「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

再発性角膜びらんの原因について

外傷などで生じる、角膜上皮が剥離する角膜びらんは一般診療上よくみられる疾患で、通常は点眼、軟膏、眼帯などの処置で数日で治癒します。再発性角膜びらんとは、角膜上皮とその下にある基底膜との接着が弱いために、一度治癒した角膜びらんを繰り返し生ずる状態を言います。かなりの疼痛を伴うことが多く、寝ている時に目を閉じながら眼球が動くため、まぶたと眼球との間に摩擦が生じ、起床時に発症することが多いことが知られています。治療としては、最近では治療用コンタクトレンズ装用により奏功するケースが増えてます。

本論文では、再発性角膜びらん患者の病因を調べたところ、軽度外傷の既往(39.3%)、角膜上皮基底膜ジストロフィー、レーザー屈折矯正角膜切除術(各17.1%)、レーザー光線による近視矯正手術(7.7%)の順で多かったことを報告しています。

http://journals.lww.com/corneajrnl/Abstract/2014/06000/Clinical_Presentation_and_Causes_of_Recurrent.6.aspx

ビジョンバンについて

東日本大震災発生直後、宮城県眼科医会が中心となり、震災被災者への高いレベルでの眼科医療支援を提供する目的で、眼科医療支援車両「ビジョンバン」が運行されました。その後も眼科健診車両として、現在でも東北地方を中心にビジョンバンは活躍しています。

http://www.visionvan.jp/index.html

本論文では東日本大震災発生後の宮城県におけるビジョンバンの活躍を報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24809415

睡眠時無呼吸症候群と緑内障について

以前にもお話しましたように、睡眠時無呼吸症候群は緑内障の危険因子ではないかとの報告が近年多数報告されています。理由としては、眼循環不全や、CPAPと呼ばれる気道に圧をかける治療が、眼圧を上げているのではないか?などというという仮説が考えられています。しかしながら、睡眠時無呼吸症候群では、種々の合併症を有していることが多く、それらが緑内障発症に影響を与えている可能性もあります。

本論文は、9580人の睡眠時無呼吸症候群が疑われる患者を対象とし、心血管系因子や肥満、呼吸器に関する因子の影響などを考慮した結果、緑内障の危険因子として挙げられたものは、年齢、低いbody mass index、女性、高血圧、高い中性脂肪、甲状腺機能異常であり、睡眠時無呼吸症候群と緑内障との関係はなかったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24780132

緑内障と家族歴

近親者に緑内障患者がいた場合、緑内障を発症する危険率が上がることは既に多くの報告でなされています。本論文では、健常眼において、緑内障家族歴の有無で、光干渉断層計(Optical coherence tomograph: OCT)を用いて網膜神経線維層厚や黄斑部の網膜厚を測定したところ、家族歴がある群の方が有意に薄かったと報告しています。緑内障家族歴があった場合には、早期の眼科検査が必要となります。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24782474

レーザー虹彩切開術後の見え方の異常について

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、原発閉塞隅角緑内障の治療の第一選択は、「レーザー虹彩切開術あるいは虹彩切除術による瞳孔ブロック解除」であり、いずれも比較的安全にかつ簡便に行える治療です。しかしながら、レーザー虹彩切開術後については、水疱性角膜症などの重篤な合併症を生ずることがあり、治療の適応には十分な配慮が必要です。本治療の合併症の中で、2.7%~4.0%の割合で、光輪症や羞明、影がみえるなどの みえ方の異常を訴える患者さんがいます。多くは時間とともに症状は軽減しますが、何とか避けたい合併症の一つです。

レーザー虹彩切開術の切開孔の位置は、上眼瞼で隠してそれらの見え方の異常を軽減させるなどの理由で、従来まで上方の虹彩で行うことが多かったのですが、本論文では、上方と耳側との比較を行った結果、耳側の方が見え方の異常を訴える患者さんが少なかったと報告しています。理由は涙液層のプリズム効果の有無を挙げています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24531024

補償光学を用いた視神経乳頭の観察について

補償光学とは、「宇宙から地球を撮影したり、地球から宇宙を撮影するときに問題となる大気の揺らぎを光電子的に解決するために開発された光学技術」であり、眼底撮影においても、水晶体や硝子体などによる揺らぎや各種収差を補正することにより詳細な観察が期待されており、補償光学を応用した技術が待ち望まれていました。

本論文は、補償光学を応用した光干渉断層計(optical coherencetomograph)を用いて、視神経の支持組織である篩状板の観察をしたという報告です。リンク先で画像がみれますが、極めて詳細な構造が観察できるようです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3986004/

