「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

白内障手術の精度

白内障手術は、濁った水晶体を除去して、人工の眼内レンズに入れ替える手術ですが、眼内レンズの度数については、患者さんの希望などに応じて術前に予測して決定されます。しかしながら、術後に予測値からはずれてしまい、強い度数の眼鏡装用が必要なケースもあります。ただし、近年では、検査機器の精度の向上や、度数の換算式の改良などにより、そのような度数のずれを起こすケースが少なくなっています。

本論文では、白内障術後90日以内には94%の例で、術前に予測した度数にほぼ合致した度数が得られたと報告しています。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00842-7/abstract

血管新生緑内障の治療

血管新生緑内障とは、糖尿病網膜症や網膜中心静脈閉塞症などの眼虚血性疾患において、虚血状態を補償するために新生血管や膜状物質が発生し、それらが房水の出口である隅角部を覆い、房水が排出されないために生ずる難治緑内障です。血管新生緑内障の治療として、緑内障診療ガイドライン(第三版)では、原疾患の治療(レーザーなど)のほか、「原発開放隅角緑内障に準じて薬物治療を行うが、…血管新生緑内障に対して抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)薬の眼内投与の有効性が報告されており、短期的な症状緩和や手術成績の向上に有効である。」、「線維柱帯切除術(代謝拮抗薬併用/非併用)を行う。レーザー線維柱帯形成術は無効であるばかりではなく有害である。」としています。

本論文は、抗VEGF抗体の点眼により、眼圧下降に一定の効果がみられ、かつ新生血管の退縮も一部にみられたと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24556733

 

 

白内障術後の眼圧上昇

一般的に白内障手術後は、隅角開大やチン氏帯のテンションの変化などのため眼圧が下降することが多いのですが、症例によっては逆に眼圧が上がってしまうことがあります。本論文では、1270眼中、12眼が眼圧上昇し、何らかの処置を施したと報告していますが、眼圧上昇の理由は術後の消炎のためのステロイド使用、糖尿病患者の瞳孔ブロック、残余皮質などを挙げています。緑内障手術既往眼、特に若年の強度近視、糖尿病患者に白内障手術を行う場合は注意を要すると結論付けています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24557756

 

選択的レーザー線維柱帯形成術の有効性

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」であり、「原発開放隅角緑内障の治療は薬物治療を第1選択とする」ものの、眼圧コントロールが不良な場合には、薬物を増やすことが考慮され、「一般的に、眼圧コントロールに多剤(3剤以上)の薬剤を要するときは、レーザー治療や観血的手術などの他の治療法も選択肢として考慮する必要」があります。しかしながら、房水流出路である線維柱帯に小孔を形成させるアルゴンレーザー線維柱帯形成術では、術後の瘢痕形成により、かえって眼圧が上昇することがあり、一般的な緑内障手術である線維柱帯切除術では、眼圧管理などの理由で長期入院が必要なこともあり、いずれも忍容性に若干の問題があると考えます。比較的新しい治療である選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty; SLT)では、主に線維柱帯に溜まった色素を蒸発させて眼圧を下降させる治療で、治療効果の持続性は短いと言われているものの、正常な眼組織を破壊しないため、安全に繰り返し行える治療です。
本論文は、多剤併用の薬物治療でも眼圧コントロールが不良であった症例にSLTを行ったところ、一定の効果がみられたと報告しています。手術に抵抗のある方にはお奨めできる治療の一つと考えています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24558611

PM2.5による目の影響

本日新潟に初のPM2.5の注意喚起があり、外出や換気を控えるよう指示が出されました。

PM2.5による目の影響を調べてみました。ハワイの火山での影響について調べた論文ですが、他覚眼科所見としては充血、粘性透明な眼脂、結膜乳頭増殖、涙点浮腫、眼瞼浮腫、結膜浮腫が、自覚的にはほぼ全例で痒み、異物感、流涙、灼熱感がみられたそうです。

外出時にはマスクとともにメガネの着用も推奨します。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22187513

睡眠時無呼吸症候群と緑内障

昨日いびきと緑内障についての新知見をアップしましたが、睡眠時無呼吸症候群は緑内障と関連するという報告が数多くあります。原因は循環不全や、持続陽圧呼吸療法による眼圧上昇などの機序が考えられています。

本論文では、大規模なスタディでの睡眠時無呼吸症候群と緑内障の関連を報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24555122

いびきと緑内障

いびきは上気道閉塞によって生じ、正常でも生じますが、種々の疾患が関与していることがあることが知られています。本論文はいびきと緑内障の関係を調べたもので、いびきは男性、肥満、高い収縮期血圧、若年、高い認知機能と関係したものの、これらの寄与因子を除外すると、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、網膜静脈閉塞のいずれにも関係がなかったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24551196

 

白内障とサプリメント

加齢黄斑変性にはルテインとジアキサンチン摂取が有効であるとの報告がありましたが、白内障ではどうでしょうか?

マルチビタミンの長期摂取で白内障発症のリスクが低下したとの報告がありました。ただし、その効果はわずかであり、白内障発症の誘因は主には加齢性変化であると考えます。一方、加齢黄斑変性とマルチビタミン摂取の関連はなかったとのことです。

http://www.aao.org/newsroom/release/daily-multivitamin-supplement-use-decreases-cataract-risk-in-men.cfm

加齢黄斑変性とサプリメント

加齢黄斑変性は、欧米では高齢者の失明原因の第一位に挙げられ、日本人も徐々に有病率が増加している眼科的に重要な疾患です。症状としては、中心がかすんだり暗くなったりする、色覚やが低下する、明暗の差が分かりにくくなる、人の顔が判別しにくくなる、真っ直ぐな線がゆがむ、物の大きさに左右差がでる、などがあります。加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型があり、後者は抗血管内皮増殖因子抗体の硝子体内注射の有効性が示されていますが、前者は残念ながら有効な治療法がないと言われています。しかしながら、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、ジアキサンチン、酸化亜鉛などのサプリメント服用により、病期の進行を抑えることが示されています。

本論文では、ルテインとジアキサチンが特に有効であると報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1788227&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

 

 

Dua’s layerと緑内障

従来まで、角膜は5つの層によって成り立っていると考えられていましたが、昨年新しくDua’s layerが発見され、教科書を書き換えるくらいのインパクトのある報告がありました。

http://timesofindia.indiatimes.com/home/science/Indian-doctor-finds-new-cornea-layer/articleshow/30588849.cms

Dua’s layerは、コラーゲンでできており、角膜内の水分量のバランスを取るのに役立っているのでは?と考えられていますが、この度、房水の流出路である、線維柱帯の表面にもDua’s layerがみつかり、房水流出のメカニズム解明の一助になるかもしれません。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24532799