「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ

高血圧治療薬と緑内障

緑内障患者さんから、「高血圧治療薬を服用していますが、大丈夫でしょうか?」と聴かれることがあります。以前にも述べましたように、高血圧は高眼圧に関連し、低血圧は緑内障の危険因子と言われていて、血圧を下げることが緑内障にとっていいことなのか悪いことなのか不明であると言えます。また、一般的には高血圧治療は利益の方が不利益を上回る場合が多く、緑内障に影響を与えるとしてもわずかですので、「そのまま服用していて下さい」とお話しすることが多いです。

院長が大学病院眼科の緑内障外来にいた頃は、Ca拮抗薬が眼血流を向上させ、神経保護にも効くというデータがいくつか出ていたため、血圧が下がらないタイプのCa拮抗薬を緑内障治療に使用していたことがあります。しかしながら、その後の調査で、Ca拮抗薬はかえって緑内障を悪化させるというデータが出て、そのような治療はすっかり廃れてしまったように思えます。今でも、Ca拮抗薬の有効性を示すデータも出ていますし、まだまだ研究が必要な分野と言えます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17568677

日本人における新規緑内障患者に対する緑内障治療薬のアドヒアランス

以前、緑内障治療薬に対するアドヒアランス(患者も治療方法の決定過程に参加した上、 その治療方法を自ら実行すること)は極めて低く、治療後6カ月で50%、3年で37%、治療薬を毎日欠かさず行っている例は10%以下であると述べました(Nordstrom 2005)。

最新の日本人のデータは、かなり良好で、3カ月で73.2%、3年で52.5%という報告がなされました。日本人が緑内障、ひいては眼科治療に積極的だということを示すデータと思います。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24408788

3D OCT-1 Maestro

光干渉断層法 (Optical coherence tomography; OCT)は、光の干渉現象を応用して、主として眼底の微細な構造を、高解像度の断層像として表す画像解析法です。緑内障や網膜疾患などの診断に大変有用な検査機器で、院長は以前眼科医向けに総説を執筆したこともあります。

OCTによって緑内障診療の何が変わるか ─後眼部OCT(3)─3D OCT-2000

新医院に移転するにあたり、ジョイスティックはなく、タッチパネルでの操作が可能で、簡便で素早い画像取得および解析ができるOCT(3D OCT-1 Maestro)を導入することになりました。本日現医院でデモを行いましたが、オートアラインメント機能に優れ、撮影時間も短く、検者、被験者とも負担が少ない優秀な器械と思いました。

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緑内障眼に対する白内障手術

「緑内障があっても白内障手術はできますか?」と聴かれることがよくあります。基本的には可能ですし、一般的には眼圧がわずかながら下がるので、むしろ勧めることもあるくらいです。しかしながら注意すべき点は、逆に白内障手術後眼圧が上がる例もみられることです。

本研究では、緑内障眼に白内障手術を行ったところ、術前平均眼圧が16.3mmHgだったのが、術後14.5mmHgに下がったものの、38%で眼圧コントロールが悪くなったと報告がなされました。術後の低い眼圧と関連する因子は、術後に薬物の変更がない、術前高眼圧、高齢、深い前房とのことです。

http://www.ajo.com/article/S0002-9394(13)00583-7/abstract

緑内障診療の進歩

アメリカでの研究ですが、1965年~1980年に緑内障と診断され、1995年まで追跡調査を行った結果、少なくとも片眼が失明したのは25.8%であったのに対し、1981年~2000年に緑内障と診断され、2009年まで追跡調査を行った例では13.5%に減じていた、とのことでした。主因は緑内障治療の進歩と位置付けていますが、未だ失明例が多いことにも注意すべきです。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00808-7/abstract