右眼の平均眼圧は15.4mmHgで、有意に緑内障眼の方が高かったものの、「著しく」というほどではありません。しかしながら、「原発開放隅角緑内障(広義)の発症および進行の危険性は、眼圧値の高さに応じて増加」し、「視神経の眼圧に対する脆弱性には個体差がある」ため、眼圧が低くても、治療の原則は「(低くても)眼圧を下げる」ことに他なりません。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15350316

緑内障ってこわい病気?

この質問には、「はい」とも「いいえ」とも言い難いことがあります。日本においては失明原因の第一位であり、もちろんこわい病気であると言えます。一方で、日本に40歳以上の5%、70歳以上の約10%の人が緑内障であり、決して珍しい病気ではなく、もちろんこれら全ての人が失明しているわけではありません。それどころか、日本における最初の緑内障疫学調査によれば、緑内障と診断された人のうち9割が「今まで緑内障と診断されてなかった」ことがわかりました。ということは、健診もしくはたまたま何かのきっかけで眼科にかからなければ、「自分が緑内障である」ということを知らずに一生過ごす可能性があるということです。

緑内障の何がこわいかといえば、失われた視野(視機能)をもとに戻す方法がなく、治療はあくまでも病気の進行を止める、または遅らせること以外にないことです。ですので、早期発見早期治療が何より大事な疾患といえます。特に40歳以上になったら、何らかの形で眼科にかかるか健診を受けることをお勧めします。

緑内障患者さんの視野って?

多くの緑内障患者さんは自覚症状がありません。自覚する代表的な初発症状は視野欠損であって、一般的には後期にならなければ視力は低下しません。でも視野欠損ってどんな風にみえるのでしょうか? みなさん視野って耳側に手をパタパタさせて、それがみえるかどうかをイメージすると思います。多くの緑内障では、鼻側の視野に暗点が出て、病期が進むとそれが深くなり、拡がっていきます。周辺の視野が欠損するのは後期にならないとおきません。つまり光に対する感度が落ちるのが最初の症状ですので、緑内障の視野検査では、感度を調べる検査をまず行うことが一般的です。調べる範囲は中心24度または30度です。なぜこの範囲を調べるのでしょうか? 理由は自覚症状が出やすい範囲であるということと、古典的に緑内障の初期では95%がこの範囲に異常がみられると言われていることからです。

院長は、検査でみられる暗点は、患者さんも同じように自覚しているものと長い間思っていました。緑内障患者さんはどのように視野異常を自覚しているかを調べた論文があります。今年報告された重要な論文です。黒いトンネルを通じてみえるとか、黒い眼帯をしているようにみえるとかいうのは稀で、多くは部分的に霧視がみえるようです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23415421

White Coat Adherence

院長は歯のメンテナンスを受けに数カ月に一度歯科医院にかかっているのですが、受診する直前に一生懸命歯を磨いてしまいます。このように、患者は医者に自分が「いい患者」であることをみせたがる傾向があります。診療機関にかかる直前に点眼する、内服するなどの行為をWhite Coat Adherenceといいます(いい日本語訳はないようですが)。緑内障診療の場で、眼圧が低いにも関わらず、視神経障害、視野障害の進行がみられる場合、White Coat Adherenceの可能性があります。いずれ述べますが、緑内障治療は完璧にできる患者の方がはるかに少ないので、かかりつけ医には、是非点眼状況を正直にお伝えすることをお勧めします。でないと、過剰な治療を勧められる可能性があるからです。

http://georgevanantwerp.com/2010/09/27/white-coat-adherence/