カテゴリー別アーカイブ: 眼についての最新情報

緑内障と眼圧日内変動

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧を下降すること」ですが、眼圧は血圧や体温などと同じく日内変動があることが知られています。まだ議論があるものの、この眼圧変動幅の大きさが緑内障発症や病期の進行と関連する可能性はいくつかの報告でなされており、緑内障治療薬においても、その変動幅を小さくさせるよう薬物の投与回数や濃度などで工夫がなされています。 本報告は、緑内障治療薬の中で、プロスタグランジン関連薬のみがわずかに変動幅を下げるにすぎず、多くの薬物では変動幅に影響がなかったとしています。 Glaucoma medications don’t affect circadian IOP patterns

原発開放隅角緑内障に対する第一選択薬について

緑内障の中で多数を占める病型である、原発開放隅角緑内障に対する治療について、緑内障診療ガイドライン(第三版)では、「プロスタグランジン関連薬や交感神経β遮断薬が優れた眼圧下降効果と良好な認容性により、第一選択薬として使用されている」と示しています。過去の報告をシステミックレヴューやメタ解析を用いて検討した本論文によると、優れた眼圧下降効果を有した第一選択薬はプロスタグランジン関連薬であるビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストが挙げられ、この3つの薬剤については大きな相違はなかったと報告しています。

近視と開放隅角緑内障について

代表的な緑内障の病型である原発開放隅角緑内障発症の危険因子として、近視があることは様々な研究で報告があります。緑内障または高眼圧症34040例と健常403398例を解析した本論文では、原発開放隅角緑内障のみならず、色素緑内障や落屑緑内障など、他の開放隅角緑内障についても危険因子であったと報告しています。ただし、現在までのところ、その理由は明確には不明であると言われています。 The Association of Refractive Error with Glaucoma in a Multiethnic Population

緑内障点眼液のキャップの色について

眼科診療において、患者さんが点眼液をどのようなペースで消費していくかは、実際に処方してみないと分からないことがよくあります。多剤併用治療になるとある点眼液はすぐに無くなるけど、他の点眼液は結構あまる、などということが生じるため、「今日はこの薬を何本、もう一つは何本処方してください」と再来ごとに処方する本数を変更することがよくあります。その際、点眼液のキャップの色で、「赤色は3本、青色は2本ください」と指示されることがあるのですが、実際にはどの薬のことを指しているのかが分からないことも多いです。特に緑内障治療においては、多剤併用の機会が多く、処方間違いが起こり得ると考えられます。 本論文では、100人の緑内障患者さんに11の点眼液を色を表現してもらったところ、102の色で示され、患者さんの指示を医師が正確に受け取った確率は55.5%と低い結果であり、特に視機能障害が強い患者さんの指示の場合に正確に伝わりにくかったと報告しています。 Ability of Bottle Cap Color to Facilitate Accurate Patient–Physician Communication Regarding Medication Identity in Patients with Glaucoma

学童期の近視について

北京の小学生(5-14歳)4249人を対象とした研究で、近視は36.7%にみられ、その危険因子としては高い年齢(特に10歳以上の少女)、親が近視であること、読書時の姿勢、読書時の距離が20cm未満、3時間以上の自宅学習、1時間以上の連続した学習、教科書以外に読む本の文字の小ささがあげられるという報告がありました。 Prevalence of and factors associated with myopia in primary school students in the Chaoyang District of Beijing, China

緑内障眼の反対眼について

緑内障の発症および病期の進行の最大の危険因子は眼圧であることが知られています。一方で、実は反対眼が最大の危険因子という説もあります。すなわち、片眼が緑内障であれば、いずれ反対眼が緑内障になり、片眼の病期が進行すれば、反対眼もいずれ進行することがある程度証明されています。 本論文では、片眼に緑内障の病期の進行がみられた場合に、反対眼では通常の視野検査や眼底写真による診断では進行がみられていなくとも、より微細な眼底構造を捉えられる光干渉断層計による観察では、網膜神経線維層厚の菲薄化がみられたと報告しています。 Rates of Retinal Nerve Fiber Layer Loss in Contralateral Eyes of Glaucoma Patients with Unilateral Progression by Conventional Methods

