「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ

正常眼圧緑内障眼における眼循環と中心視野障害との関係

統計学的に正常範囲内の眼圧に留まる正常眼圧緑内障眼は、高眼圧の原発開放隅角緑内障(狭義)眼と比べて、眼循環が悪く、より中心の視野障害を来しやすいという報告が以前から多くなされています。

本論文では、正常眼圧緑内障眼において、眼循環の指標となる眼潅流圧の日内変動を調べた結果、眼潅流圧の変動が大きいほど中心視野障害が強いと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23963166

眼科における花粉症対策について

本年の花粉飛散予測では、例年よりやや少なめとのことですが、季節性アレルギー性結膜炎は、アレルギー性結膜疾患の90%を占める重要な疾患です。治療はアレルゲンの曝露を防ぐことや抗アレルギー点眼薬の使用がメインとなりますが、本論文では、人工涙液や冷湿布の使用を組み合わせると効果的とのことでした。前者は、アレルゲンを洗い流したり、アレルゲンに対するバリアーの役割を果たしたりすることで症状を軽減し、後者は、血管を収縮させることで、かゆみの物質の放出を防ぐ働きがあるとのことです。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00723-9/fulltext

現医院の沿革につき

新医院の開設手続きを行うにあたり、医院内の書庫を探ってみたところ、現医院の沿革についての正確な記載が書かれた書類がみつかりました。以下に現医院の沿革につき示します。
昭和8年8月1日 長岡市玉蔵院町甲924番地において眼科八百枝医院開設
昭和20年8月1日 戦災により廃止
昭和20年10月6日 長岡市東神田町1丁目1187番地において仮診療所開設
昭和22年8月1日 長岡市愛宕町2丁目1542番地に新規診療所開設
昭和27年8月1日 長岡市長町2丁目1709番地(現住所)に新規診療所開設
現在に至る

玉蔵院(現東坂之上町、山本五十六氏の生家のお隣だったそうです)時代のことをご存じの患者さんが今も来られていることに驚かされます。

本日の新医院

今日も長岡市は穏やかな一日です。お昼休み時間を少し使わせて頂き、新医院用のレセコンソフトの講習会を事務員さん達に受けて頂きました。少しずつ新眼科医院の開院準備が進められています。院長もほぼ毎日昼休みは開院のための業務を行っています。

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ドライアイのチェック

まだまだ乾燥した寒い気候が続きます。ドライアイの症状で来院される患者さんは暖かい時期より多いです。以下にドライアイ研究会が提唱するチェック項目を示します。

□目が疲れる
□目が乾いた感じがする
□ものがかすんで見える
□目に不快感がある
□目が痛い
□目が赤い
□目が重たい感じがする
□涙が出る
□目がかゆい
□光を見るとまぶしい
□目がごろごろする
□めやにがでる

5項目以上該当したらドライアイの疑いがあります。また、10秒間瞬きを我慢できるか?というチェック方法もあります。症状が強いようでしたら、眼科受診を勧めます。

緑内障治療薬で緑内障の病期の進行を遅らせることができるか?

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」で、緑内障に対する、薬物、レーザー、手術の各治療も「眼圧下降」を目指しているに他なりませんし、そのような治療もはるか昔から行われてきました。しかしながら、エビデンス(根拠)が証明されたのは20年ほど前に過ぎません。近年、エビデンスに基づいた治療の有用性が求められていますが、高いエビデンスを得るのは容易ではありません。その中で、ランダム化比較試験を多数例、多施設で行うことは、ほぼ最高と言っても過言ではないエビデンスレベルです。

「眼圧下降」が緑内障治療に有効なことは証明されたのですが、薬物治療(点眼液)で眼圧を下降させることが、緑内障治療に有効であるとする多数例、多施設のランダム化比較試験は今までありませんでした。昨年初頭にThe United Kingdom Glaucoma Treatment Study (UKGTS)と呼ばれる、ラタノプロスト点眼を用いた研究の概要が報告されました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22986112

この度、新たにUKGTSを行う症例についての報告がなされました。対象は516名、平均年齢は66歳、視野は比較的後期で、24か月間追跡調査がなされるという内容です。今後の結果を期待したいものです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24126032

飲水試験と脈絡膜厚

以前にも述べました通り、飲水試験と呼ばれる緑内障誘発試験がかつて存在し、1リットルの水を5~15分で飲んだ後の眼圧上昇の程度により、一部の症例において緑内障診断を行っていました。しかしながら本試験は、安全性および診断の有用性の低さから、今日ではほぼ廃れてしまいました。飲水試験で眼圧が上昇する機序としては、房水流出抵抗の増加とともに、脈絡膜血管の拡張などが一因であると考えられています。

本論文で著者らは、健常人において、眼底の深部組織である脈絡膜をswept-source optical coherence tomographyという方法で観察したところ、飲水試験後に脈絡膜厚が厚くなったことを報告しました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24021895

脳循環と緑内障

緑内障の本態は、「進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)」で、今日においては、眼圧は緑内障発症の危険因子の一つとして挙げられることが多く、GONは眼圧を筆頭とした種々の因子によって引き起こされているものと捉えられています。そのうちの一つが眼循環で、循環不全による緑内障発症および病期の進行を示唆する報告は多くなされています。

本論文は眼循環に大きくかかわる、後大脳動脈循環動態が、原発開放隅角緑内障においては低下していることを示唆しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23816432