「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

白内障とサプリメント

加齢黄斑変性にはルテインとジアキサンチン摂取が有効であるとの報告がありましたが、白内障ではどうでしょうか?

マルチビタミンの長期摂取で白内障発症のリスクが低下したとの報告がありました。ただし、その効果はわずかであり、白内障発症の誘因は主には加齢性変化であると考えます。一方、加齢黄斑変性とマルチビタミン摂取の関連はなかったとのことです。

http://www.aao.org/newsroom/release/daily-multivitamin-supplement-use-decreases-cataract-risk-in-men.cfm

加齢黄斑変性とサプリメント

加齢黄斑変性は、欧米では高齢者の失明原因の第一位に挙げられ、日本人も徐々に有病率が増加している眼科的に重要な疾患です。症状としては、中心がかすんだり暗くなったりする、色覚やが低下する、明暗の差が分かりにくくなる、人の顔が判別しにくくなる、真っ直ぐな線がゆがむ、物の大きさに左右差がでる、などがあります。加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型があり、後者は抗血管内皮増殖因子抗体の硝子体内注射の有効性が示されていますが、前者は残念ながら有効な治療法がないと言われています。しかしながら、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、ジアキサンチン、酸化亜鉛などのサプリメント服用により、病期の進行を抑えることが示されています。

本論文では、ルテインとジアキサチンが特に有効であると報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1788227&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

 

 

Dua’s layerと緑内障

従来まで、角膜は5つの層によって成り立っていると考えられていましたが、昨年新しくDua’s layerが発見され、教科書を書き換えるくらいのインパクトのある報告がありました。

http://timesofindia.indiatimes.com/home/science/Indian-doctor-finds-new-cornea-layer/articleshow/30588849.cms

Dua’s layerは、コラーゲンでできており、角膜内の水分量のバランスを取るのに役立っているのでは?と考えられていますが、この度、房水の流出路である、線維柱帯の表面にもDua’s layerがみつかり、房水流出のメカニズム解明の一助になるかもしれません。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24532799

傍中心暗点を有する緑内障患者に対する緑内障手術

緑内障性視野障害では、多くは後期になるまで中心視野が残存します。したがって、後期になるまで自覚症状がなかったり、視力低下がみられなかったりすることがよくあります。このような症例に対する緑内障手術は、急激な眼圧下降によるストレスなどのために、中心視野がなくなってしまい、重篤な視機能障害が生じうることが古典的に言われています。ただし、近年の緑内障手術では、急激に眼圧を下げるのではなく、術後の処置により少しずつ眼圧を下げるため、そのような視機能障害は稀であることが言われるようになっています。

本論文においても、中心視野を囲む暗点がある緑内障患者に対する緑内障手術において、一時的な視機能障害をのぞき、重篤な視機能障害を生じた例はなかったとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24522104

同名半盲と車の運転

両目の同じ側がみえなくなる症候を同名半盲といい、脳神経障害や一部の緑内障などでみられます。同名半盲を持つ患者においては、車の運転能力が落ちることが想定されますが、本論文によると、みえにくい部分を注視したり、頭や肩の位置を変えたりすることで、運転能力をある程度維持させていると報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24523869

緑内障手術と抗血管内皮増殖阻害薬

代表的な緑内障手術である線維柱帯切除術(濾過手術)は、房水を強膜トンネルを通じて結膜下に流し込む、言わば新しい流出路を作成する眼圧下降治療で、高い眼圧下降効果が得られます。しかしながらその流出路は、創傷治癒機転(けがを治す働き)のため、術後閉塞してしまうことがあり、創傷治癒機転を抑制するために代謝拮抗薬を術中術後に使用することが一般的です。一方、代謝拮抗薬を用いることにより、結膜の菲薄化が生じることがあり、稀ではありますが、術後に重篤な濾過胞感染、眼内炎が生じる可能性があります。

近年、加齢黄斑変性などの血管新生が生じる網膜疾患に抗血管内皮増殖阻(VEGF)薬の硝子体注射を行うことが一般的になっていますが、この抗血管内皮増殖阻害薬は新生血管を阻害するのみならず、線維芽細胞などの増殖抑制にも効果があることが知られており、そのため、血管新生緑内障などの難治緑内障に対する濾過手術中に、硝子体内や結膜下に抗血管内皮増殖阻害薬注射を行う報告が多くなされるようになっています。本論文はそれらのメタアナライシスで、代謝拮抗薬と抗血管内皮増殖阻害薬の併用では、代謝拮抗薬単独使用と比較して、高い眼圧下降効果がみられたものの、代謝拮抗薬単独使用と抗血管内皮増殖阻害薬単独使用との比較では、手術成績に差がなかったとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24523890

