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新潟大学医学部卒業 眼科八百枝医院院長 新潟大学大学院医歯学総合研究科視覚病態学分野非常勤講師 医学博士

人工知能を用いた光干渉断層計による緑内障診断

メールをスパムかそうでないか、を判定させる方法としてMachine learning classifierという統計学的手法が用いられています。これは人工知能の一種で、AというメールはスパムでBというメールはスパムではない、と機械に教え込ませて、判定精度を向上させる方法です。

本論文は、光干渉断層計(OCT)で、Machine learning classifierを用いた緑内障診断を行っても、その診断力が向上しなかった、というものです。前述の通り、それだけ眼底所見のみの緑内障診断は困難であると言えます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24369495

眼底三次元画像解析装置を用いた緑内障診断

以前も述べましたように、眼底検査による緑内障診断は、困難が伴います。以下、緑内障診療ガイドライン(第三版)の記載を引用します。「経験のある者が眼底を観察して緑内障を診断する効率は高いが、各検者の眼底評価には個人差が存在するため、緑内障性眼底変化を標準化された方法で評価、判定する方法の確立が望まれている。このような意味から、測定精度が高く、測定再現性も良好で、かつ操作が容易なコンピュータを用いた眼底画像解析装置の利用は有望な解決法の一つと考えられている。現在臨床応用されている眼底画像解析装置として、Heidelberg Retina TomographR、GDx Nerve Fiber AnalyzerR、光干渉断層計などが挙げられる。これらの診断機器では、視神経乳頭あるいは網膜神経線維層厚を定量的に評価することが可能であり、緑内障診断における有用性が報告されている。しかしながら、視神経乳頭形態や神経線維層厚には個人差があり、緑内障眼と正常眼の間で測定された数値のオーバーラップがみられることや、解析装置の測定精度の限界などから、緑内障と正常を完全に分別することは未だ成功していない。」。

緑内障診療ガイドライン(第三版)

私って目がいいんですよ

「だから目医者さんって初めてかかるんですよ」とお話しされるご高齢の方が結構見受けられます。眼科医としては、ドキッとします。原発閉塞隅角緑内障の可能性があるからです。

「目がいい」=「正視または遠視」の可能性が高く、その場合、眼球の形状が他の人に比べて小さい可能性があり、房水(眼球内を循環する透明な血液)の流出路である、隅角が狭いケースが多く見受けられます。

隅角は加齢に伴い、眼内の水晶体の膨隆や前方移動のために狭くなる方がいます。原発閉塞隅角緑内障であった場合、レーザーや手術治療が必要なことが多く、「目がいい」方こそ、眼科に受診する必要があると思います。

イチョウの葉エキスと緑内障

院長が新潟大学眼科緑内障外来で勤務していた頃、イチョウの葉エキスが眼循環改善や神経保護に効果的という報告がいくつかみられ始め、2008年に香港で行われたWorld Ophthalmology Congressにおいても多数の報告がありました。その後も中国を中心に多数の有用な報告がなされました。

最新の本論文はその反証です。イチョウには緑内障性視野障害改善の効果がないという結論です。

対象や研究方法の違いにより、研究結果が異なることはよくあることです。ですので、一つの研究結果を鵜呑みにすべきではありません。長年にわたる研究結果の積み重ねにより、信頼ある研究結果が導かれます。今後の研究に期待したいものです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24282229

アントシアニンと緑内障

ブルーベリー摂取による眼病予防や改善の効果は、明らかなエビデンスがないと前述しました。最近、同じアントシアニンを含有するビルベリー摂取により、緑内障性視野障害が改善したという報告がありました。本報告では、イチョウの葉エキスも有用であるとのことです。

しかしながら、反証もありますので、十分留意して下さい。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22870951

本日の新医院

今日の長岡市は久しぶりの雪です。とは言え、根雪になるというほどでもないようです。今日で現医院は仕事納めですが、新医院の建築も年内は今日で最後とのことです。工事なさって下さっている方々並びに関係各位には、IMG_4729本年は大変お世話になり、深謝いたします。来年もよろしくお願い申し上げます。

眼病とサプリメント

昨日も診療中にご質問がありました。「納豆って目に悪いんですか?」。血流を良くするという意味で、いい効果もありそうですが、出血傾向も増えそうで、いいとも悪いとも言い難いです。その後自分なりに調べてみたのですが、特に研究がなされているという訳ではないようです。

「ブルーベリーが目にいい」という話はよく聴きます。しかしながら、はっきりとした研究結果が出ている訳ではありません。とは言え、個人的にはサプリメントを使用することは基本的には否定しません。と言いますのも、「日常生活の中で、自分の眼を何とかしたい!」という意志は尊重すべきと思うからです。病気に関心を持つ、ということは治療を成功に導くいいきっかけだと思いますし、そのような人ほどアドヒアランスがいいと考えるからです。更には、いろんな生活習慣やサプリメントなどを試すことによって、何が効いて何が効いてないかを類推し、それが後々きちんとした研究成果に表れることもありうるからです。

注意すべき点は三つあります。ひとつは、基本的には、医療機関で処方される薬物は、それなりに根拠があって使用される訳で、それら薬物を否定して、根拠の薄いサプリメントを求める姿勢はよくないと思われます。一つは、高額なサプリメントは控えるべき、ということです。あくまで日常生活の中で、負担がない程度に抑えるべきです。最後の一つは、理屈上効くと思われていたサプリメントが、後に逆効果が示される可能性があり、十分な配慮が必要ということです。加齢黄斑変性に効くと考えられていたβカロテンが、喫煙者には癌を風発する作用を有することが示されたのが一例です。何事も程々に、と思われます。

コンタクトレンズを用いた眼圧計

眼圧を定義している教科書は少ないので、正確な記載ができないかもですが、眼圧とは、基本的には眼球内部の圧力を言います。従いまして、真の眼圧を測るためには眼球内部にセンサーを挿入する必要があり、もちろん日常診療の場では不可能なことです。多くの眼圧計は、眼球に何らかの圧力をかけた後、どの程度眼球が変形するのかをみることにより測定がなされます。前述した通り、本来は一日の眼圧変動を知りたいことがあっても、家庭内で自分で測定することは安全とは言い難いものがあります。

近年コンタクトレンズにセンサーをつけて、眼圧(値ではなく変動)をみる装置が開発され、その安全性と有用性を示す論文が出てきています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24158696

眼圧の変動

緑内障、またはその疑いのある患者さんは、1ヵ月~数ヵ月に一度の眼圧測定が必要となります。理由は、眼圧が時間や季節に応じて変化するためです。それもいつ、眼圧のピークやトラフがあるのかが決まっていれば問題はないのですが、人に応じてまちまちです。眼圧の変動について、緑内障診療ガイドライン(第三版)の記載から引用します。「眼圧には日内変動があり一般に朝方に高いことが多いが、個人によりパターンは異なる。また、眼圧には季節変動もあり、一般に眼圧は冬季に高く、夏季に低いことが知られている。眼圧に関連する因子として、年齢、性別、屈折、人種、体位、運動、血圧、眼瞼圧および眼球運動などが挙げられ、また、種々の薬物も眼圧に影響を与える。」。

通常の診療時間帯で眼圧が低いにも関わらず、視野障害が進行する場合、眼圧の日内変動が大きく、眼圧のピークが診療時間帯以外にあることが想定されます。その場合、検査入院として、一日眼圧を測定することがあります。