よく患者さんに質問を受けるのですが、実は返答に困ることがしばしばあります。一般的な慢性疾患とは、ある時点から「病気」になるというわけではなくて、continuum(連続体)であって、この時点から「病気」と決めているのは人間だからです。もちろんWHOの高血圧の基準のように、(例えばこの数値以上になれば合併症が増えるとか)根拠があって病気が決められているのですが、緑内障においては、特徴的な(後々ご説明します)視神経障害、視野障害を診断するしかなく、網膜神経節細胞の死→失明に至る長い道のりのいつ、緑内障と診断するのか、明確とまで言える定義はありません。一応現状においては視野検査が確定診断になり、診断基準もあることにはあるのですが、機能異常(視野異常)が生じる前に経過観察や治療を開始する場合もあり、説明が困難なことがしばしばあります。また、そのような事情で、ある医者は「緑内障です」と診断する一方、別の医者にかかると「正常です」と言われることも多いのは、上述した理由が一因と思っています。
もう一つ踏み込んで、「(緑内障またはその疑いとして)現在はどういう状態でしょうか?」とか「治療は必要でしょうか?」などと聴いて頂けると、もう少し細やかな説明が医者からなされるかと思われます。