月別アーカイブ: 2013年12月

緑内障と体重

体重(body mass index)と眼圧は関係があります。体重が重ければ眼圧は高くなります。一方、前回述べましたように、立ったり座っていたり、よりも寝た体勢の方が眼圧が高くなります。

では、体重が体位による眼圧変化に影響を与えるでしょうか?最新の論文で、体重と体位には関係がみられなかったとする報告がありました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24247996

緑内障と体位

緑内障患者さんに、「日常生活で気をつけることはありますか?」とよく聴かれます。いろいろな行為により眼圧が変動することはよく知られています。例えば仰向けになると眼圧が上がります。しかしながら「睡眠時間を短くしましょう」という訳にもいかず、通常の生活における眼圧変動以上に、緑内障治療薬の効果が勝っていると考え、「目薬をきちんとさすこと、それだけでも大変なことなのですが、一番有用です」とお答えしています。

緑内障の大家Ritch先生の名著で1996年を最後に改訂がなされていないとは思いますが、膨大な緑内障の知見を網羅していたThe Glaucomasによれば、眼圧が一番上がる体位は逆立ちです。しかしながら、一日中逆立ちをするわけではないので、あまり問題になることはないはずです。

一方、ヨガについては、最大で20mmHg 以上の眼圧変化があり、長い時間同じ姿勢をとることがあると思われ、緑内障患者さんは注意すべきと思います。

http://www.glaucoma-eye-info.com/yoga-positions.html

眼圧と血圧

「眼圧と血圧って関係がありますか?」と聴かれることがよくあります。実は関係はあります。わずかですが、血圧が高いほど眼圧も高くなるという報告があります。しかしながら重要なことは、緑内障の危険因子に低血圧があることがよく知られています。血圧が低ければ、眼循環が悪くなり、視神経に栄養を与えることができなくなるため、視神経障害が強くなる、という仮説があります。緑内障が眼圧以外の種々の因子によって成立しているであろうことの根拠でもあります。
いずれにしても、まだまだ知見が足りない分野であり、緑内障に対する血圧の関係はあったとしてもわずかですので、後期の正常眼圧緑内障症例のほかの方には、あまり気にする必要がない旨、お話しております。

緑内障と家族歴

緑内障発症のリスクファクターとして家族歴があることはよく知られています。また、ひとことで「緑内障」と呼びますが、原発緑内障、続発緑内障、発達緑内障など、その発症機序に応じて、様々な病型があります。

本研究はそれら様々な病型に家族歴が関係するのかを調べたもので、全ての緑内障病型有意にに家族歴があったということで、特に母または兄弟が緑内障の方は要注意ということでした。近しい方に緑内障患者がいる場合には、症状がなくとも一度眼科での検査を行うことをお勧めします。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24327611

アドヒアランスとpersistence

医者が処方した投薬を患者がきちんと服用しているか、点眼しているか、を示す用語に、最近はアドヒアランスを用いるようになったことは以前お話しました。アドヒアランスは、「医師からの一方的な治療指針を患者が守るのではなく、患者も治療方法の決定過程に参加した上、 その治療方法を自ら実行する」ことです。一方persistenceという用語があります。アドヒアランスは「薬物を使用している状態であり、途中中断があってもいい」というニュアンスがありますが、persistenceは、「連続して薬物を使用している状態」を言います。緑内障治療薬におけるアドヒアランスは20-50%と言われていますが、persistenceは10%を下回ることがあると言われています。

緑内障の90%が病院にかかっていないことも併せると、(緑内障であっても治療が必要でない例も実は多いのですが)、10%×10%で、きちんと治療がなされている緑内障患者さんは、1%しかいない計算になります。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16226511