OCTによる緑内障診断について

光干渉断層計(optical coherence tomograph; OCT)を用いた緑内障診断の有用性については沢山の報告があります。しかしながら、緑内障診療ガイドライン(第三版)でも記載があるように、OCTを含めた眼底三次元画像解析装置による緑内障診断においては、「視神経乳頭形態や神経線維層厚には個人差があり、緑内障眼と正常眼の間で測定された数値のオーバーラップがみられることや、解析装置の測定精度の限界などから、緑内障と正常を完全に分別することは未だ成功していない。自動診断プログラムが搭載されている装置における、緑内障診断の特異度、感度は80%前後と報告されており、緑内障の診断には経験を積んだ眼科専門医の最終判断が必要である。重要なことは、緑内障による質的眼底変化を検出することであり、器械に診断を任せることではない。したがって、現時点ではあくまで眼底三次元画像解析装置は補助的に用いられるべきものである。」とされています。これ以外の理由として、そもそも眼底三次元画像解析装置に内蔵されている健常または緑内障のデータベースは、視野所見も含めて診断がなされたものを対象としていますので、現在において緑内障の最終診断が視野所見に依存している以上、視野検査を上回るものではないと考えます。また、数μm単位の細かい眼球構造を解析していますので、ある程度のアーチファクトの影響を考慮する必要があります。

本論文では、OCTを用いた緑内障診断で、19.9~28.2%にアーチファクトがみられ、一番影響を与えたものは網膜上膜によるエラーだったと報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1828639&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

緑内障診療における眼底撮影について

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、緑内障診断において、「視神経乳頭あるいは網膜神経線維層の形態学的変化の検出はきわめて重要である。視神経乳頭や網膜神経線維層の障害所見は、緑内障の病期と関連するが、しばしば視野異常の検出に先立って検出される。特に正常眼圧緑内障では、眼底検査による視神経障害所見の検出が疾患の発見のきっかけとなることが少なくない」、としています。特に緑内障性視神経障害の代表的な所見である視神経乳頭陥凹拡大については、「三次元的に観察する立体的観察を推奨」しています。したがって、眼底写真を撮影する場合には、可能なら平面写真よりも立体写真撮影を行った方がよいと考えます。ただし、緑内障診療に習熟した医者においては、網膜血管の走行や視神経乳頭の色調などをもとに、平面写真であっても、高い精度で視神経乳頭陥凹拡大を診断することは可能であると考えます。

本論文では、緑内障専門医による緑内障診断力が、平面眼底写真と立体眼底写真とで異なるか?を調べましたが、大差はなかったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24508161

緑内障では、いつから視野障害が生じるのか?

おそらく多くの疾患では、形態的変化が生じたのちに機能障害が生じます。緑内障においても、まず視神経障害が生じてからしばらくして視野障害がみとめられることが多いと言えます。では、どのくらい形態的変化(視神経障害)が生じると、視野障害がみられるのでしょうか? 過去の報告では、おそらく30%くらいの網膜神経節細胞の消失があって、はじめて一般的な視野検査で異常がみられると言われてきましたが、個人差が大きく、また、視神経を定量的に評価する方法が一般化されておらず、はっきりしたことは分かりませんでした。

Spectralisという機種の光干渉断層計(Optical coherence tomograph: OCT)を用いた本論文では、視神経乳頭周囲の網膜神経線維層が89μmを下回ると、視野障害がみられると報告しております。そのような疾患が生じるか否かの一定の値(臨界点)を求める方法として、本論文ではbroken-stick法を用いています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24487047

 

sofZia®を用いた緑内障治療薬

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、緑内障治療薬を用いた薬物治療の原則は、「必要最小限の薬剤と副作用で最大の効果を得ること」です。長期間にわたって緑内障治療を行うことで問題になるのは、薬物に含まれる防腐剤による角膜上皮障害やアレルギーが挙げられます。一般的な点眼液には塩化ベンザルコニウムが防腐剤として用いられていますが、トラバタンズR点眼液においては、sofZia®と呼ばれるイオン緩衝システムにより、細菌や真菌のエネルギー産生を阻害させます。そのため、本薬剤においては、上記副作用が少ないことが期待されます。 日本人の正常眼圧緑内障患者に対するトラバタンズR点眼の有効性と副作用の少なさを示した報告が発表されました。本研究は緑内障専門医がいる全国22施設の共同研究でしたが、当眼科八百枝医院も微力ながら研究に参加させていただきました。 Travoprost with sofZiaR preservative system lowered intraocular pressure of Japanese normal tension glaucoma with minimal side effects