今日の長岡市は晴れです。
新医院の入り口付近を撮影しました。外観はほぼ完成しております。
緑内障治療において大切なことの一つは、患者さんが如何に自覚症状がない状態で一生をすごしてもらうか、ということです。視神経障害や視野障害は不可逆的なものであり、そのため早期発見早期治療が大事になりますが、なかでも傍中心暗点を有する患者さんは自覚症状を起こしやすいため、なおさら早期発見が大切になります。
本論文は傍中心暗点を有する緑内障患者さんの眼底所見を、他眼と比較したものです。両眼とも眼圧が同じであっても、傍中心暗点を有する眼では、より強い視野障害があり、乳頭出血(特に正常眼圧緑内障で、視神経障害、視野障害が生じる前にみられる眼底所見)が多く、網膜神経線維層欠損の幅が広く、網膜中心動静脈の幹がより垂直方向に移動しており、多変量解析では、この幹が水平垂直方向に移動していた、と報告しています。
皮膚のしわを目立たなくさせるために用いる皮膚充填剤(フィラー)を前頭部に用いた場合、網膜中心動脈に迷入することが稀にあり、失明したという症例報告がありました。フィラーの使用には十分留意して下さい。
選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty; SLT)は、房水の流出路である線維柱帯の老廃物を除去しながらも、線維柱帯自身には影響を与えない、安全な緑内障レーザー治療です。短期的には、一時的高眼圧や、前房内の炎症などの合併症があるくらいで、大きな合併症を起こしにくいことが知られています。ただし、治療効果の持続性が短いこと(その場合はレーザーを追加することがあります)や、仮にその後緑内障手術を行った場合に、若干手術成績が落ちるというデメリットもあります。
本論文では、原発開放隅角緑内障眼に対するSLTで、眼圧が平均19.1mmHgから、3カ月後に13.9mmHgまで低下しつつ、黄斑浮腫や前房内の炎症がみられなかったと報告しています。
欧米人では加齢とともに眼圧は上昇する傾向があると言われている一方、1988~1989年に行われた日本人を対象とした大規模調査や、2000年~2002年に行われた日本初の眼科疫学調査である多治見スタディでは、加齢とともに眼圧が下がる傾向があることが横断的研究により示唆されました。
本論文では、10年間におよぶ縦断的研究の結果、日本人においては眼圧が下がることが改めて示され、従来より指摘されているように、眼圧に寄与する因子として、収縮期血圧、拡張期血圧、body mass indexが挙げられています。
1968年にCairnsが開発した線維柱帯切除術は、現在でも代表的な緑内障手術の一つとなっております。手術の原理は、房水を強膜のトンネルを通して結膜下に排出させることで、眼圧を下げるというものです。しかしながら、創傷治癒機転のために強膜トンネルが閉塞し、術後眼圧が上がることがあるため、創傷治癒機転を抑制するためにマイトマイシンCの術中塗布や5-Fuの術後結膜下注射を行うことが一般的ですが、逆に低眼圧になったり、稀に重篤な感染症を起こしたりすることが問題となっています。
近年、加齢黄斑変性などの治療に用いる血管内皮増殖因子阻害薬の結膜下注射をもちいることにより、創傷治癒機転を抑制させる治療が試みられています。本論文では、血管内皮増殖因子阻害薬を用いた緑内障手術は、従来の方法と同等の眼圧下降効果があった一方、網膜静脈閉塞などの重篤な合併症もみられたため、その使用には注意を要すると報告しています。