基本的に緑内障性視野障害は不可逆的と言われていますが、近年眼圧下降治療に伴い、一時的にでも改善する例が存在することが示唆されています。本論文では、薬物により眼圧を下降させるより、手術により眼圧を急激に下降させた方が、視野障害の改善がみられる例が多いことを示唆しています。また、手術加療に伴う眼循環の改善と視野障害の改善に関連がみられたと報告しています。
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小児におけるステロイド緑内障の割合
局所または全身の、長期または大量のステロイド投与により、一部の症例で眼圧上昇がみられ、診断が遅れた場合には重篤な視機能障害を生じることがあります。一般的には診断が早ければ、ステロイド中止により眼圧は下降します。小児緑内障を後ろ向きに調べた本論文によると、ステロイド緑内障の比率は24%と極めて高く、特に春季カタルの治療に合併すると報告しています。
選択的レーザー線維柱帯形成術の有効性
当院でも行っている選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty; SLT)は、房水流出路である線維柱帯に特殊なレーザーを照射することにより、流出抵抗の基である色素細胞や老廃物を除去したり、線維柱帯細胞の機能の活性化を促したりすることにより、房水流出を促し、眼圧を下げる治療であり、安全性が極めて高く、薬剤アレルギーがある症例や手術加療を望まない症例には有効な治療法であります。ただし、術後しばらくすると効果が減弱し、再照射する必要があるケースも少なからずみられます。本論文では照射エネルギーを高めることにより、より高い眼圧下降が得られる可能性を示唆しています。
ラタノプロスト点眼は視野障害進行を抑制させる
緑内障診療において、従来より、緑内障治療薬が眼圧を下げること、眼圧を下げることが視野障害進行を抑制させる唯一根拠のある治療であること、は証明されていましたが、緑内障治療薬を用いることで視野障害進行を抑制させることについては、高いエビデンスレベルでの研究はなされていませんでした。この度、英国でのランダム化比較試験において、代表的な緑内障治療薬であるラタノプロスト点眼液が、視野障害進行抑制の効果があることが初めて証明されました。
https://www.carenet.com/news/journal/carenet/39282
眼圧を家庭内で測定する新しい方法について
緑内障診断および治療において、眼圧測定は必須の検査ですが、眼球壁を介して眼球内の圧力を測定する必要があるため、一般的に検査は医師または医療従事者によって行われます。家庭でも眼圧が測定できるように近年種々の検査機器が開発中です。方法としては、コンタクトレンズの使用や空気または低侵襲の針状の物質を眼球に噴出させる方法、何らかのインプラント素材を眼球内に装着させる方法が研究または臨床応用されており、一部は診療所で計測される眼圧値に近い値を得られることが確認されています。
適切な緑内障治療について
米国眼科学会によると、50%以上の緑内障患者が適切な薬物治療を行っておらず、失明に至る重要な問題として提起しています。この問題を解決するために、1.点眼方法が間違っている時には正直に眼科医に相談すること、2.きちんと点眼が継続できない時には医師などに相談すること、3.定期的に点眼できるように、カレンダーを活用したり、例えば歯ブラシの脇に常に点眼瓶を置いておくなどの工夫をすること、4.下瞼をひっぱったりつまんだりして、点眼液が目に入りやすいよう、所謂ポケットを作ること、5.有用な保険を活用すること、6.例えばマリファナは眼圧を下げることが知られているが、もちろん副作用の方が強く、医療用の緑内障治療薬の方が有用であることを理解すること、などを挙げています。http://www.aao.org/newsroom/release/more-than-half-of-people-with-glaucoma-skip-or-improperly-administer-medications.cfm
糖尿病と緑内障
従来より、糖尿病は疾患による続発緑内障のみならず、原発開放隅角緑内障の危険因子と考えられています。原因は毛細血管のストレスによる循環不全やそれに伴う眼圧上昇などによるといわれています。メタアナリシスを用いた本論文では、糖尿病、その罹患期間、空腹時血糖が緑内障の危険因子であり、糖尿病患者における緑内障の相対危険度は1.48、眼圧は健常と比べて0.18mmHg上昇すると報告しています。
http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00697-6/abstract?cc=y
緑内障における形態的異常と自覚症状について
緑内障という疾患はcontinuum(連続体)であると言われており、網膜神経節細胞の死から始まり、網膜や視神経乳頭などの形態の変化、視野障害の出現とその進行、自覚症状の出現ののち、失明に至る経過をたどります。従って、どの時点から「緑内障」であるか、は人為的に決定されたもので、一般的には標準的に用いられている視野検査で緑内障の特徴的所見が出始めた時から、と言われています。従来まで、形態と視野、視野と自覚症状との間には強い相関があるという報告が多数なされてきましたが、本論文では、網膜神経線維層厚と自覚症状との間に相関があったと報告しています。
最も眼圧が上昇する行為は?
緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」と記載がなされています。日常生活において、最も眼圧が上昇する行為は、おそらく倒立と考えられていて、40mmHgにまで及ぶことがあると言われています。健常者を対象とした過去の論文では、Sirsasanaと呼ばれるヨガの倒立の体位においても、眼圧がおおよそ2倍になると報告しています。
角膜ヒステリシスと緑内障
ヒステリシスとは、物質の状態が、現在の条件だけでなく、過去の経路の影響を受ける現象の事を言います。角膜に空気圧をかけると、圧平状態を経てわずかに窪み、その後再び圧平状態を経て角膜形状は復元されます。一般的にはこの復元の程度を角膜ヒステリシスと呼び、眼球弾性と関連するため、眼圧値そのものや、眼圧が視神経および篩状板に及ぼす力に影響を与えているものと考えられております。すなわち、角膜ヒステリシスが低ければ、低い眼圧でも視神経障害が生じやすいと考えられています。
正常眼圧緑内障を対象とした本論文では、視野障害進行と角膜ヒステリシスに関連があったと報告しています。