「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ

目薬の正しいさし方

正しい点眼法は種々報告がありますが、ここではZimmerman (1984)の方法を示します。

¢眼瞼縁(まぶたの縁)に近い下眼瞼(下まぶた)を親指と人差し指でつまむ
¢少しひっぱり下結膜嚢のパウチ(ふくろ)をつくる
¢点眼瓶の先はどこにも触れないようにする
¢点眼瓶の先を直視できる位置にもっていく
¢点眼をする直前に上方視(自分の額をみる)し、パウチ内に点眼液が貯まるようにする
¢点眼したら閉瞼し、鼻涙管部(めがしら)を2分間圧迫する
少し違いますが、製薬会社のサイトも示します。
ポイントは、①下まぶたに点眼液が貯まるようにすると効果的、ただし2滴以上いれても溢れるだけで効果が上がるわけではない ②点眼瓶の先をまつげや眼球に当てないように注意する ③点眼瓶の後ろを押すことにより、過剰に点眼液が出るのを防げる ④最後にめがしらを押さえて、全身に点眼液がまわらないようにする一方、眼球に効果的に浸透させる工夫をする、といったところでしょうか?

団体信用生命保険と緑内障

緑内障の有病率は40歳以上で5%と言われ、特に中高年になったら注意すべき疾患の一つと言えます。一方、40歳以上になると、マイホームを作るために住宅ローンを組む人が増えてくると思われます。その際、一般的には生命保険に加入することが義務づけられると思いますが、代表的な生命保険である、団体信用生命保険には「緑内障」の告知義務があります。条件は、「過去3年以内に(中略)、手術を受けたことまたは2週間以上にわたり医師の治療(診査・検査・指示・指導を含む)・投薬を受けたことがありますか。」です。一般的には緑内障は慢性疾患のため、容易に上記条件に該当することが予想されます。そのため、緑内障の治療が開始されると、団体信用生命保険に加入できなくなる恐れがあります。

私ども医者は、患者の社会的背景を常に考えながら治療を行いますが、時には事情を聴取し損ねることもありますし、また、社会的背景に拘泥されて治療を遅らせたり、怠ってはならないとも思います。もし、ご心配の方はかかりつけ医にご相談下さい。

 

近視と人種

アジア人に近視が多いことはいくつかの報告がなされています。しかしながら、本当に人種によるものか、環境因子も関与しているのかを証明することは困難です。

本報告はロスアンジェルスに住む(すなわち同じ環境下にいる)未就学児の屈折を多数令で人種毎に比較したもので、やっぱりアジア人に近視が多かったというデータです。

ただし、例えば「アジア人が近業時間が長い」かもといったバイアスが排除されてはいないので、本当に人種が関係しているのかは未だ不明と思われます。

 

 

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00576-9/abstract?refuid=S0161-6420(13)01072-5&refissn=0161-6420

いつまで目薬をさすべきなのでしょうか?

緑内障治療薬を使用している患者さんによく聴かれる質問です。「(少なくともお元気なうちは)一生です」とお答えするしかありません。

緑内障で失明するリスクは(外傷や手術の合併症で低すぎることがない限り)眼圧が低ければ低いほど低下します。また、緑内障は年齢と関係があり、網膜神経節細胞は健常人であっても年齢とともに減少し、理論値では150歳になれば全員緑内障になると言われています。その方の余命が何歳であるのかが分からない以上、「一生」とお答えするしかありません。

緑内障診療ガイドラインにも書かれていますが、以上の理由もあり、医者側としては「薬物治療の原則は必要最小限の薬剤と副作用で最大の効果を得ることである」必要があり、その方の「QOL、治療にかかわる費用、アドヒアランスなどへの配慮」も必要となります。

緑内障診療ガイドライン第三版

緑内障診断の難しさ

以前お話した通り、眼圧値のみで緑内障かどうかを診断するのは困難です。特に正常眼圧緑内障が多いと言われている日本においてはなおさらです。一般的に確定診断は視野検査になりますが、手間がかかる検査で、眼科受診者全員に視野検査を行うことも困難と言えます。従いまして、緑内障診断の入り口は眼底検査になるかと思われます。検眼鏡法または眼底写真撮影法が主となるかと思いますが、問題は視神経の形状が個々においてvariationがあるため、緑内障専門医と言えども、診断にバラつきがあります。診断が一致するかどうかの指標として、κ値というものがあり、0.5あたりで中等度の一致と言われているのですが、眼底検査におけるκ値は0.20-0.84と、高くないことが知られています。

緑内障診断には、種々の検査が必要で、総合的に勘案した上で確定診断がなされますので、どうしても検査が多くなりがちになります。

http://www.touchophthalmology.com/articles/clinical-optic-disc-evaluation-glaucoma

風邪薬と緑内障

大分寒くなり、風邪をこじらしている方も多いのではないかと思います。風邪薬や胃薬、睡眠薬などの添付文書に「緑内障の方は禁忌または注意するよう」喚起がなされていることがあります。これは副交感神経を刺激または交感神経を抑制させる働きを持つ薬物が、場合によっては急性緑内障発作を生じさせる可能性があり、その際には手術治療を行わないと失明に至ることがあるからです。

しかしながら、眼科医の側からみると、緑内障の中で、急性緑内障発作を起こす「閉塞隅角緑内障」の病型は少ないこと、そもそも緑内障の診断がなされて、急性緑内障発作が起こりそうな方にはすでにレーザーまたは手術治療がなされているケースが多いことから、むしろ怖いのは、「緑内障の有無を調べたことがない人」と思われます。

多くの緑内障は、自覚症状なしに病期が進行しますので、症状がなくとも、中高年の方の眼科検診を勧めます。