今日の長岡市は小雨です。やや気温も上がっているようで、雪も大分溶けてます。
「院長ブログ」カテゴリーアーカイブ
眼圧と年齢
欧米人では加齢とともに眼圧は上昇する傾向があると言われている一方、1988~1989年に行われた日本人を対象とした大規模調査や、2000年~2002年に行われた日本初の眼科疫学調査である多治見スタディでは、加齢とともに眼圧が下がる傾向があることが横断的研究により示唆されました。
本論文では、10年間におよぶ縦断的研究の結果、日本人においては眼圧が下がることが改めて示され、従来より指摘されているように、眼圧に寄与する因子として、収縮期血圧、拡張期血圧、body mass indexが挙げられています。
本日の新医院
緑内障手術と血管内皮増殖因子阻害薬
1968年にCairnsが開発した線維柱帯切除術は、現在でも代表的な緑内障手術の一つとなっております。手術の原理は、房水を強膜のトンネルを通して結膜下に排出させることで、眼圧を下げるというものです。しかしながら、創傷治癒機転のために強膜トンネルが閉塞し、術後眼圧が上がることがあるため、創傷治癒機転を抑制するためにマイトマイシンCの術中塗布や5-Fuの術後結膜下注射を行うことが一般的ですが、逆に低眼圧になったり、稀に重篤な感染症を起こしたりすることが問題となっています。
近年、加齢黄斑変性などの治療に用いる血管内皮増殖因子阻害薬の結膜下注射をもちいることにより、創傷治癒機転を抑制させる治療が試みられています。本論文では、血管内皮増殖因子阻害薬を用いた緑内障手術は、従来の方法と同等の眼圧下降効果があった一方、網膜静脈閉塞などの重篤な合併症もみられたため、その使用には注意を要すると報告しています。
本日の新医院
レイノー病と緑内障
古くから、レイノー病と緑内障に関係があることが示唆されています。レイノー現象とは、「寒冷時や冷水につかったときに四肢末梢部、とくに両手指が対称的に痛み、しびれ感とともに蒼白、あるいはチアノーゼなどの虚血症状をきたす」もので、末梢循環不全が緑内障の発症および病期の進行に影響を与えていると考えられています。レイノー現象を起こす人のうち、基礎疾患が不明なものをレイノー病と呼びます。院長が研修医だったころ、英国の著名な先生の講演で、「緑内障患者さんが来たら、先ずは握手をします!」と述べたことが印象に残っています。要は手が冷たいかどうかを確認するということです。レイノー現象を調べるには主には冷水負荷試験が行われ、冷水に手足を入れてサーモグラフィーで温度変化が大きくないかを観察します。
本論文は、緑内障患者に冷水負荷試験を行ったところ、健常者や高眼圧症患者に比し、網膜電図(心電図と同様に網膜の機能を電位変化で調べる検査)で低下していたことを報告しています。
本日の新医院
近視眼の眼圧日内変動
眼圧は血圧や体温などと同様に、一日のうちに変動がみられます。一般的には夜間から早朝にかけて眼圧は高くなると言われ、また、緑内障眼では変動幅が大きいことが知られています。そのため、外来受診時の眼圧値が低いにもかかわらず、視野障害の進行がみられる場合には、検査入院のうえ、眼圧日内変動を調べることがあります。
本論文では、若年の強度近視を有する緑内障患者では、眼圧日内変動が少なく、夜間よりは日中に変動がみられることが多く、近視が強いほど夜間の眼圧変動は低いと報告しています。