緑内障診療ガイドライン(第三版)によれば、「緑内障では、現在のところいったん障害された視機能が回復することはない。また、後期例では治療を行っても進行する例があることが知られている。したがって、緑内障治療においては早期発見、早期治療が大切である」としています。しかしながら、本邦においては、緑内障の新規発見率は89%であると言われ、未だ治療を受けていない緑内障患者が多数潜在していることが示唆されています。米国で行われた本研究においても、未発見または未治療の緑内障患者は実に78%に及ぶと報告しています。
月別アーカイブ: 2014年8月
緑内障患者によるスーパーマーケットでの買い物について
両眼に緑内障性視野障害を有する症例を対象とした本研究によれば、健常者に比べると、商品を選ぶのに時間がかかるものの、多くの症例では、視野障害がある部分を時間をかけて見つめることにより、正確に商品を選ぶことができたと報告しています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25162522
視機能障害と死亡率
わずかですが、視機能障害と死亡率は関係があると言われています。本論文によると、視機能障害がすすむと、日常生活動作能力が低下し、そのことが間接的に死亡率を上げていると報告しています。
加齢黄斑変性と内服薬
9676人を対象としたThe Beaver Dam studyで、ニトログリセリンなどの血管拡張剤
や降圧剤である交感神経β遮断薬の内服が、加齢黄斑変性発症の危険因子であることがわかりました。http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00203-6/abstract
糖尿病と緑内障について
古典的に、緑内障症例では糖尿病を合併しているケースが多いと言われており、多数の報告についてメタアナライシスを行った本論文でも、原発開放隅角緑内障と糖尿病に関連があると報告しています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25137059
大学生活を送る上での眼科的な注意点につき
アメリカ眼科学会では、親元を離れる大学生に向けて、6つの眼科的注意点を列挙しています。
(1)コンタクトレンズを装用したまま泳いだり、シャワーを浴びないこと。アカントアメーバ角膜炎の85%はコンタクトレンズ装用者に見られ、深刻な目の感染症を引き起こすことがあります。
(2)屋外活動すること。多くの時間を屋内での勉強に費やす熱心な学生は、近視になるリスクが高いことがいくつかの報告でなされていますが、2014年に報告された研究によれば、大学卒業生の50%以上が近視であり、学年が上がるにつれて視力低下がみられるとしています。
(3)手を清潔にすること。目をこすらず、手を石鹸で洗うことにより、充血やその他の感染症を抑制できるとしています。
(4)目を休めること。インドで行われた研究によれば、工学部と医学部生の約80%がドライアイや充血を経験しており、疲れ目を予防するために、20-20-20のルール(物を見るときは20フィート離れたところから20分見て20秒間目を休める)に従うといいとしています。
(5)メーク用品を共用しないこと。ヘルペス性角膜炎などの感染症が拡大しやすく、クリーム状や液状のアイメーク用品内では細菌が繁殖しやすいと言われています。
(6)野球、バスケットボール、ラクロスなどの試合中は目を保護すること。目の表面を傷つけたり、眼窩周辺を骨折したりすることが多いと言われています。
http://www.aao.org/newsroom/release/six-smart-things-college-students-should-do-for-their-eyes.cfm
多焦点眼内レンズと中心視野
白内障手術において、先進医療として用いられている多焦点眼内レンズは、遠方も近方もよくみえる有用なレンズですが、ハローやグレア、コントラストの低下が指摘され、その適応は慎重に決めるべきと言われています。本論文では、多焦点眼内レンズ装用後は、中心視野の感度低下がみられると報告しており、黄斑変性や網膜色素上皮変性、緑内障症例では勧められないと結論づけています。
http://www.ajo.com/article/S0002-9394(14)00220-7/abstract
抗血管内皮細胞増殖因子抗体治療と緑内障について
抗血管内皮細胞増殖因子抗体硝子体内注射は、加齢黄斑変性などの新生血管が原因で生ずる重篤な眼疾患の治療に大変有用ですが、治療後に高眼圧となり、緑内障になるケースがみられます。本論文によると、緑内障になる危険因子として、注入量と、注入速度を挙げています。
加齢黄斑変性と食物
加齢黄斑変性は、欧米を始め、本邦でも失明原因の上位を占める重要な疾患です。その発症および進行に食生活が関連することが知られています。本論文では、果物、野菜、鳥、ナッツ類を多く摂取すると発症率が低く、赤身の肉を摂取すると発症率が高かったと報告しています。
http://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(14)00009-8/abstract