緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、原発閉塞隅角症疑いとは、「原発性の隅角閉塞があり、眼圧上昇も、器質的な周辺虹彩前癒着(peripheral anterior synechia: PAS)も緑内障性視神経症も生じていない、すなわち非器質的隅角閉塞(機能的隅角閉塞、appositional angle closureとも呼ばれる)のみの症例」としています。治療としては、経過観察の場合もありますが、閉塞隅角による眼圧上昇を予防する目的で、レーザー虹彩切開術や手術などのの観血的治療の適応となる場合もあります。どのような治療を選択するかには定見がなく、医師の判断に委ねられざるを得ない事情もあり、かつ自覚症状も乏しいことから、治療の選択や患者さんへの治療の説明に苦慮することがあります。本論文は、片眼をレーザー虹彩切開術で治療し、片眼を無治療で経過観察した報告ですが、レーザー後は急激に隅角が開放し、6カ月は同じ状態が続きますが、その後少しずつ隅角が狭くなってしまう一方、無治療眼では、より早いスピードで隅角が閉塞すると報告しています。
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高血圧と原発開放隅角緑内障について
血圧と緑内障について聴かれることがよくあります。血圧が高くなると、眼圧もわずかながら上昇するという報告が多い一方、緑内障の危険因子として低血圧が挙げられることもしばしばあります。このパラドックスの理由はよくわかっていないのですが、低血圧ですと、視神経を栄養する血管の循環不全が生じている可能性が示唆されています。多数の報告を基にした本論文では、高血圧を有した場合の原発開放隅角緑内障のrelative riskは1.16倍で、収縮期血圧が10mmHg上昇すると眼圧が0.26mmHg、拡張期血圧が5mmHg上昇すると眼圧が0.17mmHg低下するとしています。ただし、母集団の違いや統計学的手法の違いなどから、血圧と緑内障の関係についてはまだまだ結論がでないものと思われます。
緑内障治療薬使用を長く継続するために
あらゆる慢性疾患の中で、緑内障治療薬を継続できる割合が極めて低いことはよく知られています。本論文は、継続できない危険因子を追跡調査したもので、居住や職場の地域、緑内障治療薬の数、ピロカルピン投与(有効な緑内障治療薬ですが、縮瞳するため、みえ方が変わるという副作用があります)、緑内障と診断された年度(2004年以前)、主治医の性別(男性)が挙げられています。一方、継続しやすい因子としては、プロスタグランジン関連薬投与、病院での治療、ケアの継続などが挙げられています。
成人における屈折変化について
小学生から中学生くらいにかけて近視化することが多いことは経験的にもよく知られていることです。おそらくは成長にともなう眼軸長の延長が主因として考えられています。一方、成年になってからも屈折が変化することも知られていることです。本論文は平均52歳を対象とした追跡調査ですが、2年間で0.09~0.22Dの遠視化がみられ、眼軸長は一年間に0.06mm短縮したと報告しています。
水泳用ゴーグルと緑内障について
緑内障患者さんから、「日常生活で気を付けることはありますか?」と聴かれることがよくあります。一般論として緑内障は生活習慣病ではないと考えられており、眼圧を下げることが証明されている唯一の有効な治療法であること、おそらくはストレスが眼圧を上げることがあることから、「細かいことに拘らずに、とにかく毎日点眼を欠かさないで下さい。緑内障治療のアドヒアランスは他の慢性疾患よりも悪いことがわかっていて、毎日点眼することですら大変なことですから。」などとお話しています。過去においては、例えばネクタイをきつく締める人や、吹奏楽をやっていて力を込めて演奏する人は、一時的に眼圧が上がることから、緑内障患者さんは避けるようにと指導されることもあったのですが、追試もなく、最近では指導されなくなってきているかと思われます。水泳用ゴーグルが眼圧を上げるという報告が過去にあったのですが、追試が行われた本論文では、関係がなかったと結論付けています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25204989
落屑症候群と日光曝露および居住地の緯度との関係について
落屑症候群は50歳以上の中高齢者の水晶体表面にふけ様の沈着物がみられ、縁内障や水晶体偏位などをおこし、高齢者の失明原因としても重要な疾患です。北欧に多い(高齢化が原因とも言われています)ことと、日光曝露が重要な危険因子と言われています。本研究では、居住地における赤道からの緯度について、1度離れる毎に11%、夏期に外出する時間については、1週間あたり1時間毎に4%、落屑症候群のリスクが高まることを示唆しています。
未発見または未治療の緑内障について
緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障では、現在のところいったん障害された視機能が回復することはない。また、後期例では治療を行っても進行する例があることが知られている。したがって、緑内障治療においては早期発見、早期治療が大切である」としています。しかしながら、本邦においては、緑内障の新規発見率は89%であると言われ、未だ治療を受けていない緑内障患者が多数潜在していることが示唆されています。米国で行われた本研究においても、未発見または未治療の緑内障患者は実に78%に及ぶと報告しています。
緑内障患者によるスーパーマーケットでの買い物について
両眼に緑内障性視野障害を有する症例を対象とした本研究によれば、健常者に比べると、商品を選ぶのに時間がかかるものの、多くの症例では、視野障害がある部分を時間をかけて見つめることにより、正確に商品を選ぶことができたと報告しています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25162522
視機能障害と死亡率
わずかですが、視機能障害と死亡率は関係があると言われています。本論文によると、視機能障害がすすむと、日常生活動作能力が低下し、そのことが間接的に死亡率を上げていると報告しています。
加齢黄斑変性と内服薬
9676人を対象としたThe Beaver Dam studyで、ニトログリセリンなどの血管拡張剤
や降圧剤である交感神経β遮断薬の内服が、加齢黄斑変性発症の危険因子であることがわかりました。http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00203-6/abstract