「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

屈折異常弱視における脈絡膜厚について

弱視は、視力の発達の感受性期に片目または両目に適切な視覚刺激を受け取ることができなかったために視力の発達が止まったり遅れたりすることにより生じます。代表的な弱視として、遠視や乱視により視覚刺激が遮られる屈折異常弱視や、斜視のために視覚刺激が遮られる斜視弱視などがあります。これらの弱視について、弱視眼は反対眼や健常眼とは、見かけ上違いがないのですが、精密に網膜や脈絡膜を観察できる光干渉断層計(optical coherence tomograph; OCT)を用いて精査すると、それらの厚みなどに相違がみられるという報告が近年出てきています。
本論文は最新のOCTを用いて屈折異常弱視眼と斜視弱視眼、健常眼の黄斑部網脈絡膜厚を比較検討したところ、脈絡膜厚について、屈折異常弱視眼は斜視弱視眼または健常眼より有意に厚かったことが分かり、この違いは二つの弱視の病因の相違による可能性が示唆されました。本研究につきましては、院長も微力ながらお手伝いさせて頂き、共同執筆者として名前を入れて頂きました。
Macular retinal and choroidal thickness in unilateral amblyopia using swept-source optical coherence tomography

後頭葉病変による相対的求心性反応欠損につき

相対性求心性瞳孔反応欠損(relative afferent pupillary defect: RAPD)とは、たとえば右眼が視神経症で視力低下していて、左眼が正常の場合、ペンライトの光をを右眼から左へ動かすと左の瞳孔が縮瞳します。そこから右眼にライトを戻すとライトが来た瞬間には右眼は間接反応のため縮瞳しているのですが、ライトの明るさを右眼は感知できないのでライトを照らしているにも関わらず瞳孔がかえって開いてゆくという奇異な逆の反応が見られます。この現象は視神経疾患を鑑別するために、極めて重要な所見です。一方、視神経(視索)に直接関係がない後頭葉病変に伴う同名半盲の症例でこの現象がみられることがあるという報告があります。本論文はRAPDx®という器械を用いてRAPDを客観的に解析したところ、その報告を支持する結果がでたと報告しています。
本研究につきましては、院長も微力ながらお手伝いさせて頂き、共同執筆者として名前を入れて頂きました。
Relative Afferent Pupillary Defects in Homonymous Visual Field Defects Caused by Stroke of the Occipital Lobe Using Pupillometer

院長が執筆した論文が英文雑誌に掲載されました。

緑内障の診断および治療に重要な眼圧測定について、従来の眼圧計は角膜の厚さや弾性による影響を受けるため、真の眼圧値を測定できないと言われていました。新しい眼圧計Reichert 7CRは角膜生体力学的特性による影響を除外した眼圧測定が可能であり、本論文ではその測定精度につき、従来の眼圧計との比較をした研究結果を示しました。

Comparison of intraocular pressure adjusted by central corneal thickness or corneal biomechanical properties as measured in glaucomatous eyes using noncontact tonometers and the Goldmann applanation tonometer.

目を守るための10の方法

米国眼科学会では、自分の目の健康を維持するために、推奨する項目を10個挙げています。
1. サングラスの装用
2. 禁煙
3. 正しい食事(ビタミンCやE、ルテイン、亜鉛、ジアキサシン、ω3脂肪酸、DHA、EPA摂取)
4. 40歳以降の眼科検診
5. スポーツや就業中の目の保護
6. 家族歴を知ること(緑内障など)
7. 早期治療(緑内障、加齢黄斑変性)
8. 眼科医や眼鏡師など、だれがどの分野の目の専門家かを知ること
9. コンタクトレンズケア
10. 眼精疲労に注意する

Top 10 Tips to Save Your Vision

緑内障画像診断の限界について

今日、光干渉断層計を中心とした眼底画像解析装置を用いた緑内障画像診断が、疾患の補助的診断として有用であることが多数報告されています。しかしながら、緑内障診療ガイドライン(第三版)にも記載されているように、「視神経乳頭形態や神経線維層厚には個人差があり、緑内障眼と正常眼の間で測定された数値のオーバーラップがみられることや、解析装置の測定精度の限界などから、緑内障と正常を完全に分別することは未だ成功していない。」、「緑内障の診断には経験を積んだ眼科専門医の最終判断が必要である。」と考えられています。

本論文では、3つの眼底画像解析装置を用い、4つの診断方法を用いて緑内障診断力を調べたところ、後期緑内障の5-21%で見逃しがあり、これらの装置はあくまで臨床的に緑内障性視神経症の有無が微妙な症例の補助診断として用いるべきと報告しています。

Can Automated Imaging for Optic Disc and Retinal Nerve Fiber Layer Analysis Aid Glaucoma Detection?

