月別アーカイブ: 2014年4月

視力障害と生活習慣

Beaver Dam Eye Studyという、5000人(43歳~84歳)を対象とした大規模な前向き研究が、アメリカで行われており、現在まで多数の有益なデータが公表されています。米国眼科学会によると、本研究で、1988年~2013年まで、視力障害の発症率と生活習慣の関連について調べた結果、この20年間強の間で視力障害の発症率は5.4%で、座る生活が多い人では6.7%の人が視力障害になったのに対し、週3回以上運動する習慣があった人は2%のみが視力障害になったと報告しています。また、非飲酒者の視力障害発症率は11%であるのに対し、週1回未満の機会飲酒者の発症率は4.8%であったと報告しています。

http://www.aao.org/newsroom/release/physical-activity-occasional-drinking-decrease-vision-impairment-risk.cfm

 

 

閉塞隅角緑内障眼の屈折について

眼の屈折をおおざっぱに区分すれば、近視は眼球が大きいために入射光の焦点が網膜面より手前にある状態で、遠視はその逆となります。そのため一般的には遠視は眼球が小さいために、房水流出路である隅角もコンパクトで、狭いことが多く、流出路抵抗が上昇しやすいため、閉塞隅角緑内障眼になりやすいと言われています。とは言え、近視眼の閉塞隅角緑内障も、実際には散見され、そのような例では、眼球が大きいにもかかわらず、狭隅角であったり、浅前房であったりします。

本論文では、アジア人の閉塞隅角緑内障眼をしらべたところ、22%が近視であったことを報告しています。アジア人は他の人種に比べて近視が多いことが知られており、かつ経年的に近視化が進んでいるため、近視眼の閉塞隅角緑内障が増加してくることが予想されます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24679835

 

開放隅角緑内障患者における散瞳後の眼圧変化について

眼科診療において、検査や治療のために薬物により瞳孔を散大させることはよく行われていることです。原発閉塞隅角症においては、散瞳後に急激な眼圧上昇を来す急性緑内障発作を起こしうるので、注意が必要です。一方で、開放隅角緑内障眼や健常眼においても眼圧が変化しうることも知られています。

本論文では、落屑緑内障、原発開放隅角緑内障および健常眼において、散瞳前後の眼圧変化を調べたところ、平均値では健常眼で散瞳後に低下したものの緑内障眼では変化がなく、また、落屑緑内障眼の28.3%、原発開放隅角緑内障眼の16.7%で眼圧上昇がみられたことを報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24682599

アメリカにおける失明原因(人種による違いについて)

アメリカは代表的な多民族国家で、同じ生活環境で、人種による疾病や治療効果の違いを調べるために、疫学的には有用な調査場所と言えます。現時点において、白人やヒスパニックの失明原因の第一位は加齢黄斑変性で、アフリカ系アメリカ人では白内障が一位になっています。また、アフリカ系アメリカ人やヒスパニックでは、白人よりも緑内障による失明者が多いことが特徴で、今後アメリカでは、白人の人口が減少するに伴い、緑内障有病率が上昇することが予想されています。

http://one.aao.org/eye-disease-statistics

小児に対する花粉症対策用の眼鏡装用につき

今年は花粉飛散量が少なく、花粉症を有する方におかれましても、症状が軽いのではないかと推測されます。

花粉症対策として、防御用眼鏡を用いることがありますが、小児の場合、外傷などによる重篤な被害が消費者庁を通じて報告されています。くれぐれもお気をつけください。

http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20130221_2.html

シリコーンオイル眼に対する選択的レーザー線維柱帯形成術

網膜剥離などに対する硝子体手術に対して、剥がれた網膜を復位させるために、タンポナーデの役割として、ガスやシリコーンオイルを眼内に注入することがあります。これらは当然タンポナーデとして、網膜に圧力を加えて剥離を治すわけですので、眼圧も上がることがあります。それらの眼に対して濾過手術のような緑内障手術は、せっかくのタンポナーデの効果を落とす結果になるので、治療の選択肢にはなりにくいところがあります。

本論文では、シリコーンオイル眼で、選択的レーザー線維柱帯形成術を行った結果、眼圧が下がったことを報告しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24671473

落屑症候群患者の死亡率

落屑症候群は、眼組織が線維性細胞外物質である落屑物質を産生し、水晶体や虹彩、隅角に進行性に付着し、続発緑内障や白内障を発症させる疾患群です。落屑物質は眼組織のみならず、皮膚や心臓、肺、肝臓などの全身臓器にも存在することが知られており、中でも、血管内皮に存在した場合、眼循環のみならず、全身循環が低下すると考えられ、心血管系疾患を生じやすいとしています。

本論文は、落屑症候群が生じた群と健常群と死亡率を比較した報告ですが、差がなかったとしています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24674619