「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

OHTS calculatorの有用性

前述したOHT Calcというapplicationは、OHTS calculatorという数式が元になっております。この数式を用いて、他の大規模studyに当てはめた場合、きちんと予測できたという報告が最近なされました。とはいえまだ改良の余地があるようです。Aという集団を基に疾患の有無を判別する数式を作成した時に、他のB、Cという集団にその判別式が使えるかということに対しては、複雑な統計学的手法を用いなければなりません。今後改善された数式が出るのではないかと期待しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24357494

OHTS study

The Ocular Hypertension Treatment Study (OHTS)と呼ばれる、海外で行われた大規模な研究があります。要約しますと、高眼圧症に対し、眼圧下降治療を行う群と無治療群に分けて、5年間経過観察すると、前者では4.4%、後者では9%が緑内障に移行したという報告です。また、緑内障に移行しやすい危険因子としては、①高齢、②視神経乳頭陥凹拡大、③軽微な視野異常(高いpattern standard deviation)、④高眼圧、⑤薄い角膜厚が同研究で示されました。これらの危険因子を計算式に当てはめ、5年後に自分が緑内障になるかどうかの確率を計算するi phone appがあります。ただし、この計算は、医療機関でないとわからない数値を入力しないといけませんので、一般的ではないこと、あくまで欧米人のデータに基づいた計算式ですので、日本人に当てはまるかは保証できないこと、に留意ください。

https://itunes.apple.com/app/oht-calc/id357413473?mt=8

近視と人種

アジア人に近視が多いことはいくつかの報告がなされています。しかしながら、本当に人種によるものか、環境因子も関与しているのかを証明することは困難です。

本報告はロスアンジェルスに住む(すなわち同じ環境下にいる)未就学児の屈折を多数令で人種毎に比較したもので、やっぱりアジア人に近視が多かったというデータです。

ただし、例えば「アジア人が近業時間が長い」かもといったバイアスが排除されてはいないので、本当に人種が関係しているのかは未だ不明と思われます。

 

 

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00576-9/abstract?refuid=S0161-6420(13)01072-5&refissn=0161-6420

緑内障と体重

体重(body mass index)と眼圧は関係があります。体重が重ければ眼圧は高くなります。一方、前回述べましたように、立ったり座っていたり、よりも寝た体勢の方が眼圧が高くなります。

では、体重が体位による眼圧変化に影響を与えるでしょうか?最新の論文で、体重と体位には関係がみられなかったとする報告がありました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24247996

緑内障と家族歴

緑内障発症のリスクファクターとして家族歴があることはよく知られています。また、ひとことで「緑内障」と呼びますが、原発緑内障、続発緑内障、発達緑内障など、その発症機序に応じて、様々な病型があります。

本研究はそれら様々な病型に家族歴が関係するのかを調べたもので、全ての緑内障病型有意にに家族歴があったということで、特に母または兄弟が緑内障の方は要注意ということでした。近しい方に緑内障患者がいる場合には、症状がなくとも一度眼科での検査を行うことをお勧めします。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24327611

近視の進行を抑えるコンタクトレンズ

近視は特にアジア人に多いと言われ、10代の80%を占めると報告されています。近視を抑制させる研究は、近年とても盛んに行われています。眼を正視化させるには、如何に調節なしに網膜上に対象物の焦点を合わせられるか?によります。しかしながら、実際の眼のオートフォーカス機能は若干弱く、自分でははっきりみえているように思っても、焦点が網膜面より後ろ(遠視側)に合っていたり、網膜周辺部でどうしても後ろに焦点が合ったりするため、目の長さ(眼軸長)が伸びて近視化すると考えられています。

ホンコンで行われた研究によれば、中心が正視で周辺が近視側に矯正させた二焦点のコンタクトレンズを装用してもらうことで、わずかですが、近視が抑制されました。

http://bjo.bmj.com/content/98/1/40.short?rss=1

弱視と3D立体映像

赤ちゃんの眼は、最初は光があるなしくらいしかみえないものが、光刺激により視機能が発育し、おおよそ6歳くらいで両眼視機能が完成されると言われています。しかしながら、斜視や遠視などが原因で視機能の発育が遅くなることがあり、視力がでない、立体視ができないといった症状がでるのが弱視です。適切な治療で十分な視機能を得られることも多いですが、健常人と比べ、立体視機能が劣るケースもしばしばあります。最新号の日本眼科学会雑誌におきましても、3D立体映像の視聴において、弱視例では「立体に見えない」や「疲れる」といった症状が多々あると報告がなされましたが、最新の海外論文でもそれを支持する報告が出されました。

弱視は早期発見と適切な治療(特に家族の協力)が肝要です。小さいお子様がおられる家庭につきましては、十分注意して下さい。また、小さい子の3D立体映像の視聴は急性内斜視などの合併症を起こすことがありますので要注意です。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23928879

水の飲み過ぎは緑内障を悪化させますか?

緑内障誘発試験というものがいくつかあり、院長が医者になりたての頃は教科書によく載っていたのですが、例えば緑内障かどうかを調べるために、5分間に水を1リットル飲んで眼圧が上がるかどうかを調べる試験、飲水試験というものがありました。このような緑内障誘発試験は、その有用性の少なさと危険性を鑑みて、現在ではほぼ廃れてしまいました。

こちらは最新の論文で、飲水試験の方が、カフェイン接種よりも眼圧が上がるという内容です。水の飲み過ぎにしろ、カフェインの摂り過ぎにしろ、通常の生活の中では起こりえない条件でなければ眼圧は上昇しませんので、上記のような質問には、「あまり気にする必要はありません」とお答えしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24304594