「緑内障」カテゴリーアーカイブ

2040年の緑内障有病率について

緑内障有病率について、各国間や人種差などの影響を考慮して、一般化させて推定することは極めて困難なことです。本論文は、過去のデータ(50の論文)を階層ベイズモデルを用いて一般化させた報告です。40~80歳までの緑内障有病率は全世界で3.54%で、原発開放隅角緑内障はアフリカで多く(4.20%)、原発閉塞隅角緑内障はアジアで多く(1.09%)、現時点で6430万人の人が緑内障であることが推定されますが、2020年には7600万人、2040年には11180万人に増加することが推定されました。条件付き確率を用いた統計学的手法によると、男性は女性より、アフリカ人はヨーロッパ人より、都会に住む人は田舎に住む人より、原発開放隅角緑内障になりやすいと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24974815

原発閉塞隅角緑内障における家族歴

緑内障発症の重要な危険因子として、家族歴が挙げられます。原発閉塞隅角緑内障患者の家族歴を検討した本論文によれば、実に1/3の割合で、兄弟に原発閉塞隅角緑内障患者がいて、逆に兄弟に原発閉塞隅角緑内障患者がいた場合、いない場合と比べて発症率は10倍であったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24974379

緑内障治療における薬物併用について

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、緑内障の多数をしめる原発開放隅角緑内障(広義)においては、薬物治療が治療の第一選択であり、中でも第一選択薬としては、交感神経β遮断薬またはプロスタグランジン関連薬としています。第一選択薬を用いても、薬剤の効果が不十分な場合、あるいは薬剤耐性が生じた場合は、まず薬剤の変更を考慮し、単剤(単薬)治療をめざすものの、単剤(単薬)での効果が不十分であるときには多剤併用療法(配合点眼薬を含む)を行います。

本論文では、薬物併用について調べたもので、プロスタグランジン関連薬から治療を開始した例で、実に36%の例で24カ月以内に併用療法が行われたと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24959067

中心角膜厚と眼圧について(人種による影響)

一般診療で用いられるGoldmann圧平眼圧計や非接触型眼圧計においては、その測定値には角膜の物理学的特性の影響があることが知られ、例えば、角膜が薄いと眼圧が低く、角膜が厚いと眼圧は高く測定されることが知られています。また、薄い角膜は眼圧の過小評価や篩状板の脆弱性などの理由から、緑内障のリスクファクターと考えられています。
多民族国家であるシンガポールで行われた本研究では、中国人ではマレー人やインド人と比べて角膜は薄く、眼圧は低い結果でした。主に白人を対象として行われた過去の報告では、薄い角膜の高眼圧症では、緑内障に移行する確率が厚い角膜を有する症例に比べて3倍高いとされましたが、アジア人は一般的に角膜は薄く、同報告における角膜厚の定義に当てはめると、実に半分以上のアジア人が「薄い角膜」と定義されてしまうとのことです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24950592

原発開放隅角緑内障患者の眼圧日内変動

眼圧は血圧などと同様、一日の間で変動することが知られています。そのため、眼圧の日内変動を測定することは、緑内障診療を行う上で有用なことがあり、特に常に同じ時間帯で診察を受け、眼圧が低いにも関わらず視野障害が進行する症例などでは、他の時間帯で眼圧が上がっているケースがみられるため、積極的に行ってもいい検査と言えます。しかしながら、眼圧は季節変動のみならず、日々変動も起こすことが知られており、一度の眼圧日内変動のみでは、眼圧の評価が困難であることもあります。

本論文では、6カ月毎、計4回眼圧日内変動を行ったところ、各々の眼圧変動の一致率は極めて低く、特に30%以上眼圧が変動する例では、6.4%しか一致しなかったと報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24939513

緑内障治療薬を切らす割合

緑内障治療において、肝要なことの一つは、治療に対するアドヒアランスを向上させることです。緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「アドヒアランスとは患者も治療方法の決定過程に参加したうえ、 その治療方法を自ら実行することを指すもの」と定義しています。アドヒアランスが不良となる一因は、緑内障治療薬を切らしてしまうことが挙げられます。

本論文では、25.4%で切らしたことがあり、その危険因子として、視力不良を挙げています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24927769

アジアにおける緑内障疫学調査について

アジアにおける緑内障についての疫学調査は、日本をはじめ多数の国で行われていますが、その他の地域に比べると原発閉塞隅角緑内障の発症頻度が高いことが知られています。しかしながら、一番多い病型は原発開放隅角緑内障(広義)で、中でも眼圧が低いタイプの正常眼圧緑内障が多いことも知られています。緑内障の危険因子については、白人と比べてアジア人では、近視が挙げられることが多いと言われています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24837853

乳頭出血の危険因子

前にも本ブログでアップしましたが、乳頭出血とは、主に視神経乳頭縁にみられる線状の出血であり、緑内障発症や病期の進行の危険因子として知られている眼科的所見です。乳頭出血の発症原因は未だ不明ですが、近年では視神経乳頭にある篩状板の形状の変化により毛細血管が破綻し、乳頭出血が生ずるとする仮説があります。

本論文は、乳頭出血が生ずる危険因子を調べたもので、片頭痛、視神経乳頭辺縁部の菲薄化、交感神経β遮断薬の全身投与、低い収縮期血圧、低い眼潅流圧を挙げています。

http://www.ajo.com/article/S0002-9394(14)00072-5/abstract