「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ
本日の新医院
近視の進行を抑えるコンタクトレンズ
近視は特にアジア人に多いと言われ、10代の80%を占めると報告されています。近視を抑制させる研究は、近年とても盛んに行われています。眼を正視化させるには、如何に調節なしに網膜上に対象物の焦点を合わせられるか?によります。しかしながら、実際の眼のオートフォーカス機能は若干弱く、自分でははっきりみえているように思っても、焦点が網膜面より後ろ(遠視側)に合っていたり、網膜周辺部でどうしても後ろに焦点が合ったりするため、目の長さ(眼軸長)が伸びて近視化すると考えられています。
ホンコンで行われた研究によれば、中心が正視で周辺が近視側に矯正させた二焦点のコンタクトレンズを装用してもらうことで、わずかですが、近視が抑制されました。
緑内障の危険因子
アメリカ眼科学会が発行している各種疾患のガイドラインpreferred practice patternsによると、原発開放隅角緑内障(広義)の危険因子は下記としています。
・眼圧レベル ・高齢 ・緑内障家族歴 ・アフリカ系人種またはラテン/ヒスパニック系人種 ・薄い角膜厚 ・低い眼潅流圧 ・Ⅱ型糖尿病 ・近視 ・遺伝子異常
いくつの眼圧で「緑内障」と診断するかの規定はないのは、日本も同じです。代表的な眼圧計であるGoldmann眼圧計を用いた感度(緑内障患者を緑内障と診断する力)46%、特異度(正常者を正常と診断する力)95%と言われており、眼圧値で緑内障を診断することは困難と言えます。
正常眼圧緑内障
昨日同級の眼科女医さんが、緑内障についてのお話を某地方局でされました。非常にわかりやすく的確で、感銘を受けました。その中で出てきた用語、「正常眼圧緑内障」は、医者側としては患者さんに啓蒙したい用語なのですが、たぶん患者さんとしては却ってとっつきにくいかもです。「正常眼圧」って何か? たまに患者さんから質問を受けるのですが、簡単に言えば正常人を100人集めたら中央の95人が含まれる眼圧のことで、統計学的に規定されているものです。以前にも似たようなお話をしましたが、病気はある一定値を超えたから生じるというわけではなく、どの値で生じるかは人それぞれです。実際に眼圧が高い原発開放隅角緑内障(狭義)と正常眼圧緑内障を包括した用語、原発開放隅角緑内障(広義)においては、実に多くの正常眼圧患者(日本においては90%以上と言われてます)が含まれます。緑内障患者全体でみても70%以上とも言われています。
では、「正常眼圧」はどのくらいか? 日本における唯一の疫学調査である多治見スタディによれば、「右眼眼圧は14.6±2.7 mmHg(平均値±標準偏差)、左眼眼圧は14.5±2.7 mmHg(同)であり、正常眼圧を平均±2標準偏差で定義すると、正常上限は19.9~20.0 mmHg」となり、したがって「日本人において眼圧20 mmHgを境に原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障の二臨床病型に分けることには一定の合理性」があります。
過去には「低眼圧緑内障」とも呼ばれていた一群ですが、病態が違う緑内障が含まれる可能性があることと、統計学的に正常眼圧であることから、「正常眼圧緑内障」という用語は院長が医者になりたての頃(20年近く前)に広まりましたが、現在においては、「正常」という用語が却って混乱を招くという声もあり、特に欧米においては比較的眼圧が低いという意味で、「low pressure glaucoma」という用語が復活しつつあるようです。患者さんには、「体温が37度でだるくなる人と、ぴんぴんする人がいるように、眼圧も高くても失明しない人もいれば逆の人もいる」などの説明をさせていただいてます。
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弱視と3D立体映像
赤ちゃんの眼は、最初は光があるなしくらいしかみえないものが、光刺激により視機能が発育し、おおよそ6歳くらいで両眼視機能が完成されると言われています。しかしながら、斜視や遠視などが原因で視機能の発育が遅くなることがあり、視力がでない、立体視ができないといった症状がでるのが弱視です。適切な治療で十分な視機能を得られることも多いですが、健常人と比べ、立体視機能が劣るケースもしばしばあります。最新号の日本眼科学会雑誌におきましても、3D立体映像の視聴において、弱視例では「立体に見えない」や「疲れる」といった症状が多々あると報告がなされましたが、最新の海外論文でもそれを支持する報告が出されました。
弱視は早期発見と適切な治療(特に家族の協力)が肝要です。小さいお子様がおられる家庭につきましては、十分注意して下さい。また、小さい子の3D立体映像の視聴は急性内斜視などの合併症を起こすことがありますので要注意です。
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緑内障と白内障
緑内障患者さんの経過を長くみていると、かすみ目を訴える方が出てきます。「全体的にぼやける」の症状の場合は、多くは白内障が原因です。緑内障は視野全体が障害を起こすことはめったになく、局所的に見えないところができて、それが拡がっていくパターンがほとんどです。白内障は主に加齢に伴い誰でも生じ、徐々に進行していきます。「かすみ目は白内障が原因です」とお話しすると、「緑内障でも白内障になるの?」「緑内障があると白内障手術ができないって聴くけど?」などのご質問を受けることがあります。「白内障は水晶体という目のレンズの病気で、緑内障は視神経の病気ですから、名前が似ていても違うものですし、緑内障があっても白内障手術はほとんど問題なくできますよ」と、説明したいところなのですが、水晶体は加齢とともに大きくなり、前方に移動することがあり、眼内の房水循環を妨げ、眼圧を上げることがあるので、「緑内障治療の一環として白内障手術を提案します」とお話するのが非常にややこしいです。緑内障と白内障、名前が似ていて印象に残りやすいのはいいのですが、混同してしまうのが、悩ましいところです。