昨晩新医院建築の第5回打ち合わせ会議が行われました。全体の67%の進捗状況ということで、予定通りということでした。
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やおえだ眼科内覧会につき
現状、順調に新医院開設作業が進んでおり、平成26年6月1日(日)にやおえだ眼科内覧会を催す予定です。本来でしたら、現医院が近い場所に移設するということで、院長も含めたスタッフや各種医療機器など、変わらないところもあるので、お披露目を執り行わないという考えもありますが、新しいスタッフや医療機器のご紹介、何より新しく大きくなった新医院の建物をみて頂きたく思い、予定通り内覧会を開催いたします。
内覧会の準備も着々と進んでおり、来院された方々へのおもたせとして、小菓子などを用意します。本日、サンプルとして長岡市某パティスリーのクッキーを入手いたしました。文字や絵をプリントして頂けるようで、大変興味があります。
本日の新医院
緑内障手術と抗血管内皮増殖阻害薬
代表的な緑内障手術である線維柱帯切除術(濾過手術)は、房水を強膜トンネルを通じて結膜下に流し込む、言わば新しい流出路を作成する眼圧下降治療で、高い眼圧下降効果が得られます。しかしながらその流出路は、創傷治癒機転(けがを治す働き)のため、術後閉塞してしまうことがあり、創傷治癒機転を抑制するために代謝拮抗薬を術中術後に使用することが一般的です。一方、代謝拮抗薬を用いることにより、結膜の菲薄化が生じることがあり、稀ではありますが、術後に重篤な濾過胞感染、眼内炎が生じる可能性があります。
近年、加齢黄斑変性などの血管新生が生じる網膜疾患に抗血管内皮増殖阻(VEGF)薬の硝子体注射を行うことが一般的になっていますが、この抗血管内皮増殖阻害薬は新生血管を阻害するのみならず、線維芽細胞などの増殖抑制にも効果があることが知られており、そのため、血管新生緑内障などの難治緑内障に対する濾過手術中に、硝子体内や結膜下に抗血管内皮増殖阻害薬注射を行う報告が多くなされるようになっています。本論文はそれらのメタアナライシスで、代謝拮抗薬と抗血管内皮増殖阻害薬の併用では、代謝拮抗薬単独使用と比較して、高い眼圧下降効果がみられたものの、代謝拮抗薬単独使用と抗血管内皮増殖阻害薬単独使用との比較では、手術成績に差がなかったとしています。
本日の新医院
OCTによる緑内障診断について
光干渉断層計(optical coherence tomograph; OCT)を用いた緑内障診断の有用性については沢山の報告があります。しかしながら、緑内障診療ガイドライン(第三版)でも記載があるように、OCTを含めた眼底三次元画像解析装置による緑内障診断においては、「視神経乳頭形態や神経線維層厚には個人差があり、緑内障眼と正常眼の間で測定された数値のオーバーラップがみられることや、解析装置の測定精度の限界などから、緑内障と正常を完全に分別することは未だ成功していない。自動診断プログラムが搭載されている装置における、緑内障診断の特異度、感度は80%前後と報告されており、緑内障の診断には経験を積んだ眼科専門医の最終判断が必要である。重要なことは、緑内障による質的眼底変化を検出することであり、器械に診断を任せることではない。したがって、現時点ではあくまで眼底三次元画像解析装置は補助的に用いられるべきものである。」とされています。これ以外の理由として、そもそも眼底三次元画像解析装置に内蔵されている健常または緑内障のデータベースは、視野所見も含めて診断がなされたものを対象としていますので、現在において緑内障の最終診断が視野所見に依存している以上、視野検査を上回るものではないと考えます。また、数μm単位の細かい眼球構造を解析していますので、ある程度のアーチファクトの影響を考慮する必要があります。
本論文では、OCTを用いた緑内障診断で、19.9~28.2%にアーチファクトがみられ、一番影響を与えたものは網膜上膜によるエラーだったと報告しています。
本日の新医院
緑内障診療における眼底撮影について
緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、緑内障診断において、「視神経乳頭あるいは網膜神経線維層の形態学的変化の検出はきわめて重要である。視神経乳頭や網膜神経線維層の障害所見は、緑内障の病期と関連するが、しばしば視野異常の検出に先立って検出される。特に正常眼圧緑内障では、眼底検査による視神経障害所見の検出が疾患の発見のきっかけとなることが少なくない」、としています。特に緑内障性視神経障害の代表的な所見である視神経乳頭陥凹拡大については、「三次元的に観察する立体的観察を推奨」しています。したがって、眼底写真を撮影する場合には、可能なら平面写真よりも立体写真撮影を行った方がよいと考えます。ただし、緑内障診療に習熟した医者においては、網膜血管の走行や視神経乳頭の色調などをもとに、平面写真であっても、高い精度で視神経乳頭陥凹拡大を診断することは可能であると考えます。
本論文では、緑内障専門医による緑内障診断力が、平面眼底写真と立体眼底写真とで異なるか?を調べましたが、大差はなかったと報告しています。
緑内障では、いつから視野障害が生じるのか?
おそらく多くの疾患では、形態的変化が生じたのちに機能障害が生じます。緑内障においても、まず視神経障害が生じてからしばらくして視野障害がみとめられることが多いと言えます。では、どのくらい形態的変化(視神経障害)が生じると、視野障害がみられるのでしょうか? 過去の報告では、おそらく30%くらいの網膜神経節細胞の消失があって、はじめて一般的な視野検査で異常がみられると言われてきましたが、個人差が大きく、また、視神経を定量的に評価する方法が一般化されておらず、はっきりしたことは分かりませんでした。
Spectralisという機種の光干渉断層計(Optical coherence tomograph: OCT)を用いた本論文では、視神経乳頭周囲の網膜神経線維層が89μmを下回ると、視野障害がみられると報告しております。そのような疾患が生じるか否かの一定の値(臨界点)を求める方法として、本論文ではbroken-stick法を用いています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24487047