月別アーカイブ: 2015年6月

散瞳薬の全身的副作用について

眼科診療において、詳細な眼底検査やレーザー、手術などを目的として、ミドリンP®点眼液などの散瞳薬を用いることがしばしばあります。局所においては、急性緑内障発作や薬物アレルギーなどの副作用を来しうるため、稀ではありますが、その使用においては慎重に行うことがあります。ミドリンP®点眼液などの散瞳薬には副交感神経遮断作用を有する薬物の他に、フェニレフリンと呼ばれる交感神経作動薬が含まれていることが多く、高血圧などの全身状態の悪化が懸念されます。
本論文は、過去の多数の論文から、フェニレフリン点眼が血圧や脈拍に影響を与えるか否かを調べたものですが、高濃度でなければ影響はなかったと報告しています。

Cardiovascular Adverse Effects of Phenylephrine Eyedrops A Systematic Review and Meta-analysis

睡眠と緑内障について

近年睡眠時無呼吸症候群と緑内障についての研究が盛んになされ、おそらく無呼吸時の虚血や、治療の一環であるcpapによる眼圧上昇などが原因と考えられています。
緑内障の本態は網膜神経節細胞の消失ですが、網膜神経節細胞の中で光感受性神経節細胞と呼ばれる一群があり、この細胞は、固有の視物質であるメラノプシンを持ち、概日周期の設定や調整に関与すると考えられています。本論文では、緑内障において光感受性神経節細胞が障害されるため、緑内障により睡眠障害を来す可能性を示唆しています。

Intrinsically Photosensitive Retinal Ganglion Cell Activity Is Associated with Decreased Sleep Quality in Patients with Glaucoma

新しいプロスタグランジン関連薬について

多くの緑内障について、治療の第一選択は薬物治療であり、その第一選択薬としてプロスタグランジン関連薬が用いられることは、各国の緑内障診療ガイドラインでも記載がなされている通りです。この度、新しいプロスタグランジン関連薬である、VESNEO (latanoprostene bunod)が治験の第Ⅲ層に至り、世界中で最も使用されているlatanoprostよりも高い眼圧下降効果と低い副作用が示されました。

A randomised, controlled comparison of latanoprostene bunod and latanoprost 0.005% in the treatment of ocular hypertension and open angle glaucoma: the VOYAGER study

VESNEO (latanoprostene bunod)

ジェネリック医薬品についての総説につき

この度、技術情報教会様から執筆依頼があり、書籍「ジェネリック医薬品・バイオ後続品の開発と販売・マーケティング戦略」中におきまして、「緑内障治療薬におけるジェネリック医薬品の使用実態と先発品からの切り替え判断基準」というタイトルで総説を執筆させて頂きました。緑内障は長期にわたる経過観察と治療が必要で、治療薬のコストを考えると先発品とジェネリック医薬品との薬価の差は無視できず、かつジェネリック医薬品の中には、保存の簡便性や点眼瓶の形状の工夫、アレルギーを起こしやすい防腐剤の変更などが行われている場合があり、その使用に関しては先発品にはないメリットもあります。総説の内容としましては、そのような緑内障治療薬におけるジェネリック医薬品の特性について書かせて頂きました。

ジェネリック医薬品・バイオ後続品の 開発と販売・マーケティング戦略

眼科未受診の緑内障患者の割合

緑内障では、一度障害された視機能が回復することはないため、早期発見早期治療が極めて重要なことです。しかしながら一般的な緑内障は、極めて緩徐に進行するため、初期には自覚症状がなく、ドックなどの検診や何かのきっかけで眼科に受診することがなければ、早期に発見することは困難と言えます。日本で行われた疫学調査においては、新規発見例が89%と極めて高いことが問題視され、眼科検診の重要性が増したものと考えられます。
シンガポールで行われた疫学調査の結果を示した本報告でも、72.1%が眼科未受診であったことを示しています。

http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=2301009&utm_source=Silverchair%20Information%20Systems&utm_medium=email&utm_campaign=ArchivesofOphthalmology%3AOnlineFirst06%2F04%2F2015