「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ

加齢と緑内障

「緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)」ですが、加齢により網膜神経節細胞が減少することも知られています。しかしながら、同一被検者に対し、網膜神経節細胞の減少に伴う網膜神経線維層厚や黄斑部の網膜厚を継時的に調べた報告はほとんどなかったかと思われます。

本論文では、緑内障眼と健常眼とで、光干渉断層計(OCT)を用いて網膜神経線維層厚と黄斑部の網膜厚を前向きに4年間調べたところ、健常眼では継時的に両者が減少したことが証明され、緑内障眼においても、加齢の影響がみられたことがわかりました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23993360

流行性角結膜炎

本来夏期に流行するウイルス性結膜炎である、はやり目(流行性角結膜炎)の患者さんが、暖冬のせいか、今でも眼科受診なさる方が多く見受けられます。直接接触やタオルなどの媒介物を通じて感染すると言われています。学校保健安全法における第三種感染症に該当し、子どもの場合は罹患すると、幼稚園、保育園その他各種学校において出席停止扱いになります。特にお子様がおられるご家庭では十分お気を付け下さい。また、強い目やに、充血がみられた場合には速やかに眼科を受診して下さい。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23473088

眼科医による立体眼底写真を用いた緑内障診断

緑内障を診断するうえで入口となる検査は、多くは眼底検査であると思われますが、中でも立体眼底写真による診断は有用であることが知られています。しかしながら、その診断の正確度(正常を正常、異常を異常と診断する割合)は約80%と言われています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20045571

本論文では、立体眼底写真検査結果を用いて、同一患者の結果を1つ含む4つの視野検査結果から正しいものを眼科医に選ばせたところ、正確度は58.7%で、間違った多くのケースでは、視野障害を過大評価していたという結果でした。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23809273

白内障手術と緑内障手術

緑内障の手術適応がある患者さんは、白内障も有していることが多く、手術を行うとしたらどちらを先に行うべきか判断が難しいことがあります。白内障手術を先に行うメリットとして、術者としては浅前房になりにくいため、緑内障手術がやりやすいことが挙げられます。また、緑内障手術後の眼圧コントロールが安定していない時に白内障手術を行ってしまうと、折角の緑内障手術の効果が落ちてしまうことがあります。緑内障手術を先に行うメリットとしては、白内障手術創がなく、術後炎症が少なくてすむことが考えられ、良好な眼圧コントロールが得られることと思います。ただし、若干その後の白内障手術が難しくなることがあります。

本論文では、白内障手術が行われた緑内障(開放隅角緑内障)患者さんに対する緑内障手術(濾過手術)は、白内障手術を行っていない患者さんと比べると、眼圧コントロールが悪くなると報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1774027&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

全世界の失明者の割合

失明は、経済活動や教育の機会を減らし、QOLを低下させるばかりでなく、死亡率も高くさせるという報告もあり、眼科医としては何としても防がなければならない問題です。

失明を0.05または中心10度以内の視野狭窄と定義した場合、2010年の全世界における失明者は3240万人と推定され、1990年に比べると失明者の割合は減っているものの、人口増加と高齢化のため、失明者数は横ばいであると報告されました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23850093

近視眼における網膜の厚みと緑内障について

近視とは、「調節力を働かせない状態で、平行光線が網膜より前に焦点を結んでしまう状態」で、多くは軸性近視に属し、正視の人より眼球が大きい(眼軸長が長い)ため、網膜が焦点より後ろにある状態を言います。すなわち近視眼は、風船を大きく膨らませた状態に似ていますので、風船のゴムが薄くなるように、眼球の壁、ひいては網膜も薄くなっていると多くの報告で立証されています。一方、緑内障においては、網膜神経節細胞が障害されるため、その細胞に関わる網膜の層が薄くなります。近視は緑内障のリスクファクターであるため、緑内障眼において網膜が薄いという検査結果がでた場合には、近視のためか、緑内障性視神経障害のためか、判断が付きにくいことがあります。

本論文では、正常眼では、眼軸長が長いほど、黄斑部における網膜神経節細胞に関わる網膜層が薄くなっていたという報告です。今後、網膜の厚みを調べる眼科検査機器においては、近視の程度を補正するプログラムが必要かもしれません。

http://link.springer.com/article/10.1007/s10384-013-0292-2?wt_mc=alerts.TOCjournals