「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ
緑内障と家族歴
緑内障発症のリスクファクターとして家族歴があることはよく知られています。また、ひとことで「緑内障」と呼びますが、原発緑内障、続発緑内障、発達緑内障など、その発症機序に応じて、様々な病型があります。
本研究はそれら様々な病型に家族歴が関係するのかを調べたもので、全ての緑内障病型有意にに家族歴があったということで、特に母または兄弟が緑内障の方は要注意ということでした。近しい方に緑内障患者がいる場合には、症状がなくとも一度眼科での検査を行うことをお勧めします。
本日の新医院
アドヒアランスとpersistence
医者が処方した投薬を患者がきちんと服用しているか、点眼しているか、を示す用語に、最近はアドヒアランスを用いるようになったことは以前お話しました。アドヒアランスは、「医師からの一方的な治療指針を患者が守るのではなく、患者も治療方法の決定過程に参加した上、 その治療方法を自ら実行する」ことです。一方persistenceという用語があります。アドヒアランスは「薬物を使用している状態であり、途中中断があってもいい」というニュアンスがありますが、persistenceは、「連続して薬物を使用している状態」を言います。緑内障治療薬におけるアドヒアランスは20-50%と言われていますが、persistenceは10%を下回ることがあると言われています。
緑内障の90%が病院にかかっていないことも併せると、(緑内障であっても治療が必要でない例も実は多いのですが)、10%×10%で、きちんと治療がなされている緑内障患者さんは、1%しかいない計算になります。
本日の新医院(2)
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近視の進行を抑えるコンタクトレンズ
近視は特にアジア人に多いと言われ、10代の80%を占めると報告されています。近視を抑制させる研究は、近年とても盛んに行われています。眼を正視化させるには、如何に調節なしに網膜上に対象物の焦点を合わせられるか?によります。しかしながら、実際の眼のオートフォーカス機能は若干弱く、自分でははっきりみえているように思っても、焦点が網膜面より後ろ(遠視側)に合っていたり、網膜周辺部でどうしても後ろに焦点が合ったりするため、目の長さ(眼軸長)が伸びて近視化すると考えられています。
ホンコンで行われた研究によれば、中心が正視で周辺が近視側に矯正させた二焦点のコンタクトレンズを装用してもらうことで、わずかですが、近視が抑制されました。
緑内障の危険因子
アメリカ眼科学会が発行している各種疾患のガイドラインpreferred practice patternsによると、原発開放隅角緑内障(広義)の危険因子は下記としています。
・眼圧レベル ・高齢 ・緑内障家族歴 ・アフリカ系人種またはラテン/ヒスパニック系人種 ・薄い角膜厚 ・低い眼潅流圧 ・Ⅱ型糖尿病 ・近視 ・遺伝子異常
いくつの眼圧で「緑内障」と診断するかの規定はないのは、日本も同じです。代表的な眼圧計であるGoldmann眼圧計を用いた感度(緑内障患者を緑内障と診断する力)46%、特異度(正常者を正常と診断する力)95%と言われており、眼圧値で緑内障を診断することは困難と言えます。
正常眼圧緑内障
昨日同級の眼科女医さんが、緑内障についてのお話を某地方局でされました。非常にわかりやすく的確で、感銘を受けました。その中で出てきた用語、「正常眼圧緑内障」は、医者側としては患者さんに啓蒙したい用語なのですが、たぶん患者さんとしては却ってとっつきにくいかもです。「正常眼圧」って何か? たまに患者さんから質問を受けるのですが、簡単に言えば正常人を100人集めたら中央の95人が含まれる眼圧のことで、統計学的に規定されているものです。以前にも似たようなお話をしましたが、病気はある一定値を超えたから生じるというわけではなく、どの値で生じるかは人それぞれです。実際に眼圧が高い原発開放隅角緑内障(狭義)と正常眼圧緑内障を包括した用語、原発開放隅角緑内障(広義)においては、実に多くの正常眼圧患者(日本においては90%以上と言われてます)が含まれます。緑内障患者全体でみても70%以上とも言われています。
では、「正常眼圧」はどのくらいか? 日本における唯一の疫学調査である多治見スタディによれば、「右眼眼圧は14.6±2.7 mmHg(平均値±標準偏差)、左眼眼圧は14.5±2.7 mmHg(同)であり、正常眼圧を平均±2標準偏差で定義すると、正常上限は19.9~20.0 mmHg」となり、したがって「日本人において眼圧20 mmHgを境に原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障の二臨床病型に分けることには一定の合理性」があります。
過去には「低眼圧緑内障」とも呼ばれていた一群ですが、病態が違う緑内障が含まれる可能性があることと、統計学的に正常眼圧であることから、「正常眼圧緑内障」という用語は院長が医者になりたての頃(20年近く前)に広まりましたが、現在においては、「正常」という用語が却って混乱を招くという声もあり、特に欧米においては比較的眼圧が低いという意味で、「low pressure glaucoma」という用語が復活しつつあるようです。患者さんには、「体温が37度でだるくなる人と、ぴんぴんする人がいるように、眼圧も高くても失明しない人もいれば逆の人もいる」などの説明をさせていただいてます。