「緑内障」カテゴリーアーカイブ

ジェネリック医薬品についての総説につき

この度、技術情報教会様から執筆依頼があり、書籍「ジェネリック医薬品・バイオ後続品の開発と販売・マーケティング戦略」中におきまして、「緑内障治療薬におけるジェネリック医薬品の使用実態と先発品からの切り替え判断基準」というタイトルで総説を執筆させて頂きました。緑内障は長期にわたる経過観察と治療が必要で、治療薬のコストを考えると先発品とジェネリック医薬品との薬価の差は無視できず、かつジェネリック医薬品の中には、保存の簡便性や点眼瓶の形状の工夫、アレルギーを起こしやすい防腐剤の変更などが行われている場合があり、その使用に関しては先発品にはないメリットもあります。総説の内容としましては、そのような緑内障治療薬におけるジェネリック医薬品の特性について書かせて頂きました。

ジェネリック医薬品・バイオ後続品の 開発と販売・マーケティング戦略

眼科未受診の緑内障患者の割合

緑内障では、一度障害された視機能が回復することはないため、早期発見早期治療が極めて重要なことです。しかしながら一般的な緑内障は、極めて緩徐に進行するため、初期には自覚症状がなく、ドックなどの検診や何かのきっかけで眼科に受診することがなければ、早期に発見することは困難と言えます。日本で行われた疫学調査においては、新規発見例が89%と極めて高いことが問題視され、眼科検診の重要性が増したものと考えられます。
シンガポールで行われた疫学調査の結果を示した本報告でも、72.1%が眼科未受診であったことを示しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=2301009&utm_source=Silverchair%20Information%20Systems&utm_medium=email&utm_campaign=ArchivesofOphthalmology%3AOnlineFirst06%2F04%2F2015

緑内障治療薬における後発医薬品について

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「アドヒアランスとは患者も治療方法の決定過程に参加したうえ、 その治療方法を自ら実行することを指すものと定義され」、「緑内障治療薬に対するアドヒアランスは医師が考えているよりはるかに悪いことが報告されている。」と書かれています。アドヒアランスを向上させるために、薬物その他の医療費を抑える、ということは大切なことの一つと考えられています。特に緑内障治療については、病気の性格上、長期に渡る頻回の診察および治療が必要なことが多く、医療費は無視できません。本論文では、後発医薬品を用いることにより、緑内障治療のアドヒアランスが向上したと報告しています。緑内障治療薬の後発医薬品については、眼障害を起こしうる防腐剤をフリーにした薬物や、薬品の保存方法を簡便にした薬物もあり、先発品に比して薬価以外のメリットもあります。ただし、本邦においては、後発医薬品の認可の基準が比較的厳しくないために、不測の副作用が生ずることがありえて、その使用については医師と患者との話し合いを十分にすべきと考えます。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)01116-6/abstract

自動車運転と緑内障について

緑内障例では、自動車運転に伴う事故が健常例に比し高まる可能性があることについては、最近日本において優れたシミュレーションデータが発表されました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25724982

視野障害の様式について、どの部位での障害が事故を起こしやすいかについて、この度新しい報告がありました。一般的には緑内障眼については上半視野障害は自覚症状が出にくいとされていますが、本論文によれば運転については、下半視野障害に比し、上半視野障害の方が運転技術が劣るという結果でした。

http://bjo.bmj.com/content/99/5/613.abstract

Preperimetric glaucomaはどのくらいの割合で緑内障に移行するか?

緑内障の病期はcontinuum(連続体)と言われ、網膜神経節細胞の死から始まり、自覚症状の出現、症例によっては最後は失明に至る疾患であり、どの時点から緑内障として定義されるかについてはあくまで人為的なものと言えます。一般的には視野検査が確定診断となります。緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、眼底検査において緑内障性視神経乳頭所見や網膜神経線維層欠損所見などの緑内障を示唆する異常がありながらも通常の自動静的視野検査で視野欠損を認めない状態をpreperimetric glaucomaと称することがある、と記載されています。本論文では、実際にpreperimetric glaucomaのうちどのくらいの割合で緑内障に移行するかが報告されており、3年間で13%としています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25943739

ストレスと緑内障について

ストレスと緑内障の関係について質問を受けることがよくあります。二つの関係について、明確なエビデンスはありませんが、心理学的ストレスが眼圧を上げるという報告はいくつかあり、特に交感神経が優位な状態では眼圧が上昇するということはよく知られていて、そもそも緑内障治療薬として、交感神経β遮断薬が緑内障治療の第一選択薬の一つとして用いられています。では観血的に交感神経を遮断するとどうなるか? 動物実験ではよく行われていることではありますが、1898-1910年において、実際に頚部交感神経切除術が緑内障手術の一つとして行われていたようです。効果は限定的だったようで、後により有効で安全な薬物治療や観血的治療に置き換わったようです。ただし、都会生活者の方が郊外生活者よりも緑内障有病率が高いなどの傍証から、負担ないれべるでの、ストレス軽減は緑内障発症や病期の進行抑制に有用ではないか、と思われます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25907524

緑内障性視野障害の部位とQOL

緑内障性視野障害の特徴として、網膜神経線維の走行の関係から、水平経線を挟んで上または下半視野の障害が生じ、後期になると、上下とも視野障害が起こり、多くは中心視野は末期まで保たれるとされています。一般的には上半視野障害は自覚されにくく、下半視野は軽度の視野異常であっても、自覚されやすいことも指摘されています。本論文では、上または下半視野障害を有する緑内障患者のQOLを調べたもので、やはり下半視野障害の方が、QOLが低下すると報告しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1973975

正常眼圧緑内障と篩状板の厚さについて

正常眼圧緑内障とは、原発開放隅角緑内障(広義)の中で、眼圧が健常眼の統計学的な正常範囲に留まるサブタイプであり、種々の点で眼圧が高いタイプの緑内障と病因が異なることが指摘されていますが、それでもやはり眼圧が最大のリスクファクターであることには違いがなく、治療も眼圧を下げることに変わりはありません。病因の仮説の一つとして視神経線維を支持する篩状板が健常眼に比べて脆弱であることが示唆されています。本論文では、視野障害を生じた正常眼圧緑内障眼について、視野が正常な他眼や健常眼に比べて、篩状板が薄かったと報告しています。

http://www.ajo.com/article/S0002-9394(14)00779-X/abstract

緑内障と心理社会的機能について

緑内障患者さんが有する不安感についての論文です。本報告によれば、緑内障患者さんは健常者に比して63%高い割合で不安感を感じ、71%低い割合で自己像を有し、心理社会的健康度が32.4%低く、健康管理に対する信頼が38.3%低かったとのことです。このような傾向は視力や視野に比例するということですが、健康管理に対する信頼度を向上させるようにすると、心理社会的機能は向上するとのことです。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00933-6/abstract

落屑症候群に対する白内障手術について

落屑症候群とは、落屑物質が水晶体表面や瞳孔縁のみならず、房水流出路である線維柱帯や水晶体を支えるチン氏帯に付着することにより、白内障や水晶体偏位、難治緑内障を生じる疾患群です。落屑症候群に対する白内障手術はやや困難なことがあり、脆弱なチン氏帯のため、術中術後に眼内レンズの偏位が生ずることがあります。
本論文では、落屑症候群で生ずる眼内レンズの偏位が、緑内障眼、特に重症な場合に多いことを示しています。

http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00824-0/abstract