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新潟大学医学部卒業 眼科八百枝医院院長 新潟大学大学院医歯学総合研究科視覚病態学分野非常勤講師 医学博士

相対性求心性瞳孔反応欠損の研究につき

相対性求心性瞳孔反応欠損(relative afferent pupillary defect: RAPD)とは、たとえば右眼が視神経症で視力低下していて、左眼が正常の場合
ペンライトを右眼から左へ動かすと左の瞳孔が縮瞳します。そこから右眼にライトを戻すとライトが来た瞬間には右眼は間接反応のため縮瞳しているのですがライトの明るさを右眼は感知できないのでライトを照らしているにも関わらず瞳孔がかえって開いてゆくという奇異な逆の反応が見られます。この現象は視神経疾患を鑑別するために、極めて重要な所見です。しかしながらこの反応は正常でもみられることがあり、また、軽微な場合見逃すことがあります。本論文はRAPDx®という器械を用いてRAPDを観察したところ、極めて高い診断力があったことを示しております。本研究につきましては、院長も微力ながらお手伝いさせて頂き、共同執筆者として名前を入れて頂きました。

Association between a relative afferent pupillary defect using pupillography and inner retinal atrophy in optic nerve disease

近視と出生順について

自分自身存じ上げなかったことなのですが、英国やイスラエルの研究で、第一子はその後に生まれる子よりも近視の発症率が10%高いという報告があったとのことです。本論文は追試として教育環境との関連を検討したところ、高い教育を受けた例を除外すると、有意性が減少したため、近視と出生順との関係については、教育が関連していることを示唆しています。

Role of Educational Exposure in the Association Between Myopia and Birth Order

血圧変動と緑内障について

緑内障の発症および病期の進行における最大の危険因子は眼圧ですが、古典的に特に正常眼圧緑内障において、眼循環障害の影響も危険因子の一つとして考えられています。特に夜間低血圧は虚血性視神経症の発症のリスクのほか、その病態の類似性のために緑内障との関連が示唆されています。
本論文では、そのような一日の血圧変動のみならず、日中の血圧変動が緑内障性視野障害進行の危険因子であると報告しています。

Relationship Between Daytime Variability of Blood Pressure or Ocular Perfusion Pressure and Glaucomatous Visual Field Progression

乳頭出血と血小板機能について

視神経乳頭出血は、緑内障性変化を持つ視神経乳頭にかなり特異的に生じ、健常者ではまれで(0~0.21%)、特に反復してみられた場合は病的意義が高く、また、乳頭出血の頻度は他の緑内障眼に比して正常眼圧緑内障眼において高いことが知られています。一般的に乳頭出血は数か月で消失するため、観察できない例も多いと言われています。乳頭出血が循環不全によって生ずるか、網膜神経節細胞の欠損に伴って物理的に血管が破綻するかについては、まだ結論が出ていませんが、光干渉断層計による観察などで、後者によるものではないか、という説が優勢のようです。
本論文では、正常眼圧緑内障例において、乳頭出血を有する例では、血小板機能が低下しており、そのため出血が長引き、観察されやすいのでは?と結論づけています。

Association between Platelet Function and Disc Hemorrhage in Patients with Normal Tension Glaucoma: A prospective cross-sectional study.

対光反射と緑内障

対光反射は、網膜神経節細胞を介して瞳孔の直径を光の強さにより変化させ、網膜に届く光の量を調節する反射であり、各種網膜疾患や視神経疾患などで反射が減弱することが知られています。緑内障は網膜神経節細胞の消失が病態の本質であるため、理屈上は対光反射の変化が生じうると考えられますが、末期になるまでは、一般臨床では観察しづらいのが現状です。
近年、内因性光感受性網膜神経節細胞の働きに注目が当たっているようで、睡眠などの概日リズムを司っていることが示唆されており、また、緑内障においては早期に障害されることが言われています。一方、内因性光感受性網膜神経節細胞は青色の光に感受性が高いことも示唆されています。
本論文は、緑内障症例に対して青色の光を用いた対光反射を調べた結果、比較的早期に、かつ病期の強さに応じて対光反射の減弱がみられたことを報告しており、内因性光感受性網膜神経節細胞の消失がその主因であることを示唆しております。

Pupillary Responses to High-Irradiance Blue Light Correlate with Glaucoma Severity

原発開放隅角緑内障の有病率

Global variations and time trends in the prevalence of primary open angle glaucoma (POAG): a systematic review and meta-analysis

本報告は、過去81編の研究(37カ国、216214人の対象者、5266人の原発開放隅角緑内障例)をまとめたものですが、原発開放隅角緑内障の有病率は、人種では黒人が最も多く、60歳で5.2%、80歳で12.2%であり、男性は女性より有病率が高かったとのことです。また、全世界の有病率は2.2%と推測されるということです。

血中微量金属と緑内障

人体に必須である栄養素が過剰であったり、毒性のある物質が体内に多く蓄積する場合、種々の疾患を発症させることが示唆されていますが、本論文では、血中微量金属と緑内障との関係を調べた結果、血中マンガン濃度とは負の、水銀濃度とは正の相関があり、これらの結果は、緑内障の病態解明に寄与されることが期待されると報告しています。

Association Between Body Levels of Trace Metals and Glaucoma Prevalence

創立82周年になりました

昭和8年8月1日長岡市玉蔵院(現東坂之上)において初代院長八百枝文により、眼科八百枝医院が設立しました
昭和20年8月1日長岡大空襲による戦災のため閉院
昭和20年10月6日長岡市東神田町に移転開業
昭和22年8月1日長岡市愛宕町に移転開業
昭和27年8月1日長岡市長町に移転開業
昭和50年4月1日二代目として八百枝浩が院長に就任
平成20年10月1日三代目として八百枝潔が院長に就任
平成26年6月1日同町にやおえだ眼科として副院長福島淳志を迎え、移転開業しました
本日で創立82周年になりました。今後も良質な医療サービスを提供し、地域医療に貢献していく所存です
また、長岡大空襲70年目の今日、深く哀悼の意を表します

白内障予防のために

白内障は目の中の水晶体が混濁し、かすみ目や調節低下、まぶしさ、物が二重にみえるなどの自覚症状の後、徐々に視力低下が生ずる疾患で、加齢とともに多くの方が罹患します。白内障を含め、いくつかの眼疾患予防として、米国眼科学会は外出時のサングラスの装用を勧めています。本論文は食生活と眼疾患の関係を調べたものですが、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6およびB12摂取が白内障発祥リスクを低下させたと報告しています。

The Association of Dietary Lutein plus Zeaxanthin and B Vitamins with Cataracts in the Age-Related Eye Disease Study

緑内障薬物治療に対するアドヒアランス低下の原因について

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、アドヒアランスとは、「患者も治療方法の決定過程に参加した上、 その治療方法を自ら実行すること」であり、緑内障治療を成功させるためにはアドヒアランスを向上させることが極めて重要であると考えられています。

アドヒアランス低下の原因に対する論文はいくつかありますが、最新の本論文によりますと、自己効力感(Wikipediaより、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できるかという可能性の認知)の低下、点眼の難しさ、さし忘れ、点眼スケジュールの難しさ、が要因として挙げられました。

The Most Common Barriers to Glaucoma Medication Adherence: A Cross-Sectional Survey.