緑色葉野菜と緑内障

一酸化窒素は房水流出抵抗の減弱や網膜循環の改善をもたらすと言われ、あたらしい緑内障治療の一つとして有用である可能性が示唆されています。食生活においては、硝酸塩を多く含む緑色素野菜の摂取が緑内障の病期の進行抑制に有用であることが考えられています。本論文では、1678713人を追跡調査したところ、1483人が原発開放隅角緑内障になったものの、緑色素野菜を約240mg/日摂取した群では、緑内障の発症が21%少なかったと報告しています。

Association of Dietary Nitrate Intake With Primary Open-Angle Glaucoma A Prospective Analysis From the Nurses’ Health Study and Health Professionals Follow-up Study

緑内障と眼圧日内変動

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」ですが、眼圧は血圧や体温などと同じく日内変動があることが知られています。まだ議論があるものの、この眼圧変動幅の大きさが緑内障発症や病期の進行と関連する可能性はいくつかの報告でなされており、緑内障治療薬においても、その変動幅を小さくさせるよう薬物の投与回数や濃度などで工夫がなされています。
本報告は、緑内障治療薬の中で、プロスタグランジン関連薬のみがわずかに変動幅を下げるにすぎず、多くの薬物では変動幅に影響がなかったとしています。

Glaucoma medications don’t affect circadian IOP patterns

原発開放隅角緑内障に対する第一選択薬について

緑内障の中で多数を占める病型である、原発開放隅角緑内障に対する治療について、緑内障診療ガイドライン(第三版)では、「プロスタグランジン関連薬や交感神経β遮断薬が優れた眼圧下降効果と良好な認容性により、第一選択薬として使用されている」と示しています。過去の報告をシステミックレヴューやメタ解析を用いて検討した本論文によると、優れた眼圧下降効果を有した第一選択薬はプロスタグランジン関連薬であるビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストが挙げられ、この3つの薬剤については大きな相違はなかったと報告しています。

近視と開放隅角緑内障について

代表的な緑内障の病型である原発開放隅角緑内障発症の危険因子として、近視があることは様々な研究で報告があります。緑内障または高眼圧症34040例と健常403398例を解析した本論文では、原発開放隅角緑内障のみならず、色素緑内障や落屑緑内障など、他の開放隅角緑内障についても危険因子であったと報告しています。ただし、現在までのところ、その理由は明確には不明であると言われています。

The Association of Refractive Error with Glaucoma in a Multiethnic Population

緑内障点眼液のキャップの色について

眼科診療において、患者さんが点眼液をどのようなペースで消費していくかは、実際に処方してみないと分からないことがよくあります。多剤併用治療になるとある点眼液はすぐに無くなるけど、他の点眼液は結構あまる、などということが生じるため、「今日はこの薬を何本、もう一つは何本処方してください」と再来ごとに処方する本数を変更することがよくあります。その際、点眼液のキャップの色で、「赤色は3本、青色は2本ください」と指示されることがあるのですが、実際にはどの薬のことを指しているのかが分からないことも多いです。特に緑内障治療においては、多剤併用の機会が多く、処方間違いが起こり得ると考えられます。

本論文では、100人の緑内障患者さんに11の点眼液を色を表現してもらったところ、102の色で示され、患者さんの指示を医師が正確に受け取った確率は55.5%と低い結果であり、特に視機能障害が強い患者さんの指示の場合に正確に伝わりにくかったと報告しています。

Ability of Bottle Cap Color to Facilitate Accurate Patient–Physician Communication Regarding Medication Identity in Patients with Glaucoma