「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ

弱視と3D立体映像

赤ちゃんの眼は、最初は光があるなしくらいしかみえないものが、光刺激により視機能が発育し、おおよそ6歳くらいで両眼視機能が完成されると言われています。しかしながら、斜視や遠視などが原因で視機能の発育が遅くなることがあり、視力がでない、立体視ができないといった症状がでるのが弱視です。適切な治療で十分な視機能を得られることも多いですが、健常人と比べ、立体視機能が劣るケースもしばしばあります。最新号の日本眼科学会雑誌におきましても、3D立体映像の視聴において、弱視例では「立体に見えない」や「疲れる」といった症状が多々あると報告がなされましたが、最新の海外論文でもそれを支持する報告が出されました。

弱視は早期発見と適切な治療(特に家族の協力)が肝要です。小さいお子様がおられる家庭につきましては、十分注意して下さい。また、小さい子の3D立体映像の視聴は急性内斜視などの合併症を起こすことがありますので要注意です。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23928879

緑内障と白内障

緑内障患者さんの経過を長くみていると、かすみ目を訴える方が出てきます。「全体的にぼやける」の症状の場合は、多くは白内障が原因です。緑内障は視野全体が障害を起こすことはめったになく、局所的に見えないところができて、それが拡がっていくパターンがほとんどです。白内障は主に加齢に伴い誰でも生じ、徐々に進行していきます。「かすみ目は白内障が原因です」とお話しすると、「緑内障でも白内障になるの?」「緑内障があると白内障手術ができないって聴くけど?」などのご質問を受けることがあります。「白内障は水晶体という目のレンズの病気で、緑内障は視神経の病気ですから、名前が似ていても違うものですし、緑内障があっても白内障手術はほとんど問題なくできますよ」と、説明したいところなのですが、水晶体は加齢とともに大きくなり、前方に移動することがあり、眼内の房水循環を妨げ、眼圧を上げることがあるので、「緑内障治療の一環として白内障手術を提案します」とお話するのが非常にややこしいです。緑内障と白内障、名前が似ていて印象に残りやすいのはいいのですが、混同してしまうのが、悩ましいところです。

目薬をさし忘れました!

正直に点眼状況を教えて下さる患者さんが結構います。ありがたいです。上記の一言の後に、「翌日に追加してさした方がいいですか?」と聴かれることがあります。状況に応じて言い方を変えてますが、基本的に「翌日も決められた方法で点眼して下さい」とお話しています。理由は二つ。一つは多くの点眼液には防腐剤が含まれているのですが、これが目の、特に表面にある角膜を障害させることがあり、多く点眼するとそのリスクが高まるからです。二つ目は、緑内障治療薬についてですが、プロスタグランジン関連薬については、過剰な点眼が眼圧下降効果を落としてしまうことが知られています。また、交感神経β遮断薬などについても、微妙なバランスで眼圧を下げている面があり、症例によっては、かえって濃度を上げると眼圧下降効果に影響を及ぼす可能性があると考えています。ただし、炭酸脱水酵素阻害薬である、ブリンゾラミドは一日二回点眼ですが、効果が不十分な場合、三回点眼も許されています。Overdoseが眼圧に及ぼす影響について、知見が少ないのが現状です。

Preperimetric glaucoma

昨日院長はいわゆるコメディカルの方々に招かれて、講演をしてきました。その中で、「Preperimetric glaucomaに対する治療はどうしてますか?」という質問がありました。「Preperimetric glaucoma」とは、緑内障診療ガイドライン(第3版)によれば、「眼底検査において緑内障性視神経乳頭所見や網膜神経線維層欠損所見などの緑内障を示唆する異常がありながらも通常の自動静的視野検査で視野欠損を認めない状態」と書かれています。提唱したのは、確かJonas先生という緑内障の権威だったかと思います。アメリカ眼科学会においては「緑内障疑い」と定義しているカテゴリーに入ります。緑内障は早期発見早期治療が必要としながらも、「Preperimetric glaucoma」に対する治療は慎重に考えるべきと思います。確かに緑内障は網膜神経節細胞の死から失明に至る連続体と考えれば、「Preperimetric glaucoma」の時点で治療を開始すれば、視野障害(視機能障害)を生じさせる危険性を軽減させるとも言えます。しかしながら、緑内障に類似した他の疾患である可能性もあり、何も治療しなくても視野障害が一生起きない可能性もあるからです。その場合、「緑内障疑い」として、治療薬を使わず、経過観察を行います。

「緑内障の疑いがありますから、経過をみさせて下さい」と医者から言われた場合、一般的には、「緑内障と診断できない」とか「治療をしてくれない」のではなく、「何もしなくても視機能障害を起こさない可能性が高い」という場合が多いと思われます。医者としては、治療を開始するのは容易ですが、一度開始したら、ほぼ一生治療を続けなければなりませんので、「治療をいつから行うか?」については慎重にならざるをえないという事情があります。