「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ

多焦点眼内レンズと中心視野

白内障手術において、先進医療として用いられている多焦点眼内レンズは、遠方も近方もよくみえる有用なレンズですが、ハローやグレア、コントラストの低下が指摘され、その適応は慎重に決めるべきと言われています。本論文では、多焦点眼内レンズ装用後は、中心視野の感度低下がみられると報告しており、黄斑変性や網膜色素上皮変性、緑内障症例では勧められないと結論づけています。

http://www.ajo.com/article/S0002-9394(14)00220-7/abstract

抗血管内皮細胞増殖因子抗体治療と緑内障について

抗血管内皮細胞増殖因子抗体硝子体内注射は、加齢黄斑変性などの新生血管が原因で生ずる重篤な眼疾患の治療に大変有用ですが、治療後に高眼圧となり、緑内障になるケースがみられます。本論文によると、緑内障になる危険因子として、注入量と、注入速度を挙げています。

http://www.ajo.com/article/S0002-9394(14)00233-5/abstract

加齢黄斑変性と食物

加齢黄斑変性は、欧米を始め、本邦でも失明原因の上位を占める重要な疾患です。その発症および進行に食生活が関連することが知られています。本論文では、果物、野菜、鳥、ナッツ類を多く摂取すると発症率が低く、赤身の肉を摂取すると発症率が高かったと報告しています。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00009-8/abstract

緑内障性視野障害は改善するのか?

一般的には緑内障で生じた視神経障害や視野障害は不可逆的なものと考えられていますが、臨床上、改善がみられる症例も見受けられます。多くは学習効果と呼ばれる検査に対する慣れが原因と考えられていますが、本論文によると、眼圧コントロールが良好なほど、視野障害が改善するケースがみられ、緑内障性視野障害は本当に改善している可能性があることを示唆しています。

http://www.ajo.com/article/S0002-9394(14)00190-1/abstract

i phoneアプリによる加齢黄斑変性の発症予測

年齢、性別、教育レベル、人種、喫煙歴、眼底の色素異常、ドルーゼンの状態をデータとして入力すると、今後10年間に加齢黄斑変性発症を予測できるi phoneアプリが開発され、感度87.6% 、特異度73.6%の診断力があったという報告がなされました。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00047-5/abstract

近業と近視の関係

米国眼科学会のサイトからの引用ですが、教育水準の高さと学校で過ごす時間の長さが、近視の有病率と重症度の増大に関連していることを示した研究を紹介しています。近視の原因が遺伝要因より環境要因が上回る可能性を示す初めての集団ベース研究で、注目を集めているようです。

視覚障害の主な原因の一つである近視は、網膜剥離、近視性黄斑変性、白内障および緑内障の早期発症リスク増大にも関連し、近年、世界中で増加傾向にあり、米国では国民の約42%が近眼であり、アジア先進国では80%と言われています。

35-74歳のドイツ人4658人を対象にした本研究によれば、高校やその他の教育訓練を受けていない人で24%、高校および専門学校を卒業した人で35%、大卒で53%が近眼で、教育水準が高く、学校で過ごす時間が多いほど近眼が増加し、さらに、45個の遺伝子マーカーの近視の程度と比較すると、その影響は教育水準の影響に比べて非常に小さいということも示唆しています。

ここ数年の研究で、屋外で遊ぶ時間と日光に当たる時間が多いほど近眼にならないことが分かっており、近眼増加に歯止めをかけるには、屋外に出る機会を増やすことを推奨しています。

http://www.aao.org/newsroom/release/increased-myopia-linked-education-level.cfm

就労と視機能障害について

働くことは健康維持に大切と言われています。19849人を対象とした本論文によれば、就労していない群では、有意に視機能障害(オッズ比3.04)がみられ、特に糖尿病患者、女性、55歳より若い例では、その傾向が高かったと報告しています。ただし、視機能障害を有するために就労できない可能性も示唆しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1888108&utm_campaign=social_071714&utm_medium=facebook&utm_source=jamaophth_fb

緑内障と睡眠時の体位について

過去に投稿させて頂いた中で、仰臥位では眼圧が上がるとか、側臥位の場合、下になった方の眼で眼圧が上がったり、視野障害が強くなったりする等という報告を紹介しました。しかしながら、睡眠をとらないという訳にはいかないので、生活指導のうえで、中々有用な助言はできませんでした。本報告では、睡眠時に20度のhead upで、夜間の眼圧上昇を防ぐことができるというもので、生活指導を行いやすい方法と思われます。

http://www.eugs.org/eng/journalclub_showjournalclub.asp?id=2323

緑内障患者の自覚症状について

一般的な緑内障による自覚的所見は視野障害ですが、実際に患者さんがどのようにみえているかについては、実は最近まで調べられていませんでした。本論文によれば、初期から中期にかけては、光量が足りないとかかすみ目が生じ、後期においてはサングラスをかけているかのように目的物の境界や色合いがわかりにくくなる、とのことです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24992392

2040年の緑内障有病率について

緑内障有病率について、各国間や人種差などの影響を考慮して、一般化させて推定することは極めて困難なことです。本論文は、過去のデータ(50の論文)を階層ベイズモデルを用いて一般化させた報告です。40~80歳までの緑内障有病率は全世界で3.54%で、原発開放隅角緑内障はアフリカで多く(4.20%)、原発閉塞隅角緑内障はアジアで多く(1.09%)、現時点で6430万人の人が緑内障であることが推定されますが、2020年には7600万人、2040年には11180万人に増加することが推定されました。条件付き確率を用いた統計学的手法によると、男性は女性より、アフリカ人はヨーロッパ人より、都会に住む人は田舎に住む人より、原発開放隅角緑内障になりやすいと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24974815