あらゆる慢性疾患の中で、緑内障治療薬を継続できる割合が極めて低いことはよく知られています。本論文は、継続できない危険因子を追跡調査したもので、居住や職場の地域、緑内障治療薬の数、ピロカルピン投与(有効な緑内障治療薬ですが、縮瞳するため、みえ方が変わるという副作用があります)、緑内障と診断された年度(2004年以前)、主治医の性別(男性)が挙げられています。一方、継続しやすい因子としては、プロスタグランジン関連薬投与、病院での治療、ケアの継続などが挙げられています。
「眼についての最新情報」カテゴリーアーカイブ
成人における屈折変化について
小学生から中学生くらいにかけて近視化することが多いことは経験的にもよく知られていることです。おそらくは成長にともなう眼軸長の延長が主因として考えられています。一方、成年になってからも屈折が変化することも知られていることです。本論文は平均52歳を対象とした追跡調査ですが、2年間で0.09~0.22Dの遠視化がみられ、眼軸長は一年間に0.06mm短縮したと報告しています。
水泳用ゴーグルと緑内障について
緑内障患者さんから、「日常生活で気を付けることはありますか?」と聴かれることがよくあります。一般論として緑内障は生活習慣病ではないと考えられており、眼圧を下げることが証明されている唯一の有効な治療法であること、おそらくはストレスが眼圧を上げることがあることから、「細かいことに拘らずに、とにかく毎日点眼を欠かさないで下さい。緑内障治療のアドヒアランスは他の慢性疾患よりも悪いことがわかっていて、毎日点眼することですら大変なことですから。」などとお話しています。過去においては、例えばネクタイをきつく締める人や、吹奏楽をやっていて力を込めて演奏する人は、一時的に眼圧が上がることから、緑内障患者さんは避けるようにと指導されることもあったのですが、追試もなく、最近では指導されなくなってきているかと思われます。水泳用ゴーグルが眼圧を上げるという報告が過去にあったのですが、追試が行われた本論文では、関係がなかったと結論付けています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25204989
落屑症候群と日光曝露および居住地の緯度との関係について
落屑症候群は50歳以上の中高齢者の水晶体表面にふけ様の沈着物がみられ、縁内障や水晶体偏位などをおこし、高齢者の失明原因としても重要な疾患です。北欧に多い(高齢化が原因とも言われています)ことと、日光曝露が重要な危険因子と言われています。本研究では、居住地における赤道からの緯度について、1度離れる毎に11%、夏期に外出する時間については、1週間あたり1時間毎に4%、落屑症候群のリスクが高まることを示唆しています。
未発見または未治療の緑内障について
緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障では、現在のところいったん障害された視機能が回復することはない。また、後期例では治療を行っても進行する例があることが知られている。したがって、緑内障治療においては早期発見、早期治療が大切である」としています。しかしながら、本邦においては、緑内障の新規発見率は89%であると言われ、未だ治療を受けていない緑内障患者が多数潜在していることが示唆されています。米国で行われた本研究においても、未発見または未治療の緑内障患者は実に78%に及ぶと報告しています。
緑内障患者によるスーパーマーケットでの買い物について
両眼に緑内障性視野障害を有する症例を対象とした本研究によれば、健常者に比べると、商品を選ぶのに時間がかかるものの、多くの症例では、視野障害がある部分を時間をかけて見つめることにより、正確に商品を選ぶことができたと報告しています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25162522
視機能障害と死亡率
わずかですが、視機能障害と死亡率は関係があると言われています。本論文によると、視機能障害がすすむと、日常生活動作能力が低下し、そのことが間接的に死亡率を上げていると報告しています。
加齢黄斑変性と内服薬
9676人を対象としたThe Beaver Dam studyで、ニトログリセリンなどの血管拡張剤
や降圧剤である交感神経β遮断薬の内服が、加齢黄斑変性発症の危険因子であることがわかりました。http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00203-6/abstract
糖尿病と緑内障について
古典的に、緑内障症例では糖尿病を合併しているケースが多いと言われており、多数の報告についてメタアナライシスを行った本論文でも、原発開放隅角緑内障と糖尿病に関連があると報告しています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25137059
大学生活を送る上での眼科的な注意点につき
アメリカ眼科学会では、親元を離れる大学生に向けて、6つの眼科的注意点を列挙しています。
(1)コンタクトレンズを装用したまま泳いだり、シャワーを浴びないこと。アカントアメーバ角膜炎の85%はコンタクトレンズ装用者に見られ、深刻な目の感染症を引き起こすことがあります。
(2)屋外活動すること。多くの時間を屋内での勉強に費やす熱心な学生は、近視になるリスクが高いことがいくつかの報告でなされていますが、2014年に報告された研究によれば、大学卒業生の50%以上が近視であり、学年が上がるにつれて視力低下がみられるとしています。
(3)手を清潔にすること。目をこすらず、手を石鹸で洗うことにより、充血やその他の感染症を抑制できるとしています。
(4)目を休めること。インドで行われた研究によれば、工学部と医学部生の約80%がドライアイや充血を経験しており、疲れ目を予防するために、20-20-20のルール(物を見るときは20フィート離れたところから20分見て20秒間目を休める)に従うといいとしています。
(5)メーク用品を共用しないこと。ヘルペス性角膜炎などの感染症が拡大しやすく、クリーム状や液状のアイメーク用品内では細菌が繁殖しやすいと言われています。
(6)野球、バスケットボール、ラクロスなどの試合中は目を保護すること。目の表面を傷つけたり、眼窩周辺を骨折したりすることが多いと言われています。
http://www.aao.org/newsroom/release/six-smart-things-college-students-should-do-for-their-eyes.cfm