「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

イチョウの葉エキスと緑内障

院長が新潟大学眼科緑内障外来で勤務していた頃、イチョウの葉エキスが眼循環改善や神経保護に効果的という報告がいくつかみられ始め、2008年に香港で行われたWorld Ophthalmology Congressにおいても多数の報告がありました。その後も中国を中心に多数の有用な報告がなされました。

最新の本論文はその反証です。イチョウには緑内障性視野障害改善の効果がないという結論です。

対象や研究方法の違いにより、研究結果が異なることはよくあることです。ですので、一つの研究結果を鵜呑みにすべきではありません。長年にわたる研究結果の積み重ねにより、信頼ある研究結果が導かれます。今後の研究に期待したいものです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24282229

アントシアニンと緑内障

ブルーベリー摂取による眼病予防や改善の効果は、明らかなエビデンスがないと前述しました。最近、同じアントシアニンを含有するビルベリー摂取により、緑内障性視野障害が改善したという報告がありました。本報告では、イチョウの葉エキスも有用であるとのことです。

しかしながら、反証もありますので、十分留意して下さい。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22870951

コンタクトレンズを用いた眼圧計

眼圧を定義している教科書は少ないので、正確な記載ができないかもですが、眼圧とは、基本的には眼球内部の圧力を言います。従いまして、真の眼圧を測るためには眼球内部にセンサーを挿入する必要があり、もちろん日常診療の場では不可能なことです。多くの眼圧計は、眼球に何らかの圧力をかけた後、どの程度眼球が変形するのかをみることにより測定がなされます。前述した通り、本来は一日の眼圧変動を知りたいことがあっても、家庭内で自分で測定することは安全とは言い難いものがあります。

近年コンタクトレンズにセンサーをつけて、眼圧(値ではなく変動)をみる装置が開発され、その安全性と有用性を示す論文が出てきています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24158696

OHTS calculatorの有用性

前述したOHT Calcというapplicationは、OHTS calculatorという数式が元になっております。この数式を用いて、他の大規模studyに当てはめた場合、きちんと予測できたという報告が最近なされました。とはいえまだ改良の余地があるようです。Aという集団を基に疾患の有無を判別する数式を作成した時に、他のB、Cという集団にその判別式が使えるかということに対しては、複雑な統計学的手法を用いなければなりません。今後改善された数式が出るのではないかと期待しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24357494

OHTS study

The Ocular Hypertension Treatment Study (OHTS)と呼ばれる、海外で行われた大規模な研究があります。要約しますと、高眼圧症に対し、眼圧下降治療を行う群と無治療群に分けて、5年間経過観察すると、前者では4.4%、後者では9%が緑内障に移行したという報告です。また、緑内障に移行しやすい危険因子としては、①高齢、②視神経乳頭陥凹拡大、③軽微な視野異常(高いpattern standard deviation)、④高眼圧、⑤薄い角膜厚が同研究で示されました。これらの危険因子を計算式に当てはめ、5年後に自分が緑内障になるかどうかの確率を計算するi phone appがあります。ただし、この計算は、医療機関でないとわからない数値を入力しないといけませんので、一般的ではないこと、あくまで欧米人のデータに基づいた計算式ですので、日本人に当てはまるかは保証できないこと、に留意ください。

https://itunes.apple.com/app/oht-calc/id357413473?mt=8

近視と人種

アジア人に近視が多いことはいくつかの報告がなされています。しかしながら、本当に人種によるものか、環境因子も関与しているのかを証明することは困難です。

本報告はロスアンジェルスに住む(すなわち同じ環境下にいる)未就学児の屈折を多数令で人種毎に比較したもので、やっぱりアジア人に近視が多かったというデータです。

ただし、例えば「アジア人が近業時間が長い」かもといったバイアスが排除されてはいないので、本当に人種が関係しているのかは未だ不明と思われます。

 

 

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00576-9/abstract?refuid=S0161-6420(13)01072-5&refissn=0161-6420

緑内障と体重

体重(body mass index)と眼圧は関係があります。体重が重ければ眼圧は高くなります。一方、前回述べましたように、立ったり座っていたり、よりも寝た体勢の方が眼圧が高くなります。

では、体重が体位による眼圧変化に影響を与えるでしょうか?最新の論文で、体重と体位には関係がみられなかったとする報告がありました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24247996

緑内障と家族歴

緑内障発症のリスクファクターとして家族歴があることはよく知られています。また、ひとことで「緑内障」と呼びますが、原発緑内障、続発緑内障、発達緑内障など、その発症機序に応じて、様々な病型があります。

本研究はそれら様々な病型に家族歴が関係するのかを調べたもので、全ての緑内障病型有意にに家族歴があったということで、特に母または兄弟が緑内障の方は要注意ということでした。近しい方に緑内障患者がいる場合には、症状がなくとも一度眼科での検査を行うことをお勧めします。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24327611