緑内障治療における長期のアドヒアランスについて

緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障はきわめて慢性に経過する進行性の疾患で、長期の点眼や定期的な経過観察を要し、かつ自覚症状がないことが多いので、治療の成功には患者の協力が保たれることが必須である。(中略)アドヒアランスとは患者も治療方法の決定過程に参加したうえ、 その治療方法を自ら実行することを指すものと定義される。(中略)アドヒアランス不良は、緑内障性視神経症が進行する重要な要因の一つであるので、治療にはアドヒアランスが得られやすい薬剤を選択する、進行したときにはアドヒアランスを確認するなどの配慮が必要である。」と書かれています。 過去の報告によれば、良好なアドヒアランスを得るためには、薬物治療開始後1か月が大切であるとする報告がありましたが、長期にわたるアドヒアランスを調べた本論文によれば、4年間にわたる良好なアドヒアランスを得るために、最初の一年間が大切であると結論付けています。 Patterns of Glaucoma Medication Adherence over Four Years of Follow-Up

光干渉断層計を用いた緑内障診断について

緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常であり、一般的に初期には網膜神経線維層の菲薄化や視神経乳頭陥凹拡大といった眼底の変化ののちに、視野検査で感度低下が生じ、その時点で緑内障の診断がなされます。緑内障診療において、視神経障害は不可逆的なことから、早期診断が重要であることは言うまでもなく、眼底を三次元的に観察する光干渉断層計(OCT)による視神経や網膜の微細構造の評価は、早期診断に極めて有用です。 本論文では、眼底変化はみられるものの視野障害が生じていない、所謂緑内障疑いの症例を経過観察し、最終的に視野障害が生じた1/3の症例でOCTで4年前に緑内障性変化がみられ、長いものでは視野障害が生ずる8年前にOCTで変化がみられたと報告しています。ただし、あくまでもOCTは緑内障診断においては補助的に用いるべきで、視野検査が重要であるとも述べています。 Estimating Lead Time Gained by Optical Coherence Tomography in Detecting Glaucoma before Development of Visual Field Defects

原発開放隅角緑内障例に対する配合剤の使用につき

近年、異なる作用機序を有する薬物を一剤にまとめた配合剤が各種疾患で用いられるようになり、患者さんにとって、コストや利便性の面で多大なメリットになっています。緑内障薬物治療につきましても、配合剤が頻用されるようになり、その有効性が証明されつつあります。本論文では、原発開放隅角緑内障例に対する治療について、プロスタグランジン関連薬単剤治療に対し、配合剤に変更したところ、更なる眼圧下降がみられたことが示されました。本研究につきましては、当やおえだ眼科も微力ながら協力させて頂きました。関係各位に謝意を申し上げます。 Fixed Combination of Travoprost and Timolol Maleate Reduces Intraocular Pressure in Japanese Patients with Primary Open-Angle Glaucoma or Ocular Hypertension: A Prospective Multicenter Open-Label Study.

相対性求心性瞳孔反応欠損の研究につき

相対性求心性瞳孔反応欠損(relative afferent pupillary defect: RAPD)とは、たとえば右眼が視神経症で視力低下していて、左眼が正常の場合 ペンライトを右眼から左へ動かすと左の瞳孔が縮瞳します。そこから右眼にライトを戻すとライトが来た瞬間には右眼は間接反応のため縮瞳しているのですがライトの明るさを右眼は感知できないのでライトを照らしているにも関わらず瞳孔がかえって開いてゆくという奇異な逆の反応が見られます。この現象は視神経疾患を鑑別するために、極めて重要な所見です。しかしながらこの反応は正常でもみられることがあり、また、軽微な場合見逃すことがあります。本論文はRAPDx®という器械を用いてRAPDを観察したところ、極めて高い診断力があったことを示しております。本研究につきましては、院長も微力ながらお手伝いさせて頂き、共同執筆者として名前を入れて頂きました。 Association between a relative afferent pupillary defect using pupillography and inner retinal atrophy in optic nerve disease