ブルーベリー摂取による眼病予防や改善の効果は、明らかなエビデンスがないと前述しました。最近、同じアントシアニンを含有するビルベリー摂取により、緑内障性視野障害が改善したという報告がありました。本報告では、イチョウの葉エキスも有用であるとのことです。
しかしながら、反証もありますので、十分留意して下さい。
ブルーベリー摂取による眼病予防や改善の効果は、明らかなエビデンスがないと前述しました。最近、同じアントシアニンを含有するビルベリー摂取により、緑内障性視野障害が改善したという報告がありました。本報告では、イチョウの葉エキスも有用であるとのことです。
しかしながら、反証もありますので、十分留意して下さい。
眼圧を定義している教科書は少ないので、正確な記載ができないかもですが、眼圧とは、基本的には眼球内部の圧力を言います。従いまして、真の眼圧を測るためには眼球内部にセンサーを挿入する必要があり、もちろん日常診療の場では不可能なことです。多くの眼圧計は、眼球に何らかの圧力をかけた後、どの程度眼球が変形するのかをみることにより測定がなされます。前述した通り、本来は一日の眼圧変動を知りたいことがあっても、家庭内で自分で測定することは安全とは言い難いものがあります。
近年コンタクトレンズにセンサーをつけて、眼圧(値ではなく変動)をみる装置が開発され、その安全性と有用性を示す論文が出てきています。
緑内障、またはその疑いのある患者さんは、1ヵ月~数ヵ月に一度の眼圧測定が必要となります。理由は、眼圧が時間や季節に応じて変化するためです。それもいつ、眼圧のピークやトラフがあるのかが決まっていれば問題はないのですが、人に応じてまちまちです。眼圧の変動について、緑内障診療ガイドライン(第三版)の記載から引用します。「眼圧には日内変動があり一般に朝方に高いことが多いが、個人によりパターンは異なる。また、眼圧には季節変動もあり、一般に眼圧は冬季に高く、夏季に低いことが知られている。眼圧に関連する因子として、年齢、性別、屈折、人種、体位、運動、血圧、眼瞼圧および眼球運動などが挙げられ、また、種々の薬物も眼圧に影響を与える。」。
通常の診療時間帯で眼圧が低いにも関わらず、視野障害が進行する場合、眼圧の日内変動が大きく、眼圧のピークが診療時間帯以外にあることが想定されます。その場合、検査入院として、一日眼圧を測定することがあります。
前述したOHT Calcというapplicationは、OHTS calculatorという数式が元になっております。この数式を用いて、他の大規模studyに当てはめた場合、きちんと予測できたという報告が最近なされました。とはいえまだ改良の余地があるようです。Aという集団を基に疾患の有無を判別する数式を作成した時に、他のB、Cという集団にその判別式が使えるかということに対しては、複雑な統計学的手法を用いなければなりません。今後改善された数式が出るのではないかと期待しています。
The Ocular Hypertension Treatment Study (OHTS)と呼ばれる、海外で行われた大規模な研究があります。要約しますと、高眼圧症に対し、眼圧下降治療を行う群と無治療群に分けて、5年間経過観察すると、前者では4.4%、後者では9%が緑内障に移行したという報告です。また、緑内障に移行しやすい危険因子としては、①高齢、②視神経乳頭陥凹拡大、③軽微な視野異常(高いpattern standard deviation)、④高眼圧、⑤薄い角膜厚が同研究で示されました。これらの危険因子を計算式に当てはめ、5年後に自分が緑内障になるかどうかの確率を計算するi phone appがあります。ただし、この計算は、医療機関でないとわからない数値を入力しないといけませんので、一般的ではないこと、あくまで欧米人のデータに基づいた計算式ですので、日本人に当てはまるかは保証できないこと、に留意ください。
「緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy: GON)である」と以前述べました。一方、眼圧が統計学的に高い数値であっても、視神経症を生じない一群があります。それが高眼圧症です。とは言え、経過観察中に視神経症が生じ、緑内障に移行する例も少なくありません。緑内障診療ガイドライン(第三版)による定義は以下の通りです。「眼圧など房水動態の点では原発開放隅角緑内障と共通する特徴を有しながら、視神経の特徴的形態変化ならびに視野異常の存在を欠く病型を高眼圧症(ocular hypertension)と呼ぶ。原発開放隅角緑内障の前段階とする考え方がある一方、視神経の眼圧抵抗性の強い症例とする考え方がある。高眼圧症から緑内障へ進行しやすい症例の背景として、緑内障の家族歴、血管因子、加齢、人種、屈折異常などが知られている。また、角膜厚が厚いほど眼圧が高く評価されることに留意する必要がある」。
治療としては、まずは経過観察を行い、「繰り返し眼圧20mmHg台後半を示すような例、緑内障家族歴などの危険因子のある場合には、耐用可能な点眼薬で治療を行う」とされています。中には落屑緑内障や遅発型発達緑内障などが含まれていることがあり、経過観察はしっかりと行う必要があるものと考えております。
緑内障の有病率は40歳以上で5%と言われ、特に中高年になったら注意すべき疾患の一つと言えます。一方、40歳以上になると、マイホームを作るために住宅ローンを組む人が増えてくると思われます。その際、一般的には生命保険に加入することが義務づけられると思いますが、代表的な生命保険である、団体信用生命保険には「緑内障」の告知義務があります。条件は、「過去3年以内に(中略)、手術を受けたことまたは2週間以上にわたり医師の治療(診査・検査・指示・指導を含む)・投薬を受けたことがありますか。」です。一般的には緑内障は慢性疾患のため、容易に上記条件に該当することが予想されます。そのため、緑内障の治療が開始されると、団体信用生命保険に加入できなくなる恐れがあります。
私ども医者は、患者の社会的背景を常に考えながら治療を行いますが、時には事情を聴取し損ねることもありますし、また、社会的背景に拘泥されて治療を遅らせたり、怠ってはならないとも思います。もし、ご心配の方はかかりつけ医にご相談下さい。
強い視野障害を持つ人が、QOLのうえで、何に一番困るのかを調べた論文です。なじみの場所での日中のドライブと道の脇にある障害物を避けて歩くことという結果でした。
http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(13)00888-9/abstract
緑内障治療薬を使用している患者さんによく聴かれる質問です。「(少なくともお元気なうちは)一生です」とお答えするしかありません。
緑内障で失明するリスクは(外傷や手術の合併症で低すぎることがない限り)眼圧が低ければ低いほど低下します。また、緑内障は年齢と関係があり、網膜神経節細胞は健常人であっても年齢とともに減少し、理論値では150歳になれば全員緑内障になると言われています。その方の余命が何歳であるのかが分からない以上、「一生」とお答えするしかありません。
緑内障診療ガイドラインにも書かれていますが、以上の理由もあり、医者側としては「薬物治療の原則は必要最小限の薬剤と副作用で最大の効果を得ることである」必要があり、その方の「QOL、治療にかかわる費用、アドヒアランスなどへの配慮」も必要となります。
以前お話した通り、眼圧値のみで緑内障かどうかを診断するのは困難です。特に正常眼圧緑内障が多いと言われている日本においてはなおさらです。一般的に確定診断は視野検査になりますが、手間がかかる検査で、眼科受診者全員に視野検査を行うことも困難と言えます。従いまして、緑内障診断の入り口は眼底検査になるかと思われます。検眼鏡法または眼底写真撮影法が主となるかと思いますが、問題は視神経の形状が個々においてvariationがあるため、緑内障専門医と言えども、診断にバラつきがあります。診断が一致するかどうかの指標として、κ値というものがあり、0.5あたりで中等度の一致と言われているのですが、眼底検査におけるκ値は0.20-0.84と、高くないことが知られています。
緑内障診断には、種々の検査が必要で、総合的に勘案した上で確定診断がなされますので、どうしても検査が多くなりがちになります。
http://www.touchophthalmology.com/articles/clinical-optic-disc-evaluation-glaucoma