「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

選択的レーザー線維柱帯形成術の有効性

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」であり、「原発開放隅角緑内障の治療は薬物治療を第1選択とする」ものの、眼圧コントロールが不良な場合には、薬物を増やすことが考慮され、「一般的に、眼圧コントロールに多剤(3剤以上)の薬剤を要するときは、レーザー治療や観血的手術などの他の治療法も選択肢として考慮する必要」があります。しかしながら、房水流出路である線維柱帯に小孔を形成させるアルゴンレーザー線維柱帯形成術では、術後の瘢痕形成により、かえって眼圧が上昇することがあり、一般的な緑内障手術である線維柱帯切除術では、眼圧管理などの理由で長期入院が必要なこともあり、いずれも忍容性に若干の問題があると考えます。比較的新しい治療である選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty; SLT)では、主に線維柱帯に溜まった色素を蒸発させて眼圧を下降させる治療で、治療効果の持続性は短いと言われているものの、正常な眼組織を破壊しないため、安全に繰り返し行える治療です。
本論文は、多剤併用の薬物治療でも眼圧コントロールが不良であった症例にSLTを行ったところ、一定の効果がみられたと報告しています。手術に抵抗のある方にはお奨めできる治療の一つと考えています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24558611

PM2.5による目の影響

本日新潟に初のPM2.5の注意喚起があり、外出や換気を控えるよう指示が出されました。

PM2.5による目の影響を調べてみました。ハワイの火山での影響について調べた論文ですが、他覚眼科所見としては充血、粘性透明な眼脂、結膜乳頭増殖、涙点浮腫、眼瞼浮腫、結膜浮腫が、自覚的にはほぼ全例で痒み、異物感、流涙、灼熱感がみられたそうです。

外出時にはマスクとともにメガネの着用も推奨します。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22187513

睡眠時無呼吸症候群と緑内障

昨日いびきと緑内障についての新知見をアップしましたが、睡眠時無呼吸症候群は緑内障と関連するという報告が数多くあります。原因は循環不全や、持続陽圧呼吸療法による眼圧上昇などの機序が考えられています。

本論文では、大規模なスタディでの睡眠時無呼吸症候群と緑内障の関連を報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24555122

いびきと緑内障

いびきは上気道閉塞によって生じ、正常でも生じますが、種々の疾患が関与していることがあることが知られています。本論文はいびきと緑内障の関係を調べたもので、いびきは男性、肥満、高い収縮期血圧、若年、高い認知機能と関係したものの、これらの寄与因子を除外すると、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、網膜静脈閉塞のいずれにも関係がなかったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24551196

 

白内障とサプリメント

加齢黄斑変性にはルテインとジアキサンチン摂取が有効であるとの報告がありましたが、白内障ではどうでしょうか?

マルチビタミンの長期摂取で白内障発症のリスクが低下したとの報告がありました。ただし、その効果はわずかであり、白内障発症の誘因は主には加齢性変化であると考えます。一方、加齢黄斑変性とマルチビタミン摂取の関連はなかったとのことです。

http://www.aao.org/newsroom/release/daily-multivitamin-supplement-use-decreases-cataract-risk-in-men.cfm

加齢黄斑変性とサプリメント

加齢黄斑変性は、欧米では高齢者の失明原因の第一位に挙げられ、日本人も徐々に有病率が増加している眼科的に重要な疾患です。症状としては、中心がかすんだり暗くなったりする、色覚やが低下する、明暗の差が分かりにくくなる、人の顔が判別しにくくなる、真っ直ぐな線がゆがむ、物の大きさに左右差がでる、などがあります。加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型があり、後者は抗血管内皮増殖因子抗体の硝子体内注射の有効性が示されていますが、前者は残念ながら有効な治療法がないと言われています。しかしながら、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、ジアキサンチン、酸化亜鉛などのサプリメント服用により、病期の進行を抑えることが示されています。

本論文では、ルテインとジアキサチンが特に有効であると報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1788227&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

 

 

Dua’s layerと緑内障

従来まで、角膜は5つの層によって成り立っていると考えられていましたが、昨年新しくDua’s layerが発見され、教科書を書き換えるくらいのインパクトのある報告がありました。

http://timesofindia.indiatimes.com/home/science/Indian-doctor-finds-new-cornea-layer/articleshow/30588849.cms

Dua’s layerは、コラーゲンでできており、角膜内の水分量のバランスを取るのに役立っているのでは?と考えられていますが、この度、房水の流出路である、線維柱帯の表面にもDua’s layerがみつかり、房水流出のメカニズム解明の一助になるかもしれません。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24532799

傍中心暗点を有する緑内障患者に対する緑内障手術

緑内障性視野障害では、多くは後期になるまで中心視野が残存します。したがって、後期になるまで自覚症状がなかったり、視力低下がみられなかったりすることがよくあります。このような症例に対する緑内障手術は、急激な眼圧下降によるストレスなどのために、中心視野がなくなってしまい、重篤な視機能障害が生じうることが古典的に言われています。ただし、近年の緑内障手術では、急激に眼圧を下げるのではなく、術後の処置により少しずつ眼圧を下げるため、そのような視機能障害は稀であることが言われるようになっています。

本論文においても、中心視野を囲む暗点がある緑内障患者に対する緑内障手術において、一時的な視機能障害をのぞき、重篤な視機能障害を生じた例はなかったとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24522104

同名半盲と車の運転

両目の同じ側がみえなくなる症候を同名半盲といい、脳神経障害や一部の緑内障などでみられます。同名半盲を持つ患者においては、車の運転能力が落ちることが想定されますが、本論文によると、みえにくい部分を注視したり、頭や肩の位置を変えたりすることで、運転能力をある程度維持させていると報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24523869

緑内障手術と抗血管内皮増殖阻害薬

代表的な緑内障手術である線維柱帯切除術(濾過手術)は、房水を強膜トンネルを通じて結膜下に流し込む、言わば新しい流出路を作成する眼圧下降治療で、高い眼圧下降効果が得られます。しかしながらその流出路は、創傷治癒機転(けがを治す働き)のため、術後閉塞してしまうことがあり、創傷治癒機転を抑制するために代謝拮抗薬を術中術後に使用することが一般的です。一方、代謝拮抗薬を用いることにより、結膜の菲薄化が生じることがあり、稀ではありますが、術後に重篤な濾過胞感染、眼内炎が生じる可能性があります。

近年、加齢黄斑変性などの血管新生が生じる網膜疾患に抗血管内皮増殖阻(VEGF)薬の硝子体注射を行うことが一般的になっていますが、この抗血管内皮増殖阻害薬は新生血管を阻害するのみならず、線維芽細胞などの増殖抑制にも効果があることが知られており、そのため、血管新生緑内障などの難治緑内障に対する濾過手術中に、硝子体内や結膜下に抗血管内皮増殖阻害薬注射を行う報告が多くなされるようになっています。本論文はそれらのメタアナライシスで、代謝拮抗薬と抗血管内皮増殖阻害薬の併用では、代謝拮抗薬単独使用と比較して、高い眼圧下降効果がみられたものの、代謝拮抗薬単独使用と抗血管内皮増殖阻害薬単独使用との比較では、手術成績に差がなかったとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24523890