月別アーカイブ: 2015年10月

光干渉断層計を用いた緑内障診断について

緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常であり、一般的に初期には網膜神経線維層の菲薄化や視神経乳頭陥凹拡大といった眼底の変化ののちに、視野検査で感度低下が生じ、その時点で緑内障の診断がなされます。緑内障診療において、視神経障害は不可逆的なことから、早期診断が重要であることは言うまでもなく、眼底を三次元的に観察する光干渉断層計(OCT)による視神経や網膜の微細構造の評価は、早期診断に極めて有用です。

本論文では、眼底変化はみられるものの視野障害が生じていない、所謂緑内障疑いの症例を経過観察し、最終的に視野障害が生じた1/3の症例でOCTで4年前に緑内障性変化がみられ、長いものでは視野障害が生ずる8年前にOCTで変化がみられたと報告しています。ただし、あくまでもOCTは緑内障診断においては補助的に用いるべきで、視野検査が重要であるとも述べています。

Estimating Lead Time Gained by Optical Coherence Tomography in Detecting Glaucoma before Development of Visual Field Defects

原発開放隅角緑内障例に対する配合剤の使用につき

近年、異なる作用機序を有する薬物を一剤にまとめた配合剤が各種疾患で用いられるようになり、患者さんにとって、コストや利便性の面で多大なメリットになっています。緑内障薬物治療につきましても、配合剤が頻用されるようになり、その有効性が証明されつつあります。本論文では、原発開放隅角緑内障例に対する治療について、プロスタグランジン関連薬単剤治療に対し、配合剤に変更したところ、更なる眼圧下降がみられたことが示されました。本研究につきましては、当やおえだ眼科も微力ながら協力させて頂きました。関係各位に謝意を申し上げます。

Fixed Combination of Travoprost and Timolol Maleate Reduces Intraocular Pressure in Japanese Patients with Primary Open-Angle Glaucoma or Ocular Hypertension: A Prospective Multicenter Open-Label Study.

相対性求心性瞳孔反応欠損の研究につき

相対性求心性瞳孔反応欠損(relative afferent pupillary defect: RAPD)とは、たとえば右眼が視神経症で視力低下していて、左眼が正常の場合
ペンライトを右眼から左へ動かすと左の瞳孔が縮瞳します。そこから右眼にライトを戻すとライトが来た瞬間には右眼は間接反応のため縮瞳しているのですがライトの明るさを右眼は感知できないのでライトを照らしているにも関わらず瞳孔がかえって開いてゆくという奇異な逆の反応が見られます。この現象は視神経疾患を鑑別するために、極めて重要な所見です。しかしながらこの反応は正常でもみられることがあり、また、軽微な場合見逃すことがあります。本論文はRAPDx®という器械を用いてRAPDを観察したところ、極めて高い診断力があったことを示しております。本研究につきましては、院長も微力ながらお手伝いさせて頂き、共同執筆者として名前を入れて頂きました。

Association between a relative afferent pupillary defect using pupillography and inner retinal atrophy in optic nerve disease

近視と出生順について

自分自身存じ上げなかったことなのですが、英国やイスラエルの研究で、第一子はその後に生まれる子よりも近視の発症率が10%高いという報告があったとのことです。本論文は追試として教育環境との関連を検討したところ、高い教育を受けた例を除外すると、有意性が減少したため、近視と出生順との関係については、教育が関連していることを示唆しています。

Role of Educational Exposure in the Association Between Myopia and Birth Order

血圧変動と緑内障について

緑内障の発症および病期の進行における最大の危険因子は眼圧ですが、古典的に特に正常眼圧緑内障において、眼循環障害の影響も危険因子の一つとして考えられています。特に夜間低血圧は虚血性視神経症の発症のリスクのほか、その病態の類似性のために緑内障との関連が示唆されています。
本論文では、そのような一日の血圧変動のみならず、日中の血圧変動が緑内障性視野障害進行の危険因子であると報告しています。

Relationship Between Daytime Variability of Blood Pressure or Ocular Perfusion Pressure and Glaucomatous Visual Field Progression