緑内障性視野障害の改善について

緑内障は不可逆性の疾患であるため、障害されてしまった視神経や視野は改善されないと考えられています。一方、神経には可塑性があり、何らかの方法でわずかばかりですが改善されるのでは?とも考えられています。方法としては、一つは神経保護で、薬物治療などの報告がわずかですが存在します。もう一つはトレーニングです。

本論文では、コンピュータを用いて、視野検査のようなトレーニングを行うことにより、わずかですが、視野障害が改善されたと報告しています。ただし、所謂学習効果による影響も考えられ、神経の可塑性に働いているのではなく、単純に検査慣れにより改善されていた可能性も示唆しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1828526&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

硝子体手術後の眼内炎について

硝子体手術は網膜剥離、糖尿病網膜症、各種黄斑疾患の治療に極めて有用な方法ですが、高度な技術が必要とされる眼科手術の一つと言えます。近年極小切開硝子体手術が主流となり、より簡便かつ短時間で行えるようにはなりましたが、術創を縫合しないために術後感染症(眼内炎)が危惧されます。

本論文は、硝子体手術後の眼内炎発症眼とそうでない眼との症例対象研究です。眼内炎の発症は1730件に1例の割合で生じ、危険因子として免疫低下と術前ステロイド点眼の既往が挙げられましたが、術創の大きさは関係がなかったとのことです。また、網膜剥離手術では、眼内炎の発症が少なかったとしています。

http://bjo.bmj.com/content/98/4/529.abstract

 

緑内障治療薬のウォッシュアウトについて

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、原発開放隅角緑内障(広義)の治療は、「薬物治療を第1選択」とし、「薬物治療は眼圧下降点眼薬の単剤療法から開始し、有効性が確認されない場合には他剤に変更し、有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼薬を含む)を行う」としています。緑内障治療薬の効果が不十分と思われる場合や、眼圧が下がっても視野障害・視神経障害が進行する場合などの例で、無治療時眼圧を調べるために、緑内障治療薬の使用を一時的に中断して頂くことがあります。それをウォッシュアウトといいます。緑内障治療薬は長期に使用した場合に、眼圧下降効果が残ってしまう場合が多く、ウォッシュアウト期間は通常2~4週を目安に行われることが多いと思われます。

緑内障治療薬にはたくさんの種類があり、それらの効果の報告も無数にありますが、緑内障治療薬をウォッシュアウトした場合の眼圧変化についての報告はほとんどありません。本論文は、緑内障治療薬をウォッシュアウトしたところ、点眼1剤、2剤、3剤使用例で、各々治療時眼圧より平均5.4mmHg、6.9mmHg、9.0mmHgの上昇がみられ、治療時眼圧より25%以上の眼圧上昇がみられた例は、各々38%、21%、13%であり、治療時点眼数の数に従い、眼圧上昇の割合が低かったと報告しています。また、ウォッシュアウトしても眼圧上昇幅が小さかったことから、きちんと点眼されていなかったか、さしていても緑内障治療薬そのものの効果が低かったことが想定されるとのことです。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1815983&utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook&utm_campaign=feed_posts%0A

久米島スタディにおける原発開放隅角緑内障患者の有病率

2000年~2001年にかけて行われた日本初の緑内障疫学調査である、多治見スタディは、日本の中心に位置する典型的な中小都市である岐阜県多治見市で行われ、所謂日本人を代表する母集団に基づいて行われましたが、2005年~2006年にかけて行われた久米島スタディは、沖縄県の離島での緑内障疫学調査であり、同じ日本で合っても、人口密度や医療環境、気候、年齢、人種の起源(沖縄県は縄文人を起源とした人種が多いとのことです)などが多治見市とは異なっており、過去の報告において、緑内障の有病率が異なっていたことがわかりました。例えば原発閉塞隅角緑内障においては、多治見市に比べて久米島では3.7倍有病率が多かったことがわかりました。

本論文では、原発開放隅角緑内障(広義)の有病率を調べたところ、多治見市では3.9%であったのに対し、久米島では4.0%で、正常眼圧緑内障では各々3.3%と3.6%とで、大きな差がなかったものの、原発開放隅角緑内障(狭義)(眼圧が統計学的な正常範囲を超える原発開放隅角緑内障)では各々0.7%と0.3%、高眼圧症では2.6%と0.6%と、比較的高い眼圧の原発開放隅角緑内障(広義)が多かったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24746386