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緑内障診断の難しさ

以前お話した通り、眼圧値のみで緑内障かどうかを診断するのは困難です。特に正常眼圧緑内障が多いと言われている日本においてはなおさらです。一般的に確定診断は視野検査になりますが、手間がかかる検査で、眼科受診者全員に視野検査を行うことも困難と言えます。従いまして、緑内障診断の入り口は眼底検査になるかと思われます。検眼鏡法または眼底写真撮影法が主となるかと思いますが、問題は視神経の形状が個々においてvariationがあるため、緑内障専門医と言えども、診断にバラつきがあります。診断が一致するかどうかの指標として、κ値というものがあり、0.5あたりで中等度の一致と言われているのですが、眼底検査におけるκ値は0.20-0.84と、高くないことが知られています。

緑内障診断には、種々の検査が必要で、総合的に勘案した上で確定診断がなされますので、どうしても検査が多くなりがちになります。

http://www.touchophthalmology.com/articles/clinical-optic-disc-evaluation-glaucoma

風邪薬と緑内障

大分寒くなり、風邪をこじらしている方も多いのではないかと思います。風邪薬や胃薬、睡眠薬などの添付文書に「緑内障の方は禁忌または注意するよう」喚起がなされていることがあります。これは副交感神経を刺激または交感神経を抑制させる働きを持つ薬物が、場合によっては急性緑内障発作を生じさせる可能性があり、その際には手術治療を行わないと失明に至ることがあるからです。

しかしながら、眼科医の側からみると、緑内障の中で、急性緑内障発作を起こす「閉塞隅角緑内障」の病型は少ないこと、そもそも緑内障の診断がなされて、急性緑内障発作が起こりそうな方にはすでにレーザーまたは手術治療がなされているケースが多いことから、むしろ怖いのは、「緑内障の有無を調べたことがない人」と思われます。

多くの緑内障は、自覚症状なしに病期が進行しますので、症状がなくとも、中高年の方の眼科検診を勧めます。

緑内障と体重

体重(body mass index)と眼圧は関係があります。体重が重ければ眼圧は高くなります。一方、前回述べましたように、立ったり座っていたり、よりも寝た体勢の方が眼圧が高くなります。

では、体重が体位による眼圧変化に影響を与えるでしょうか?最新の論文で、体重と体位には関係がみられなかったとする報告がありました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24247996

緑内障と体位

緑内障患者さんに、「日常生活で気をつけることはありますか?」とよく聴かれます。いろいろな行為により眼圧が変動することはよく知られています。例えば仰向けになると眼圧が上がります。しかしながら「睡眠時間を短くしましょう」という訳にもいかず、通常の生活における眼圧変動以上に、緑内障治療薬の効果が勝っていると考え、「目薬をきちんとさすこと、それだけでも大変なことなのですが、一番有用です」とお答えしています。

緑内障の大家Ritch先生の名著で1996年を最後に改訂がなされていないとは思いますが、膨大な緑内障の知見を網羅していたThe Glaucomasによれば、眼圧が一番上がる体位は逆立ちです。しかしながら、一日中逆立ちをするわけではないので、あまり問題になることはないはずです。

一方、ヨガについては、最大で20mmHg 以上の眼圧変化があり、長い時間同じ姿勢をとることがあると思われ、緑内障患者さんは注意すべきと思います。

http://www.glaucoma-eye-info.com/yoga-positions.html

眼圧と血圧

「眼圧と血圧って関係がありますか?」と聴かれることがよくあります。実は関係はあります。わずかですが、血圧が高いほど眼圧も高くなるという報告があります。しかしながら重要なことは、緑内障の危険因子に低血圧があることがよく知られています。血圧が低ければ、眼循環が悪くなり、視神経に栄養を与えることができなくなるため、視神経障害が強くなる、という仮説があります。緑内障が眼圧以外の種々の因子によって成立しているであろうことの根拠でもあります。
いずれにしても、まだまだ知見が足りない分野であり、緑内障に対する血圧の関係はあったとしてもわずかですので、後期の正常眼圧緑内障症例のほかの方には、あまり気にする必要がない旨、お話しております。