月別アーカイブ: 2014年1月
眼圧ってどのくらいだといいのですか?
緑内障治療薬を開始した患者さんからよく聴かれる質問です。原則的に眼圧が下がればそれだけ視神経障害進行のリスクが低下するため、下がれば下がるほどいいのですが、そのためには薬物の多剤併用やレーザー、手術などのコストがかかったり侵襲があったりする治療が必要となるので、「必要最小限の薬剤で最大の効果」を得るために、目標眼圧を設定することがよくあります。目標眼圧の設定にあたっては、「視神経障害の進行を阻止しうる眼圧を前もって正確に知ることは困難ではあるが、治療を開始するにあたっては、緑内障病期、無治療時眼圧、余命や年齢、視野障害進行、家族歴、他眼の状況などの危険因子を勘案し、症例ごとに」設定します。具体的な例としては、「初期例19mmHg以下、中期例16mmHg以下、後期例14mmHg以下というように設定することが提唱されている。また、各種のランダム化比較試験の結果をもとに、無治療時眼圧から20%の眼圧下降、30%の眼圧下降というように、無治療時眼圧からの眼圧下降率を目標として設定することが推奨されて」ますので、それに準じて行うことが多いと思われます。海外での報告では、正常眼圧緑内障患者さんのベースライン眼圧から30%低下させた群では、視野障害進行が12%のみにみられたのに対し、無治療群では、35%に進行がみられたとしています。
本日の新医院
ベースラインデータの設定
以前より述べている通り、「緑内障の本態は進行性の網膜神経節細胞の消失とそれに対応した視野異常である緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy)」であり、網膜神経節細胞は年齢とともに健常人であっても減少するため、多くの場合、何らかのきっかけで眼科を受診し、「緑内障」の診断を受けた場合であっても、それは昨日今日「緑内障」になった訳ではなく、そこに至る長い半生の間に少しずつ網膜神経節細胞が障害を受けたということになります。従いまして、緑内障患者さんに対峙した際に、医者としては、その方の過去を知ることは不可能ですが、短期間無治療で経過をみることで、その方の将来を類推し、治療することがよくあります。つまり、ベースラインデータを取得するために、無治療のまま2~3回受診して頂き、検査のみを行うことがあります。患者さんとしては、「緑内障と診断しているのに何もしてくれない」と不安に思うかもですが、以上のような事情があるからです。
眼圧にしろ、視野にしろ、疾患による変動以外に、測定誤差や日内・季節変動があり、それを見極めたうえで治療しないと、以後の診断の判定が困難になったり間違ったりすることがありえます。よって、複数回無治療時の眼圧、視野検査を行うことが有用となります。
眼圧と高山病
急性高山病は頭蓋内圧が上昇していることから、眼圧も上昇しているという仮説があるようですが、本論文では、眼圧と急性高山病、酸素飽和度などとの関連をみなかったとしています。
本日の新医院
居住地域と緑内障
院長の経験、あるいは他の緑内障専門医との会話の中で、「都会で生活している人」、「高学歴な人」、「神経質な人」は緑内障(原発開放隅角緑内障(広義))が多いと感じていました。
本論文では、都会生活者の方が、田舎で生活している人よりも眼圧が高いという結果を示しています。
視野検査の信頼性
緑内障の診断や治療方針の決定に、定期的な視野検査は必須ですが、患者さんの体調や性格などの理由で、固視点をみないで、指標を追視してしまう、みえるはずの指標に反応しない、逆にみえていないはずの指標に反応する、等のエラーがどうしても生じてしまいます。大きいエラーですと、信頼性のない検査として、再検査を求められたり、検査結果を破棄してしまったりすることがあります。しかしながら、それらの行為は手間とコストなどの面から、避けたい問題ではあります。
本論文では、事後確率を算出するナイーブベイズ法を用いた補正を使って、通常では破棄する視野検査結果の有用性を高めることができた、としています。
アトピーとヘルペス性眼疾患
アトピーは免疫の調節異常が起こっていて、ウイルス感染にかかりやすいことが推測されますが、実際に多数例で調べた調査では、アトピーを有する患者の方が、健常人よりもヘルペス性眼疾患にかかりやすいという論文です。
緑内障と外出
緑内障性視野障害を持つ人は、持たない人に比べて外出や旅行に行く機会が少なく、障害が高度であればそれだけ自宅に留まる傾向が高まる、という報告です。